次の街へ
「追撃は不要だ!無駄な犠牲を出すな!敵は撤退した。我々の勝ちだ‼」
ライグンの声が響くと共に、ルーシア軍の兵士達が次々に声を上げた。
雄々しい叫び声と共に歓喜の声が聞こえてきた。そこでやっと勝ったんだとわかった。
「よくやったよ、凜。僕なんかまだまだだって思い知らされたよ。これからもよろしくね。」
「あぁ、当たりまえだよ。3人そろって死ぬまで一緒だ。」
敵軍との決着は、クロハのブレスによってかなり早まった。俺は今回目立った功績をあげてないから、
問い詰められたりはしないと思うけど……。まあそこは気にしないほうがいいよな。
気にするよりも先に逃げたほうがよかったり……いやめんどくさいし疲れたな。
とりあえずコルジオで少し休ませてもらおう。
「さあ、凜。速く官邸に行こう。皆が待ってる。」
「待ってるのは俺じゃなくて勇者サマの事じゃねぇの~?」
「そんなのはいいから。」
俺は亮に連れ去られるようにして官邸に戻った。
被害は小さく収まってはいた。それでも、死傷者は出ていた。
ルーシア軍全体兵士数 約20万人。兵士起用数 約7千人。死者792名、重傷者約200名、軽傷者約100名。
この戦いで帰らぬ人となった792名。復帰はほとんど不可能であろう200名の兵士。
こんな争いが起きるせいで、罪なき者の命が失われていく。その現実に、俺は腹が立っていた。
争いをなくすことはできない。どの世界だってそうだ。平等や公平など夢のまた夢。
この戦で死んだほとんどの兵士を俺は知らない。顔も、名前も、どんな人間であったかも。でも、その人たちにも家族や大切な人はいたはずだ。大切な人を失うのは本当につらい。 そのくらい俺にだってわかるさ。だから、まだ戦争という概念が薄れてきていないこの世界で。
俺は一つの目標を掲げることにした。すべての人に平和をもたらす、というのは現実的ではない。というか無理だろう。だから俺の周りだけの話になってしまうけれど、俺がいる戦場では、味方の死者は誰一人出させない。もう二度と、亮や華、そして何より自分がつらい思いをしないために。言ってることがごちゃごちゃになってきて、何を言ってんだこいつって思う人もいるかもしれない。
まあ、まとめると「俺の周りにいる奴らは俺が守りぬく」ってことだ。すべての人間を守るなんて大儀、俺には到底できたもんじゃない。だから、せめて俺の周りにいてくれる人だけでも、守る。
これが、今回俺が決めた目標だ。そのために俺はもっと強くならなきゃないけない。
この目標を、現実にするために。




