真実。
何なんだこの魔力。聖女の魔力のような清らかで美しい物と正反対で汚れていて禍々しい。ただ魔力濃度が高いわけじゃない。何か感情が込められている。恐怖でもない。本当になんなんだこれは。
何をしたらここまでの物になるんだ……?恐怖に満ち溢れながら、自分に恐怖を与えた対象を呪うが如くうごめいている。
「……亮、ここにはもう何もいなさそうだし、一旦町の人に様子を聞いてきてくれる?今までで何か異変がなかったか」
「……わかった。でも、何もないっていうのは嘘だよね。僕にはどうしようもできないだろうから、従うけど。ちゃんと無事に戻ってきてよ?」
「バレてたか。わかった、無事に戻るって約束する」
「うん。じゃあ、またあとでね」
……どうやら亮にはすべてばれているらしい。もうどんな嘘でも見通されてるって感じだもんな。しょうがない、亮のためにも頑張らないとな。
「……行くか」
俺は意を決して禍々しい魔力を放っている方へと走った。道中、大量の魔物を殺して進んだ。CランクとBランクの大物たちはしっかり対処するわけにもいかない。だから、すべて一撃で仕留める。
「血操作」
魔力探知を森全域まで広げ、血を混ぜた魔力を張り巡らせる。このまま、魔物の配置をすべて把握し、すべてを一瞬で片づける。
「発動 踊跳血弾」
森の大半を覆った魔血は、踊跳血弾が発動するとともに近くにいる魔物を撃ち抜いた。地面から放たれる高速の小さな弾は不可避の攻撃となり、即座に魔物たちを全滅させた。
「……これえげつないな。使うタイミング考えないと」
だが、おかげで邪魔は消えた。さて、やるぞ。
「いるんだろ?そこに。早く出て来いよ、聖女の片割れ」
「……はぁ、いつかバレるだろうとは思っていたけど、こんなに早いとはね。久しぶりね、吸血鬼。会うのはコルジオ以来かしら?」
「……そうだな」
「それで、何の用かしら。私はまだ何もしてないけれど」
「……お前は、聖女の下に戻るつもりはないのか?」
「あるわけないでしょう。あんなのとくっついたてまた苦しい思いをするだけだわ。そういう内容の話は興味がないの。それに、あなたとも戦う気はない。勝てないから」
勝てないとわかっていて、逃げないのか。やはり何か策があるんだろう。だがなんだこの違和感は。
「あなた、もしかしてだけど、私が村を魔物たちに襲わせたと思ってない?」
「……違うのか?」
「あのねぇ、恨みがあるのは別の人。人間すべてに恨みがあるわけじゃないし、そもそもそれだけ負の感情があれば村なんて私一人で制圧できるわよ」
……言われてみれば確かにそうだ。こいつは元凶じゃないのか?……信じてみる価値はある。だが、それ以前になぜ魔物が村を襲ったのかだ。
「……なんで村を魔物が襲ったか。それが知りたいのね。しょうがないわね、ついてきなさい」




