半覚醒
「お前らまとめてぶっ飛ばしてやるよ」
覚醒によって全能感を得た俺は、理不尽な3対1に対応していた。だが、何かが違う。確かに覚醒はできたはずなのに。どこかで前とは違う違和感を感じた。でもまぁ、やることは変わらない。
「髪色が半分変わった程度で、何を調子に乗っている?その実力、確かめさせてもらおうか!」
そういうとカイラが突進して攻撃を仕掛けてきた。俺はそれを右へ受け流すと、そのままカイラを後ろへ投げ飛ばし魔力弾を一発撃ち込んだ。
「ゲホッ、ゲホッ……多少はやるようだ。だが、まだ俺は終わらんぞ!」
大きめの体躯から繰り出される上からの切り込みは、いつもの俺であれば横に回避していただろう。だが、今の俺は違う。手を魔力で強化し、上から振り下ろされた剣を片手で受け止めた。
そのままカイラを持ち上げ、敵側にいるリーマンとアルバートにぶつけようとした、その時だった。
俺の後ろからまばゆい閃光が放たれた。それと同時にアルバートの声で、
「僕のことを甘く見すぎだ、アルフレッド君。君の敗因はね、僕から注意をそらしたこと。ただそれだけだよ」
と聞こえた。
俺の魔力感知には何も引っかからなかった。なのになぜ、こいつが後ろにいる?まずどうやって魔力をためた?など、いろいろな考えが頭をよぎった。だが、体は違った。反射的にカイラを投げ飛ばすと、
瞬時に魔力吸収を行った。
アルバートから放たれた閃光は俺の魔力吸収によって吸収された。
「なっ⁉」
驚きの余韻に浸る時間を与えない勢いで俺はアルバートの腹に一撃を入れた。
「グハァッ……かかったね……?! やれ、リーマン、カイラ!」
直後、後ろから蒼白い光線が俺に直撃した。二重のブラフはさすがに聞いていなかった。俺は対処できずにその光線をまともに食らってしまった……ように見えた。
こんなところで負けてたまるか。まだ後に、亮と華がいるんだぞ。俺はあの二人にかっこいいところを見せたいんだよ。そのためにここまでわけわからん作戦で戦ってるんだ、負けたら恥ずかしいどころじゃない。勝たなきゃダメなんだ。
「いい加減にくたばれ小僧!」
「これが俺たちの最大出力だ!」
カイラとリーマンの叫び声が耳の響く。くたばってたまるかってんだ!
「魔力を奪い取れ、、魔力強奪‼」」
とっさに脳裏に浮かんだ方法。魔力が抑えきれないなら、すべて奪って自分の物にしてしまえばいい。俺の魔力吸収は、敵の魔力を吸い取り予備バッテリーとして保管するものだ。そのため、自分の魔力がなくなった時に補填する動作が必要になる。だが、この魔力強奪ならその動作をスキップし、相手の放った魔法そのものをも奪うことができる。そうして放たれた俺の魔法は、青白く光った光線をすべて奪い取った。
「は、ははは……化け物か何かか、あれは」
「まだだ!カイラ!」
リーマンはすでに戦意を消失し、足から崩れ落ちた。カイラとアルバートは俺を挟むようにして攻撃してきたが、カイラは首に手刀を入れ、アルバートには魔力強化のデコピンを腹に一発入れた。
直後、審判の合図が場内に走った。
「そこまで!勝者アルフレッド・クランフィルド!」
気付けば周りはギャラリーで埋まっていた。大きな歓声とともに、俺は端へと避け、華と亮のもとへ逃げて行った。




