アルスの力と悩み
「あれ、アルフレッド君速いね、おはよー……って、えぇぇぇ!!何その壁!大丈夫?!」
「あぁ、アルスか。俺は大丈夫だよ。新技の実験してたら思った以上に威力が出てさ、壁とか床が傷だらけになっちゃったんだ。ごめんね、朝から騒がしくて」
「いやいや、僕は全然大丈夫。それより、壁を早めに修復しよう。今日から人来る予定なんでしょ?笹っとやっちゃお。僕の能力だったら、再生させられるし」
再生?聞き間違いじゃないよな。だけど、再生って普通体に使う物じゃないのか?壁の再生なんて聞いたことがないが……。
「アルス、その能力って魔法なのか?それとも、アルスがもとから持っているスキルか?」
「これは魔法じゃなくて、僕の固有スキル、原初輪廻。全ての物を、一定の時間軸の状態に戻す、もしくは再生することができる能力なんだ。
戻すだけだと、弱った状態になってしまうかもしれないからちゃんとした時間軸に再生させるっていう感じ。……正直、この能力のおかげで人生いろいろあったんだけど、今アルフレッド君にこれを見せたのは理由があるんだ。
あとで、少し相談に乗ってくれないかな?」
「相談か、かまわないよ。時間ができたら教えてくれ。じゃあ、一旦これ修復するか」
「あぁ、それならもうやったよ。損傷してる箇所が大きいから時間かかってるけど、外側の方から徐々に戻って行ってるでしょ?もう少しかかっちゃうけど、あと1時間ぐらいで全部直ると思うよ」
……すんごいチート能力持ってるじゃんこの人。え、なにマジでアダマンタイトの壁再生できちゃってんの?これ場合によっては全ての物を無限に増幅させられるよな……?よし、考えるのやめ。今は別の事に集中しないと。
「じゃあアルス、ここ任せてもいいのか?」
「うん、もちろん。というかこの能力、一度使ったらあとは自動で発動するからあんまり気にしなくていいよ!それじゃ、またあとでね!」
そういうとアルスは自室の方へ走っていった。彼がその場を離れたはずなのに、壁の直る速度は今だ衰えず再生を続けている。
なんちゅう力を隠し持ってんだよあいつは……。だけどまぁ、今はアルスに感謝だな。彼のおかげで怒られなくて済みそうだし、他の事にも手を回せる。とりあえず、実験はいったん終了だな。それから、入団の対応もしないとな。……よし、がんばるぞ。
入団のための書類の作成や制服のデザイン完成などを一通り午前中に終わらせ、お昼休憩をしているときだった。
「アルフレッド君、ちょっといい?朝話した相談したいことについてなんだけど」
「あぁ、いいぞ」
さてどんな内容が来るか。なるべく負担がかからないことがいいが、しっかりギルド員の話を聞くのもリーダーの務めだろう。
「それで、相談したいことの内容って?」
「それはね……。僕の故郷、カセル村を、救ってほしいんだ」




