衝突。
最新話です!
翌日明朝、最終会議。
「ただいまより、この戦においての作戦の確認を行う。」
場を仕切るのはさっき到着したルーシア王国軍幹部 ライグン・カーニスだ。
亮より全然弱いらしいが統率力に長けているようで、兵士の顔も引き締まっているように感じる。
「作戦は、勇者様考案の通りまず敵の隊列を分離する。敵の本隊を分離し、本体に勇者殿が入り、壊滅まで追い込む。それまで、こちらの軍は耐えきることを目的とする。以上‼各自準備にかかれ!」
今回の作戦で、俺は勇者の助っ人Aとして動く。名前を出す必要もないし、顔もフードで隠れている。
ばれていなければいいんだけどな。仮面でもかぶっとくか?めんどいけど。
「凜。そろそろ始まるっぽいよ。魔力感知で見てたけど、敵が動きだした。さあ、行こう。僕と一緒に。」
「ああ、当り前だ。」
今の俺は、何でもできる気がする。クロハのブレスだって耐えられる。まあ、今回はクロハの役目はなくなっちゃったけど。クロハが黒龍の状態で現れたら混乱状態どころじゃないからな。
今回は人型の状態で参加してもらう。あとは、兄さんだな。
「兄さん、今回よろしくね。合図が見えたらすぐに分離した壁際を固めてほしい。
俺らの邪魔にならないように。」
「ああ、任せておけ。お前は怪我をするなよアル。昔から危なっかしいところは多かったからな。」
「了解。」
まあ、今回は危なっかしいどころじゃないけどな……。まあしゃーない。
できることをできるだけやろう。さあ、行動開始だ。
「2時の方向、敵陣の魔力を感知しました‼」
「よし、行動を開始しろ!この近くは開けている。野原に誘導し、そこで決着をつける‼」
「さぁ、凜。行こう!」
「あぁ、お前にいいとこ見せないとなぁ‼」
さぁ、しっかり仕事はこなさないとな。俺はあのライグンってやつには認識されてなかったから、
なるべく視界に入らず相手の陣まで近づこう。
「亮、敵の本隊で集合!」
「おけ!」
まずは敵陣の誘導だな。少し大きめの技かますか。
「超級炎魔法 龍炎砲‼」
これを……敵陣の後方と左に放つ!
「らぁぁ‼曲がれ!」
俺の魔法はうまい事入り、敵の向かう方向を一つに絞ることができた。そして、森の茂みに隠れていた
魔導皇国軍の兵士たちは、野原に直進してきた。……なんか少ないな。魔力感知では違和感はない。
だけど、こっちの軍の数の半分程度しかいないぞ?
俺はふと、数十キロ離れた先の崖を見た。そこには、3台の巨大な砲台と紫色の光が集まっていた。
言うまでもなく光線銃だ。そして、一本の光線が放たれようとしていた。その光線の標的は、
亮だった。まだ射出されていないのになぜわかる?と思うかもしれない。わからないさ。でも、なぜか亮に銃口が向かっているように見えた。
「亮‼」
俺はそう叫ぶと同時に、まだ視界の端にいる亮の方へ限界のスピードで走った。俺のスタートの方が一瞬
、ほんの一瞬だけ速かった。でも、相手は光線銃。光の速さに等しいそれは、すぐに亮との距離を縮めた。
「間に合え‼速度上昇魔法‼もっと速く!もっと、もっと‼」
その一瞬、その瞬間だけ、俺はその場の何においても速くなった。
そして、俺の装備していた血爪が亮に向かっていた光線をはじいた。
「ハァッ……ハァッ……ま、まにあった……」
間一髪、俺の右手が亮の視界を遮り正面衝突を避けた。
「り、凜!大丈夫?!」
「いや、さすがに光線銃はきついわ……」
よし、決めた。被害は抑えるつもりだったけど、亮が
死にかけた。これで、優しくしてやる道理はなくなった。
「亮、ごめん。俺本気出すわ。」
「本気?」
「クロハ!兄さん!作戦はナシだ!!敵を壊滅させる!」
「了解。」
「その指示を私は待っていた!!」
その瞬間、兄さんは敵の本体、光線銃のところへ向かい、クロハは高く飛び上がった。
「亮、行くぞ。あいつらを殺そう。」
「うん、やろう。」
そして俺は、全速力で銃の所へ向かった。敵陣に近づくにつれて少し敵の声が聞こえてきた。
「やはりこの魔導式熱線銃は素晴らしいな。我が国の力の結晶だ。あの勇者など敵ではないわ!
