体験組バトル②
「ふぅ、少し疲れたわ。あなたたちもお疲れ様、アルスくん、グレンさん」
「あぁ、最後全部持ってかれたのはちょいと悔しいが、まぁ楽しかったしな」
「僕も。思ったより楽しめたからね」
なんか三人で意気投合してて楽しそうだな。楽しんでいたなら何よりだ。
さて、次は俺たちの番になりそうだ。
「では次、アルフレッド・クランフィルド。前へ」
「はい」
「次、アルバート・ブルーノ。前へ」
……ん?俺一人vs学年代表ってことか?さすがに経験の差もあるだろうし、ちょっと厳しい気もするが……。まぁ大丈夫か。最初から殺す気で行こう。
「そして、カイラ・ノルデヒル。サーマンの二人、前へ」
一瞬で話が変わってきた。今呼ばれた二人は、魔力量があのアルバートという少年にひってきするほど多いのだ。まったく同じというわけではないが、それでもかなり多い。
「これでちょうど良いだろう。さぁ、始めようかアルフレッド君。君の力を試させてもらう!」
そう声を上げると同時に審判が始めの合図を放つ。
「では、アルフレッドVS白狼の牙第1部隊メンバー、バトルはじめ!」
……?。ちょっと待て、今なんて言った?第1部隊メンバーって言ったか?俺一人VSフルメンバー。
ちょっとまずいかも知れないな……。
「先手必勝だ!炎上級魔法、火炎爆破」
俺が色々考えている間に、敵のカイラが魔法をぶっ放してきた。正直、この程度の魔法は避けるまでもない。魔法に対して特段耐性の強いヴァンパイアの子供なのだ、この程度で負けてしまって恥ずかしいにもほどがある。
にしても、どうやって対処しようか。3対1の状況を打破する方法はいくらでもある。高威力の魔法で消し飛ばす、煙幕を張って内側からナイフで一人ずつ狩っていく。こういうのも悪くはない。
そう、悪くはないんだ。ならなぜ実行しないか。それは、個人的に俺が男として華と亮にかっこいいところを見せたいからである。いや、結果勝てればいいんだけどさ。
ちなみに今の現状は、
「ほらほらどうした!今回の首席はこんなものか?」
などと一方的に攻撃を受けている。押されているわけではない。すべて流しているから問題はない。
「攻撃しなければ勝てないぞ?アルフレッド君。それともあれか、ピンチになったら本気出すって言うのかな?」
あのアルバートとかいうやつ、絶妙にうざい煽りをして来やがる。腹立つな。自分まだ一歩も動いてないくせに。
「もういい、これ以上長引いても時間の無駄だ!サーマン、合わせるぞ!」
「応!」
そう言うと、カイラとサーマンが前に出て合わせ技の準備をしていた。
「炎聖魔法 豪火絶壁!」
「風聖魔法 竜巻!」
二人が放った技は合わさり、炎の竜巻となった。
そして、その中心に捉えられていた俺は完全に回避不可能となった。まぁ、魔力吸収を制御できるようになったから全く効かないんだけどね。
「勝負あったな!どうだ首席の小僧!生きてるか?」
「いいや、この魔法の中だと死んでるかもしれないね」
どれだけ舐められればいいんだか……。もうそろそろ、やり返すとしよう。
「誰が死んでるって?なめるのも大概にしろよ?」
そう言うと俺は辺りの魔法全てを吸収したと同時に魔力覇気を放った。出力は前よりも数段上にして。
とはいえ、最大出力までは余力がかなりある。もう少し上げてもいいかもしれないな。
などと考えていると、敵側のカイラとサーマンが覇気による硬直を強行突破しようとしていた。
「ウォオオオオオオ!!」
と、大声を出しながら魔力覇気を解こうとするカイラとサーマンの横で、アルバートは余裕そうな笑みを浮かべた。想像通りだ。この程度の魔力覇気は彼には効かないらしい。
やっぱり、一度本気を出してみたほうがいいらしい。俺も自分がどこまでできるのか知ってみたいしな。
本気だ。華を助けた時のような、全能感。なんでできるような、あの思った通り体が雨後行くような感覚。敵を一瞬で無力化させるような、あの感覚を思い出せ。奮い立たせろ。全力をだせ。
「ハァアア!‼」
俺は覇気に使った魔力をすべて引き戻し、本気を出した。
俺の外見は、青色の目に白い髪。前世だったら黒染め待ったなしの校則違反で怒られてしまうような見た目だ。その髪色と目の色が、白から赤へと変わっていく。この感覚だ。今なら何でもできる。
「お前らまとめてぶっ飛ばしてやるよ」




