祖霊魂転
ほかのアンデッドはほぼ壊滅させ、現状はリーパーvs全員という形になっていた。
「アルフレッド君、初手は私が詰めます。多少なら動きを封じることができるので、そのすきにほかの皆さんで畳みかけるよう指示してください!では、行きますよ!」
「了解です!総員、レン先生に合わせろ!」
「「「「「了解!!」」」」」
先生が動き出し、リーパーに向かって一瞬で詰め寄る。
「混沌震撼」
レン先生から放たれた一撃は、確かに直撃した……はずだった。
「先生!後ろだ!」
アルスの叫び声に、レンはギリギリで反応しリーパーの鎌を避けた。
どうなっているのだろうか。俺がさっきあてた攻撃は、確かに聞いているように見えた。なのに、なんで先生の攻撃は当たらなかったのか。アンデット特有の透過だろうか。
だが、このリーパーは実体化して俺たちに攻撃を仕掛けてきている。透過を使うのであれば、ゴーストのように物理攻撃ができないはずだ。だとすると、スキルとして透過を所持し、オンオフの切り替えができるってことなのか?いや、まずは俺ももう少し攻撃してみないとわからないな。
「先生、チェンジ!」
俺は先生にそう呼びかけ、直ぐにリーパーに詰めよった。さっきあてた魔血撃破は、魔血の拳に魔力覇気を纏わせて殴ったやつだ。あれが効いたのに、先生の混沌震撼は効かなかった。その違いはなんだ。
先生の混沌震撼は、俺の魔血撃破と似て、拳に特殊な魔力を纏わせ、そこに複数属性を混ぜて直接攻撃するものだ。さっき先生が混ぜていたのは、風、水、さらに少しだけ光属性の反応があった。アンデッド対策だろう。それが効いてないとなると、できることは限られてくる。
そう、ただ単に効いている攻撃を当て続ける事だ。
「魔血暴風撃」
魔血操作による拳の複数顕現で、魔血撃破を連続してリーパーにあてる技。正直、これがどのくらい聞くかわからない。だから、何か反応がわかるまでこれを、ひたすらに当て続ける!
「ウォオオオ!!」
リーパーは鎌で応戦し、飛び交う疑似拳を破壊しながら確実にこちらを削りに来ていた。もはやここまでくると、単純な肉弾戦である。
薄暗いダンジョンの中に、魔血と魔力覇気で強化した拳と、鋭い鎌の金属音が響く。
少しでもダメージを稼ごうと、力を込めて拳を放ったその瞬間だった。
「ッ!!」
鎌の持ち手の部分が俺の左わき腹に直撃し、一旦退かざるを得なかった。
「クッソ、全然効いてる様子ないんだけど……」
(おい、小僧。俺と変われ。そいつはまだお前からしたらちと厳しい相手だ。)
(おい、変わるなら俺とだろう?そいつはアンデッド族だ。有効なのは魔法系の俺の力だ)
(あのさ、急にしゃべりだすのやめてくんないかな。それに、もうちょっとでこいつの勝ち方わかりそうだから、変わるのとか嫌なんだけど)
(小僧。そろそろお前も気づくだろうが、今はそんな悠長なこと言ってる場合ではないぞ?耐久力の異常に高いリーパーが、Ⅽ級ダンジョンにいる。これは一大事だ。それに、知らんのか?リーパーの瘴気を)
(瘴気?そんなのがあるのか!)
全くわからなかった。いや、よく考えればわかることのはずだった。攻撃途中に舞う黒い霧、あれは瘴気だったのか。
(……わかった、今回は二人に変わる。だが、体を壊すようなことはしないでくれよ?俺だって初めての入れ替わりで緊張してるんだ、終わったらすぐに戻ってこいよ。それから、なんかやらかしたらすぐに引き戻すからな)
(あぁ、わかってるよ。)
(それじゃあ、周りのやつらをどかしてくれるか。もうそろそろ死の瘴気が空間に満ちてくる。そうなれば、このチームは崩壊する。)
(あぁ、わかった。)
「総員、この階層から退避しろ!こいつを倒す方法はわかったが、一人の方がやりやすい!いいな!」
「凜、絶対勝てるんだよね?」
「ほんとに、また死にかけるみたいなことないよね?」
亮と華は、俺の心配をして意地でも残ろうとするタイプだ。だから、こういう時は嘘でも安心させてあげないといけない。
「ああ、大丈夫だ。勝算は十分だが、いかんせん人が邪魔でな。終わったらすぐ行くから、上の回で待っててくれ!」
「わかった!待ってるからね!」
そういうと華と亮、ほかのギルドの仲間は上に向かっていった。だが、レン先生だけは残っていた。
「先生は、上に行かなくても大丈夫そうですね」
「えぇ。なんてたって、教師で、探索者ですから」
「ですね。では、少し下がっていてください。それから、今から起きることは絶対に他言しないでくださいね」
「はい、承知の上です」
先生はそういうと、壁際まで下がり、俺とリーパーの1on1を見つめていた。
「じゃあ、変わろうか」
俺の奥の手。先祖との入れ替わり
「術式:祖霊魂転 開始」




