ギルドへの依頼
「僕の故郷、カセル村を救ってほしいんだ」
……スケールが想像の数十倍でかいぞ?なんでそうなった。一般学生にそんなこと頼むなよ、いくら何でも……。話だけ聞いてみるか。
「えっとな、まず理解してほしいのは、俺に村一つ救えるほどの力量はないし限界があるってことだ。それを踏まえて、詳しい内容を教えてほしいんだけど、いいかな?」
「うん。救ってほしいっていうのは大雑把すぎたね、ごめん。詳しく話すと、僕の故郷が何者かに襲われてるって話なんだ。実際に襲ってきたのは魔物なんだけど、行動が異常だったらしい。
普段絶対的な縄張り意識を持っている、ファイアウルフやクレイジーボア、そしてブルーベアー等の魔物が群れを成して襲って来たらしい。その時は一部の冒険者たちが協力してくれて、被害はかなり抑えられたらしい。それでも何人かは死んでしまったようだけれど。それで、人手が足りなくてギルドにも依頼を出してるんだ。多くのパーティーが参戦してくれたけど、もう何回も襲われてて限界が近づいてるらしい。
だから、異常なほど強いアルフレッド君にお願いしたいと思って」
なるほど、大体わかった。魔物の種類は正直雑魚ばかりと言ってもいい。さっきアルスが言ってた類の魔物は、悪魔の森で暮らしていたころに食材や服になっていたこともある。熊やイノシシは特にだ。魔物とは15歳になるまで戦わせてもらえなかったけど、多分当時の俺でも倒せたと思う。
となると、問題は数と進化するまでの時間だ。クレイジーボアは大丈夫だが、ブルーベアーとファイアウルフは別の魔物になることがある。ブルーベアーは、レッドベアー、ブラックオーラベアーになり、ファイアウルフはヘルフレアウルフ、もしくはショックウルフという雷属性に進化する可能性がある。
正直、進化されたら厄介だ。対処するなら早めが一番……なんだが、今は状況が状況だしなぁ。
「襲われたのはどのくらい前?」
「三日前の夕方。森の奥からいきなり現れて、家屋を壊し、家畜を襲ってたらしい。その時に戦おうとした人が重傷を負って、そのまま……。傷を負った中には、僕の友達もいたんだ。魔物の行動は、誰かに操られたものだったらしい。誰かにだ。僕はそいつを許さない。だから、アルフレッド君。お願いだ、僕の村を救う手助けをしてくれ……」
そう俺に懇願するアルスの目には、光るものが見えた。大事な人が危険な目にあった時に、横にいられないのがどれ程辛いか、俺には想像がつく。華を誘拐されたときは警備も弱く簡単に救出できたからよかったが、今回は違う。大量に表れる魔物たちに、正体のわからない敵。数日もすれば、アルスの村は完全に滅ぶだろうな。
「……わかった、アルス。この話は受けよう。だけど、条件がある。というかやらなきゃいけないことが多すぎるから、それも同時並行する。今から説明することを受け入れたうえで、村を救う。
1、今回の件は「境超の英雄」ギルドの初依頼として受け、実行日は明日とする。
2、現地へ向かうのは初期メンバーである6人と、今日のうちにギルドに入団登録をしに来た人員の中から使えそうな人間を選ぶ。
3、アルスの能力を初期メンバー6人にのみ説明すること。
4,最後に、どんな些細な悩みでも、すぐに仲間に相談すること。動ける動けない問わず、最優先は仲間だ。
わかったな?」
「うん、わかったよ。ありがとうアルフレッド君、依頼、受けてくれて……本当に、ありがとう……!」
「お、おい大丈夫か?……安心しろ、村は何とかしてやる。親友を、村を救うんだろ?しっかりしろよ。
お前が泣いてちゃどうにもならんぞ」
そのあと、アルスは泣きながら自分の不安を話してくれた。もし断られたらどうしようとか、友達は大丈夫かどうか、家族はみんな生きているのか。そういう不安が、一気にあいつの心を襲ったんだな。
……魔物は一種の災害だ。地震等の自然災害で家族を失うことと同じ。それを人為的に起こしているのだとしたら、それは絶対に許してはいけない行為だ。人の命を軽んじる行為は、今すぐにやめさせなければならない。
……さて、作戦を立てよう。アルスの村を襲ったやつを倒すための作戦を。




