ダンジョンに行く前にほっこりした
倒れたリーナさんを休憩室まで運び、約1時間くらいだっただろうか。なかなか目を覚まさない。まるで催眠術でも食らったかのように、全く起きないのだ。それほど驚くことなんだろう。
「にしても、この人全く起きねぇな。どうするよ、
このままショック死とかしてたら」
「不謹慎なことを言わないでくれ、グレン。それより、ギルドカード見せてもらってもいいか?ランク確認したいし」
そう言って俺は他の5人のカードを回収した。
全員Cランク以上のマークがついていて、低い順に言っていくと
アルス →C
グレン →C
華 →B
亮 →A
アデリーナ→A
という感じだ。アルスとグレンは正直Bランク以上な気がしたが、おそらく魔力量や近接の有利不利が関与してくるのだろう。
アルスは魔法を得意とする代わりに、近接がそこまで得意ではない。グレンは逆で、魔法が得意でない代わりに近接に優れている。
そういうところでランクが変わってくるのだろう。
まぁ、ぶっちゃけよくわかんないし。俺もスタートBランクだったけど、気づいたらSだもんな。あんま関係ないのかもしれない。
そんな事を話していると、ベッドの上で気を失っていたリーナさんが目を覚ました。
「あれ……私、どれくらい寝てました?」
「だいたい1時間くらいですよ。それより、体調の方は大丈夫ですか?」
「は、はい!もう何ともないので、大丈夫です!そ、そんなことより話さないといけないことがあったんですよ!」
かなり興奮しながら、焦ったように俺たちに伝えようとしてきた。何をそんなに興奮しているんだろう。
「み、みなさんSクラスの方なんですよね?イーリア国立学園のSクラスの方って冒険者になるときにほぼ無条件でBランク冒険者の資格を得ることができるんですよ。なので、今Cランクの方はすぐにBランクに上げさせていただきます」
「そういうことだったんですね。てっきり、重なるショックで倒れてしまったのかと」
「それもありますけど……。夢じゃないんですよね?ここにいるのがSランク冒険者と、聖女と勇者っていうのは、私の夢じゃないですよね?」
どうやら、かなり混乱しているらしい。ここで俺がオーバーランカーの子孫だって言うことを明かしたら、どんな反応を見せてくれるだろうか。まずい、俺も華や亮と同じ考えになってしまっている。良くない良くない。
「はい、何も夢じゃないですよ。こちらの華が聖女、こっちの亮が勇者、俺がSランク冒険者です。
それじゃあ、ランクの昇級をお願いします」
「はい、少し待ってて下しゃい!」
「また噛んだ」
「ん~!もういいです!」
リーナは顔をプクリと膨らませながら、ギルドカードの更新に行った。俺の悪い癖だ、直さないとな。
それから2分くらいして、まだ頬を膨らませたままのリーナが戻ってきた。カードを俺に手渡しして、そのまま腰に手を当て、
「次馬鹿にしたら許しませんからね!」
と言い放った。
「ごめんなさい、俺が悪かったです。次は気を付けます」
「わかればいいんです!」
そういうと、リーナは満面の笑みで受付に戻っていった。戻るときに、ふと後ろを振り向いて言った。
「ダンジョン、頑張ってください!」
と。
その笑顔と声に、俺達は癒された。なんかすごく、心が綺麗になった気がした。
「よし、登録も終わったし、先生に報告に行こう。今日はもう部屋に戻って、明日の朝8時に正門前に集合。15分以上遅刻したら、なんかしらお菓子おごってもらうからな」
そういうと、口々に「えー」だったり、「それは遅刻できないな」などの声が聞こえた。
明日はいよいよ初ダンジョンだ、気を引き締めていこう。
そう思いながら、俺は寮の部屋に戻った。




