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ギルド設立条件

 

 アルバートとばったり出会った後、俺は職員室へ直行した。ギルドの設立に必要な条件を再確認しておこうと思う。


 第一に、最低5人以上のメンバーがいる事。次に、所持しているお金が金貨10枚を超えていること。

最後に、C級ダンジョンを4日以内に制覇して帰ってくること。俺らに残された課題は最後のダンジョン制覇のみ。正直、クリアするのは余裕だろうけど頑張ろう。


 などと考えているうちに、職員室の前についた。俺は3回ノックし、ドアを開けて先生を呼んだ。


「1年Sクラスのアルフレッドです。担任のレン先生はいらっしゃいますでしょうか?」


声をかけると、先生は満面の笑みでこちらを見て、小走りで駆け寄ってきた。


「どうしたんだい?」


「はい、実はギルドを設立しようと思いまして。条件の金貨10枚と、最低人数メンバー五人そろっています。あとは、C級ダンジョン制覇と先生に顧問になってもらうだけです!」


「なるほど……」


レン先生は少し悩み込むようにして俯いた。なにか問題でもあっただろうか。条件はクリアしているし、特に何もないはずだ。


「……わかりました。では、Ⅽ級ダンジョンに挑戦する許可を差し上げます。今、許可証を持ってくるので少々お待ちを。それから、ダンジョンには私もついていってもいいでしょうか?」


監視のためだろうか、先生もついてくるなんてな。まぁ生徒の安全は守らないといけないからだろう。


「もちろんです。そのほうが安心ですし」


「ありがとうございます。では、少し待っていてください」


 そういうとレン先生は職員室の奥の方へ向かった。


 にしても、急すぎたかな。ギルドを立てるのは相当大変なはずだろうし。金貨やメンバーなど、条件を満たしたとしても、活動拠点や装備、冒険者資格なども取らなきゃいけない。俺や凜は勇者と冒険者だしそこまで問題はないと思うが、問題はほかのメンバーだ。実力も申し分ない。そこまで心配しなくてもいいとは思うが、やっぱり若いもんな。


俺が冒険者の資格を取った時は母さん(オーバーランカー)がいたからなんもなかったけど、今回はただの若いガキとして見られそうだし。まぁ大丈夫か。


そんなことを考えていると、レン先生が許可証を持って戻ってきた。


「お待たせしました。こちらが許可証です。ダンジョンに行くときはこれを持って行ってください。

ダンジョンは基本、国かギルドが管理しています。


 その許可証をダンジョンの受付で提出する必要があるので、なくさないように。あ、それから皆さんの冒険者資格を取得する必要があるので先に取っておいてください。皆さんなら余裕でしょうけど、油断はせずしっかりと。私は仕事に戻るので、何か用があれば呼んで下さい」


そういうと先生は自分の席に戻っていった。一旦これで挑戦できるようにはなった。あとは冒険者になるだけなんだが、嫌な予感が一つ。とりあえず、ギルドに向かおう。










 それで、ギルドに資格を取りに来たわけだが……


「おいおい!こんなガキンチョたちが冒険者になろうっていうのか?坊主たちはおうちに帰ってママのミルクでも吸ってな!ここはガキの来るところじゃないんだ」


と、へらへら馬鹿にしながら寄ってくる輩がちらほらと現れた。


「はぁ……」


まぁ、彼らなりに心配してくれているんだろう。自分の実力に過剰な自信を持つ若者が、無駄に命を落とさないように。うん、そう思っておこう。


「なぁ、アル君。冒険者資格って取るの難しかったりするのかい?やっぱり相当な実力者が多いと思うんだけど」


「どうだろうな。実際のところは俺もわかんない。そこまで熱中してるわけでもないしな」


俺も冒険者資格は持ってはいるが、対して活動してないしな。熊倒してゴブリン倒して、そっからギルドに貢献することなく一か月がたちそうだし。ギルドに来る事自体が久々な気がする。カードは手元にあるし、まぁ大丈夫だろ


「すみませーん、冒険者の登録に来たんですが」


「はいはい、登録ですね!皆さん誰も登録していない形でしょうか?」


「いえ、自分は済ませています。カードはこれです」


そういって、俺は冒険者カードを受付嬢に手渡した。


「ありがとうございます……って、えぇぇぇぇぇぇ!!!え、Sランク冒険者?!」


「そ、そんなに驚きますかね……」


 母がオーバーランカーで、父は純血のヴァンパイア王だーって言ったらこの人失神するんじゃないかなと思うほど声を響かせていた。周りがすぐにざわつき始め、グレンやアデリーナ、さらにアルスまで開いた口が塞がらないという感じだった。


