魔導皇国許すまじ
最新話です!
「亮、めっちゃお酒飲んでたみたいだけど、大丈夫?」
「う、うん。大丈夫。あれは別に……ね?ほら、気にしないでくれると嬉しいかなぁ……」
一緒に走りながら顔をめっちゃ赤くしている。ああ、こいつそういえばさっきあんなこと言ってきたんだったな。
「いや、忘れないぞ。酔いまくって押し倒してきたこととか。」
「ダメダメダメ‼ほんとに!僕死んじゃう‼」
やっぱなんかかわいいな。昔と変わらずかわいい顔立ちのまま。……俺は吸血鬼で、亮は人間のままなのか。どうしてなんだろうな。俺は長生きするのに、亮の死を見届けなきゃいけない。
俺はこっから先そう簡単に死ぬことはできない。吸血鬼の体は再生し、寿命はわからない。父さんは少なくとも四千年以上生きているから、俺もそのぐらい生きるんだろう。……はあ。もう、死んでほしくないんだけどな。厳密には、居なくなってほしくない。死んでなきゃいいってわけじゃない。
ずーっと、そばにいてほしい。華にも、亮にも。まあ、今考えたって仕方ないか。
「なぁ、亮。」
「な、なに?」
「大好きだ。お前も、華も。ありがとうな、こっちにまで来てくれて。」
「き、急になんだよ。恥ずかしいなぁ…。でも、僕もこれてよかった。長い間待たせてごめん。
さあ、華を見つけよう。ついたよ。ローズレイン、北区城壁。ここを乗り越えたらすぐだ。」
「ああ。華のためにも、動ける限界まで動こう。」
そう喋りながら、俺たちは城壁を飛び越え、北区に侵入した。ここの領主の家だから、見つけやすいだろう。と考える必要もないほどに、すぐに見つかった。
「どうする?正面から入る?」
「そうしよう。勇者の権限的な物で、領主に謁見したいとか言ってみてくれ。」
「ちょうど、勇者の証を持ってきてるんだ。行ってみよう。」
俺たちはそのまま正面の門にとどまり、衛兵に話を通した。勇者の証を見せたとなると、突然態度が急変し中に入れてもらえた。
「領主の部屋も教えてもらったし、どうせならかっこいい感じで入りたかったな。」
「かっこいい感じって?」
「例えば、真夜中に月明りで照らされた部屋。そこで急に窓が開いて、風が入りカーテンがなびく。
その窓から入るとか。」
「今日月見えないけどね。」
「やかましいわ。できたらいいなの話だよ。えっと、領主の部屋はここか。さあ、入るぞ。」
「うん。」
俺は3回ノックをし、ドアを開けようとしたときに野太い声で「入れ。」という声が聞こえた。
「失礼します。北区領主 カルレイ・f・ローズ様、真夜中に申し訳ありません。
勇者 リョウ・サカタ、面会に来させていただきました。」
「勇者殿か……まったく、なんでこんな時間に。昼であればおもてなしもできたでしょうに。
まあ、お座りください。そちらの方は?」
「お初にお目にかかります領主様。Bランク冒険者、アルフレッド・クランフィルドと申します。」
「ほう……クランフィルドの名を持つ者か。それにミドル無し。名前と見た目からおそらく吸血鬼であろう。それもかなり高位の。」
「まさか、そこまでお気づきになられるとは。」
今までは人間の国で名前をしっかり名乗ることはなかったからな。作法もくそもあったもんじゃなかったしな。名前だけでも吸血鬼ってばれるの面倒だし、今度からアルだけにしようかな。
「にしても、こんな時間に来て、どんな用だ。かなり大事な要件のように感じるが。」
「ええ。領主様のお子様、クラリア様についてです。」
「ああ、そのことか……あの子は、魔導皇国に攫われた。噂で回っているだろうが、事実だ。
今現在、私が起きている理由もそれだ。聖女であるあの子をそう簡単に失うわけにはいかない。
第一、聖女である前に私の子供なのだよ。そう簡単にあきらめるわけにはいかない。」
そうだよな、実の子供を失うっていうのは、俺らには計り知れないつらさがあるんだろう。
