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魔力


「厄災の根源……?」


いったい何の話だ、急に。頭がおかしくなったのか?厄災についてなんて話していなかっただろう。


(小僧。前に伝えたはずだぞ。俺たちがお前の肉体に宿ったのは、近頃起こりうる厄災を防ぐためだと)


(……そういえばそうだったな。だとしても、正直こいつを信じる気にはなれないんだ。あいつは、魔導皇国の城にいた。もしかしたら華の誘拐にかかわってるかもしれない。ちゃんとこいつが悪い人じゃないってわかるまでは信じれない)


(……そうか。貴様の一存で決めるなと言いたいところだが……仕方がない。だが先に行っておくぞ。あいつは小僧が思っているほど悪ではないとだけ言っておこう。まぁあとは好きにするが良い)


(そうか、ありがとうな)


「……あなた今誰かと話してなかった?」


「いいや、なんも話してない。それで、何が厄災の根源なんだよ」


「はいはい、今説明するわよ。それで、これ。見えるでしょ?この石碑。これに、とある化け物が封印されてるわけ。この魔道具は、化け物を封印するために作られた物。もう何千、何万年と前の化け物らしいわよ。そして、その封印が今何者かの手によって弱められている。それが何かはわからないけどね」


「……質問だが、お前じゃないよな?」


「私なわけないでしょう?!なんで疑うのよ」


「いや、当然だろ。最近って言ってるし、そもそもここの場所を知っているのも不自然だし」


「不自然不自然って、なんのためにあなたをここに呼んだと思ってるのよ。それに、私がやっている証拠なんてあるのかしら?……今の発言は犯人っぽいから撤回。でも本当に私じゃない。可能性があるとすれば、それは恐らく魔導皇国よ」


「……そこにあんたいたじゃん。魔導皇国にがっつり居たって自分で言っちゃってんじゃん」


「……あーもう!!と・に・か・く!!私はこの封印を解かせたくないの!でも中々厳しいからあんたに手伝ってって言ってんの!」


「わかったわかった。……正直まだあんたを信用できてないんだ。申し訳ないが、もう少し考えさせてくれ」


「なんで信用できないわけ?それにあんた、早く手伝ってくれないとあの村滅んじゃうわよ?」


「え?なんで」


「え、もしかしてアンタ気付いてないの?この封印装置からあふれ出る魔力は怪物が放つ咆哮や威嚇のようなものと同じ。本能に従う魔物は怯え逃げるか、この魔力に蝕まれて尋常じゃないほど強くなってるわよ」


「だが、道中で見つけた魔物、というかこっち側の魔物のほとんどは倒したぞ?それに魔力探知にだって反応はなかった……。何だよこれは。おかしいだろ、この数でこの魔力は!!」


「はぁ……もうほんと仕方ないわね。手短に説明してあげる。この魔力は魔物を強化する。強化された魔物は、冒険者ギルドのランクで示すと大抵の個体がA程度になるのよ。稀にそれ以上か以下も生まれるけど、基本同じレベルに強化される。


あんたが殺したと思ていた魔物たちはまだ強化前で、死ぬ直後。もしくは死後、魔力に適応した個体が強化されて復活した。死後のやつらはアンデット化したってことね」


「くそっ、速く戻らないと!」


「ちょっと、待ちなさい。戻ってどうするの?」


「どうって、村を守らないと」


「守った後、またその死体に魔力がまた流れ込んできたらどうするの?魔物が強化されるのは一瞬よ。いくら死んでも魔力がある限り蘇生する個体だって生まれるかもしれない。そういう可能性を考慮して、最善の手がまず戻って討伐なの?違うでしょ?」


……調子狂うなもう。わかってるよ、今やらなきゃいけないことくらい。けどそれがあまりにも危険だから、安全策を取っていきたいのに。このあたりに漂う瘴気と化した魔力を全て奪えば、一時的に魔物の強化や蘇生を止められる。だが、魔道具に何らかの仕掛けがあればどうなる?


魔道具っていうのは、魔力を原動力に動く道具の事だ。その魔道具から魔力を抜いたら、どうなるか。答えは簡単だ。魔道具が動作しなくなり、封印が解かれる。俺の魔力強奪は範囲指定があまりうまくできない。その場でブラックホールのように吸収するから。それに今まで範囲指定をしようなんてやらなかったからな。


……考えてどうするんだ?やることは決まってるはずだぞ。俺は今ここで深く考えている暇はないんだろ?やるべきことは目の前にある。優先順位なんか考えたってしょうがない。全部やってしまえばいい。


できないことなんてない。不安を捨てろ。恐怖を捨てろ。今すぐにすべてを実行しろ。


「奪え、魔力強奪(ヴォルロス)


イメージしろ!森に漂う瘴気だけを奪うんだ!この魔道具には近づけちゃいけない。


「……何してるの、あんた」


「ちょっと黙ってろ。今忙しいんだ」


……よし、できた。これで良い、この洞窟の半分と、森に漂っていた魔力を全て奪った。これでもう問題はないだろ。


「……あんた、わかってるの?その力がどれだけ、あんたを苦しめているか」


「……わかってるさ。この力は、使った反動が相当厳しいってことくらい。


「……鼻血出てるし、目が充血してる。それに左耳、若干壊れかかってるわよ。耳の方はほぼ聞こえてないでしょ。もう、立っているのすらきついはずよ」


……魔力強奪の効果は、奪った魔力を自分の物にし、魔力量の底上げができる。自身の物として変換することで、体に影響はなく使用することができる。


だが、この魔力は違った。稀にあるのだ。俺の体に適応しない魔力が。ダンジョンの魔力、聖女の魔力。これらもそうだ。だがそこまで影響があるわけじゃない。でも、今回は違う。なんとなく予想してはいたが、やはり厳しいな。


「……ふぅ、俺が吸血鬼でよかったな。適応するまでは苦痛だが、それを耐え続ければいいだけだ」


「あんた何言ってんのよ。その痛みや苦しみは拷問と同レベルよ?それに耐えうる精神を、どこでつけてきたっていうのよ」


「そんなもんは知らん。耐えれば終わる。それがわかってるなら、後は容易いもんだ。すまんが話している暇はない。先に行く」


そういって俺はすぐに洞窟を出て、村へと向かった。急がないと。亮を、村の人を守るために。







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