「あ、アルフレッド、お前、Sランク冒険者だったのか?!俺のすぐ近くに、そんな権力者がいたなんて……」


「あ、あぁ。なんか、全部納得いったよ。背後から奇襲を受けても反応できる理由も、どれだけ高火力の魔法を受けても全部吸収できるのも」


「ちょっと待ってくれ。皆一体、何に驚いてるんだよ」


「アル君。あなたが思っている以上にSランク冒険者の存在ってすごいのよ。Sランク冒険者っていうのは、オーバーランカーを除いて世界で最も力のある存在。一人で都市一つを落とせるほどの人材が、

Sランク冒険者という存在よ」


「だってさ、凜。結構すごいらしいけど?」


「亮、凜?これ、結構どころじゃないらしい感じ出てるわ。これじゃあ、私たちの身分明かしたら失神すしそう」


「それはそれで面白い」


「ふふふ、ちょっとわくわくしてきちゃった」


「僕もだ、凜。僕も勇者ってこと明かしたいんだけどいい?」


 こいつら、楽しんでやがる。まぁわからなくないけど。まぁ、皆に言うくらいなら問題はないが、周りに知られるのはまずい。この世界だ、勇者だ聖女だって言われたら誘拐……いや、無いか。だって二人も Sランク冒険者と同レベルじゃん。


「まぁ、好きにしてくれ。とりあえず先、亮と華、登録しちゃって」


 俺は亮と華が前に出るように促し、前にやった検査と同じ順番で進んでいくのを眺めていた。

検査の手形に魔力を流し込むと、その人の得意属性、魔力量、それから特殊な属性などもわかるんだとか。俺もやったけど、魔法の適性は父や兄同様基本全て使えるからな。あんまきにしてなかった。


亮が手形に魔力を流し、表示された情報を受付嬢さんが読み取っていると、また声を上げそうになって、すんでで止めていた。


「えぇっと、失礼ですが、勇者様……ですか?」


「はい。勇者のリョウ・サカタと申します」


 亮がきりっとした目で受け答え、こっちを見てにっこり笑ていた。ほんと楽しそうにしてる。

そして後ろではアデリーナとその他二人がまたもや驚愕していた。華も同様で、受付嬢さんが少しかわいそうだった。


「もう勘弁してください……今日だけで寿命が十年は減りましたよ!こっから先はなんもないですよね!?」


 感動と驚きの連続で泣きかけている受付嬢さんを横目に、ほかの5人はギルドカードを発行していた。

受付嬢さんには申し訳ないし、謝っておこう。


「大丈夫ですか?えっと、リーナさん?」


「あ、ハイ。大丈夫……でしゅ。」


 でしゅって。俺は少し声を出して笑てしまった。


「ププッ。」


「なんで笑うんですか!勇者に聖女にSランク冒険者の豪華三本立てですよ?!驚いて疲れたんです!」


「驚かせごめんなさい……フフフ」


ダメだ、抑えられん。俺はこういう噛んだりちょっとしたことにつツボってしまうのだ。

俺は我慢できず、結局声を出して笑ってしまった。


「ッ‼恥ずかしいのに!笑わないでください!もう!」


そういうと、顔を赤くした受付嬢はそっぽを向いてしまった。


「ご、ごめんなさい。初対面の人に失礼でしたね」


「いえ、気にしないでください。それより、ダンジョンにでも挑戦するんですか?この人数ってことは」


「はい。ちょうど、学園でギルドを作ろうと思ってまして」


「なるほど……確かに皆さん制服ですもんね。あれ、皆さんもしかしてイーリア国立学園の生徒さんですか?」


「はい、そうですけど」


受付嬢のリーナさんは、少し顔が青くなっていた。


「もしかして……いや、もしかしなくても皆さん……Sクラスの方ではないですよね……?」


「はい、Sクラスですけど」


「あ、あぁぁ……」


「リーナさん?リーナさん‼」


彼女はその場に泡を吹いて倒れた。そこから数時間、彼女が起きるまで待つことになったのはまた別の話。

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