それに、華はおられの幼馴染だ。悪いが、年数だけならこの人よりも、この世界で華にかかわった人よりも長いんだ。そう簡単にあきらめていい立場じゃない。
「あなたが華のお父さんでよかったと、俺は思います。なぁ、亮。」
「うん、そうだね。この人で良かった。凜、この人になら真実を話してもいいんじゃない?」
「もともと、俺は隠してなかったんだけど……。まあいいよ。」
「華?真実?なんの話をしているんだ?」
「カルレイさん、あなたには真実をお話しします。信じるかどうかはあなたに任せます。」
「なんだいきなり。」
「私とアル、そしてクラリアさんは前の世界で一緒に暮らしていました。華とは、クラリアさんの前世の名前です。私は勇者召喚でこっちに来て、アルとクラリアさんは転生してこっちに来たんです。」
「……勇者様と吸血鬼末裔だ言うことだ。信じないわけにはいかないな。それで、君たちもクラリアを助けたいということでいいのか?」
「はい。」
「そうか。ありがとう、恩に着るよ。今日はもう遅い。部屋を一つ用意させるから、そこで休んでくれ。」
「ありがとうございます。では、失礼します。」
話が終わると、領主が一人のメイドを呼び、部屋に案内してもらった。
「さて、この後の話だ亮。」
「そうだね、どうしようか。」
「正直なところ、俺はもう国を潰す勢いで行こうと思ってる。」
「あぁ、僕もだ。本当に攫われたとわかった今、いら立ちが抑えきれなくてね。もういっそ、復活できないくらいに壊そうかなってしゃべりながら思ってたところだ。領主の令嬢を誘拐するっていうのは、、潰される覚悟がないとできない行動だよ。………もう、僕ら二人でつぶしに行こう。」
「あぁ。俺もおんなじこと考えてたんだ。今日、今から兄さんに偵察に行ってもらう。兄さんとなら連絡が取れるから。城の構造と敵数ぐらいはわかると思う。血脈って言って、吸血鬼の中でも希少な
能力らしい。これを持ってる同士だと遠距離でも情報が交換できるんだ。」
「便利だね。じゃあ、偵察はお兄さんに任せるとして、どう攻める?」
華は皇国の人間に攫われた。でも行方がわかんないんだよな。いっそど真ん中の城叩いてあぶりだすっていうのもなしじゃない。それに、華は聖女ってことだから、重要人物として一番安全と考えられる都市の中に隠されている可能性が高い。
「可能性で言うなら、魔導皇国の首都、ルルームの城にいる可能性が高いと思う。だから、そこを兄さん
に調べてもらう。もう今、眷属のネズミを使って城に侵入中らしい。城の構造は地下2階、地上3階建て。地下1には牢獄があり、そこにいる可能性が高い。もう一か所可能性が高いのは、3階、魔導皇国 皇帝謁見室のすぐ横にある部屋。関係者以外立ち入り禁止的な看板が立っていて、そこに出入りする召使の運んでいる者が質素な食事らしい。」
「なるほど、もう動いてるのね。仕事が速いな。じゃあ、侵入経路は、もう正面ぶっ壊し突破で行こう。
修繕費と、他国の重要人物を誘拐したってことを重い責任にする。それで、華を死んだように思わせ、
殺してはいけない存在を殺した陽男に見せかけることができたら一番大きな被害で終われるかな。」
「国民に被害が出ないようにしないとだな。」
魔導皇国の政治はどうなってるんだか。まだ法律的な物が確立してないとかでやりたい放題なのか、
ただ自分の国が一番強いと威張って力を見せつけるためだけにこういうことをしてるのか。
本当によくわからん。上の人間の頭が悪いとした人間も質が悪くなるのかもな。
「今から行ってもあんまりいい結果にはならないと思う。明日の朝すぐに行こう。オッケー?」
「ああ、了解だ。お休み、亮。」
「うん、お休み凜。」
明日、絶対華を奪還する。
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