始祖の2人
「やーっと起きたか小僧、何年待たせんだ?」
「まぁ仕方のないことさ、起きてくれただけありがたい。それに、我らの呼びかけに気づかないということはそれほどの精神力の持ち主ということだ。これはこれからが楽しみだぞ」
「それはそうだけどよぉ……。まぁとりあえず、話し合いをしようか、小僧」
ん〜、何が起きているのか全くわかない。目の前には白髪、筋骨隆々の男が立っていて、その横に細身で赤髪の男が立っている。見る限り、俺の母さんと父さんに似ているところが多いが……。
「で、ここは一体どこなんだ?」
「あぁ、お前は何も知らないのか。ここはお前の心だ」
「心って、夢の世界とかじゃなくて?」
「夢の世界なんざ行ったところで何もできやしない。それより、お前どこまで強くなった?」
「いきなりぶっこむんじゃない、白銀狼よ。己の強さの位置なんぞそう簡単に分かるもんじゃないのだぞ?」
「んなこたわかってんだ。技がどこまで使えるとか、そういうのが聞きたいんだよ」
会話のテンポが速くて全くついていけない。なんでここに呼ばれたのか見当がつかないわけじゃないけど。
「小僧、お前をここに呼んだのは理由がある。」
「はぁ。まぁ理由無く呼ばれたらたまったもんじゃないですけど。というか、そう言われても、何かやらかした記憶はないんですが」
「あぁ、君は何もやらかしていない。というか別に本来なら呼ぶつもりはなかったのだ。私はね。だが、
そこの白銀狼が文句を垂れるもんでな。仕方なくだ」
なんなんだこの人たち……。2人の中でもう少し話す内容をまとめてから来てほしかったな。俺が寝てる間に現世で何かが起きているかもしれないのに。
「ま〜さにそのとおりだ。お前が異世界に転生して15年、この世界に異変が起き始めたんだ。まぁ、その異変について話す前に、まずは俺たちについて話そう。俺はフェンリルだ。そっちの赤い奴が吸血鬼だ。お察しの通りお前の超超超ひいおじいちゃんだ」
うわぁ………こんなのが祖先なのかぁ。という感情が驚きより先に出てきた。なぜかは分からないが、バカそうというイメージがどうしても振り払えない。
「お前……張っ倒すぞ」
「じ、冗談ですよ!それより、今何が起きてるんですか?」
危なかった……。というか、早く内容を説明してほしい。俺が対処できる内容ならすぐにやった方がいい気がする。
「まぁ待て小僧。第一、今のお前が本気モードで戦っても半覚醒までしかできないだろうし」
じゃあどうしろってんだろうか……。俺をここに呼ぶ理由もなくなったんじゃないだろうか。
「別に今すぐやばいことになるってわけじゃねぇ。だが、おまえの身の周りの人間が生きているうちにはやばいことが起きる。だから、それのために少し頼みごとがあってここに呼んだっつうわけだ」
頼み事……か。正直言い予感はしない。人から頼まれてやったことで、よい結果を残せたことがあまりないからな。場合によっちゃ俺が悪役になる可能性だってある。できるだけ軽い事にしてほしいんだが……。
「そんな難しい事じゃない。お前の中に眠る化け物を呼び起こす、その手伝いをしてほしいってことだ」
…………?。頭の中がはてなで埋まった。何を言っているかさっぱりだったからだ。俺の中に眠る化け物を起こすって、どういうことだ?いや、案外そのまんまなのかも知れないが。
「難しく考えるな。文字通りだ。今、君が転生してきた世界に異変が起きている。その内容はまだ確実じゃないから何とも言えんが、何かが起きていることは確実だ。だからできる限りの対策をしなければなってなったわけだ」
「なるほど。で、結局俺は何をすればいい?」
「簡単さ、一度体の主導権を俺にくれ」
…………は?




