体験
「じゃあ、ここで各自アップを済ませておいてくれ。今から体験のために数人集めるから、集まったらその人たちと模擬戦をやってもらいたい。それなりに実力者を集めるからね。覚悟してかかるように。
では、また後で」
「りーん、ストレッチ手伝って。体固まっちゃってさ。」
「いいぞ。あ、そうそう。華にも聞きたいことがったんだ。ストレッチしながらでいいからさ」
「おっけー!ありがと!」
華に聞きたいこと。それは、聖女についてだ。なぜかというと、コルジオにいたあのお嬢様も自分のことを 聖女と言っていたからだ。選ばれし聖女。そんな重大な人物が二人いるのならばそれでいいが、いないのなら俺たちが話していたあのお嬢様は本当に聖女なのかどうかが知りたい。
「で、凜の聞きたいことってなんなのー?」
「そうそう、聖女の話なんだけどさ。聖女って一国に何人いるの?」
「えっと、世代にもよるんだけどさ。私の代は三人いたらしいんだけど……」
「だけど?」
「なんかね、3人いるんだけど、一人いなくなっちゃったの。なんかその子の家が問題あったのかもしれないけど、一説は魔導皇国に連れ去られたとか、もう一つは転生したとか」
「なるほどね……」
「なんで聖女の話なんか聞いたの?」
「なんとなく……って言いたいけど、隠し事はよくないもんね。華を助けるちょっと前にコルジオで会った女の子がいてね。色々あって助けたんだけど、その子が聖女だったらしくて。で、まぁ普通だったら聖女って一人だよなぁって思って」
「なるほど」
俺の先入観のせいか。選ばれし聖女ていうと大体一人のイメージが強くなっている。こういうの一回捨てないと、今後に支障が出そうだ。
「ねぇ、アル君?君に少し聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「あ、あぁ。どうした急に」
「あなた、なんの種族?」
おっと、その質問か。答えずらいわけではないんだけど、種族が種族だからなぁ。
「あー、白狼族だ」
「……嘘ね。身体能力の高さが取り柄の白狼族が、あそこまでの魔力を放てるわけがないわ。バカにしてるのかしら?」
そうだった……。さっき魔力覇気で脅しちゃってるから変なウソ通じないんだ。まったく、めんどくさいことしたな。
「白狼族と吸血鬼のハーフだよ。だから魔力量も多いし、身体能力もいいわけだよ」
「なるほどね、納得だわ、教えてくれてありがとう、アル君」
そういうとアデリーナは俺の頭をポンと叩き、一人でアップを済ませに行った、
「なんだったのかな」
「さぁ?まぁそこまで気にしなくてもいいんじゃないかな。そのうち心が開けてくれば、いろんなことを教えてくれるかもしれない」
「それもそうだよね。あ、リョウ―!」
「ん-?どうしたの?」
「この後三人でさ、ここの近くにあったスイーツ屋さん回ろうよ!」
「いいね、もちろん!凜も行くよね?」
「当り前じゃん。甘いものには目がないよ」
そんなほっこりした会話を続けているうちに、アップ時間は終了。俺たちはアルバートさんによって組み分けされ、3対3の模擬戦を行うことになった。