制服が似合ってるお二人
「お待たせ―」
「遅かったね。何してたの?」
「なんか受付のとこで止められちゃって。それで、制服と生徒証もらった?」
「もらったよ。でも、着なくていいみたいだし、最初の入学式だけきてあとは自由にしようかなって思ってる。凜は?」
「俺は久しぶりだから着ようかな。着崩すのもありだし」
「そうね。そう考えると制服っていいものよね。じゃあ、一旦着替えましょうか。亮、トイレで着替えよ?」
「うん。じゃあ、凜。終わったらここで待っててね」
「はいよー」
亮と華はそのまま女子トイレに着替えに行った。俺は少しだけ気になってたことを兄貴に聞いてみることにした。
「ねぇ、兄さん。今日兄さんに化けてる不審者にあったんだ。見ず知らずの人過ぎて簡単に見抜けたんだけど、何か兄さん関係してる?」
「いいや、知らないな。特徴は?」
「えっと、この制服を着てた。似せる気がない物まねを見てる感じがしたよ」
「なるほどな……」
兄貴は顎に手を当て、深く考えるようにして横にあったベンチに腰を下ろした。多分、本当に心当たりがないんだろう。俺はその場でさっと着替え、さっきまで着てた服をすべて袋にしまった。
「その制服を着ていたということはこの学園の人間である可能性が高い。アルのことだ、蹴っ飛ばして正体を暴こうとしたんだろう」
「あ、当たってるよ……」
「でも、変身は解けず。そのまま逃走されたってことだな。まぁそこまで気にする必要はない。
お前はお前だ。アルらしく明るくふるまってけ」
「……うん、ありがとう。兄さん」
普段無口な兄がとても心強い言葉を口にしてくれたおかげで、体にやる気がみなぎっていた。
着替えを終えて二人を待っていると、女子トイレから出てくる二人が見えた。華はグレーのスカートに紺のブレザ―、少し目立った柄のネクタイをつけていた。亮は、俺と似た感じのズボンにブレザー、そして
青に近い色のネクタイをしていた。
「二人とも、よく似合ってるよ」
「へへんっ、当たり前!」
華は俺に向かってピースをした。亮の方に目をやると、なぜだか少しぎこちなく恥ずかしそうだった。
「制服着るの久しぶりすぎて恥ずかしいな。ネクタイおかしくない?」
「大丈夫だよ、亮。似合ってる」
「あ、ありがとう」
「じゃあ、入学式の会場に行こうか」
「うん、お兄さんはどうするの?」
「俺は学園長に話をしに行く。以前来たとき、一つ頼みごとをしていたんでな」
「そっか。じゃあまたあとで。クロハも、今は兄さんについていってね?」
「かしこまりました、ご主人!」
「ははは……」
相変わらずクロハの変わりようには驚くな。まぁ、仕方ないか。
「入学式の会場こちらになりまーす!もう間もなく始まりますのでお早めにお着席ください!」
「だってさ。じゃあ、急ごうか」
「うん」
そして俺たちはそのまま会場へと向かった。