ハッハッハ!!」
等とほざいてる声が聞こえた。亮を狙われたことに憤りを感じていた俺はすぐにその声のする方に向かった。
「亮が今までどんな気持ちで暮らしていたのかも知らないで、あいつを殺そうとしてんじゃねぇよゴミどもが。今までに感じたことのない苦しみを味わって死ね。血爪斬撃」
完全に殺しはしない。死ぬその時まで痛みを与えてやる。俺の幼馴染を狙うってことは、俺からしたらそれほどに重い罪だから。
「グハッ…き、キサマは何者だ!ルーシアの兵士ではないだろう!!」
「叫ぶ余裕があるなら、もう少し痛めつけても良いよなぁ。」
「わ、私は魔導皇国軍の指揮官だぞ!」
どうせ喋った所で関係ない。仲間を危険にさらすという行為が俺の地雷なんだから。
「じゃあな。偉そうなおっさん。」
「ま、まってくr」
相手が喋り終わるより先に、俺はそいつの首を切っていた。ほんっとうにイラついた。亮を狙う敵にも、
亮が狙われることを分かっていながら守ることを忘れていた自分にも。
「ふぅ、後は、クロハに任せるか。」
空高く飛び上がっていたクロハは、人間のまま背中に翼を生やし人と黒龍の間のドラゴニュートになっていた。多分あの感じだとブレス打つんだろうなぁ……。
「人間ども!龍の恐ろしさを知るが良い!
龍熱波!!」
クロハはそれを巨大な砲台に向かって放ち、周りを一瞬で焼け野原にした。
「ハッハッハッ!!私の力を思い知れ!!」
クロハはそう言い放ち、ゆっくりと降下した。この一瞬で敵は壊滅、ルーシア軍と戦っていた
別動隊もクロハのブレスに気圧され、ほぼ戦う気力が失せていた。その中でもまだ、異様な魔力を放つ
人間が一人いた。
「残りはお前一人見たいだ。諦めと逃げたらどうなんだ?」
「それができるならとっくにしてるわよ…。にしても、あなた強いのね。」
魔力をみた感じでは勇者である亮より少し劣るぐらいだが、魔力だけじゃわからないものがほとんどだ。
あまり舐めてかからないほうがいいとは思う。
「勇者、黒龍。あと二人はなんなのかしら。」
「なんだろうな。」
俺等の正体までは分からないのか。兄さんもこの場にいるが、能力もなんも使っていないしな。当たり前か。
「あなたは吸血鬼?の割には目が赤色じゃないのね。もーめんどくさいわね。いっそのことまとめて殺してしまおうかしら。」
「できるならやればいいさ。だが、その時はお前も死ぬことになると思うぞ。」
まぁ、兄さんの言う通りだな。あいつが俺等を殺そうとするなら、俺らも全力で敵対する。勝算は少ないだろう。
「まさか、この人数相手に敵対するつもりなんてさらさらないわよ。冗談よ、冗談。私はそこまでバカじゃないわよ。今回はおとなしく引き上げるわ。ここにいる誰よりも私は弱いからね。」
そういうと、謎の女はチリのなるように消えていった。
まったく得体のしれない女だったけど、今後要注意していた方がいいタイプだろう。
とりあえず、終わったってことでいいのか……。速く戻ろう。




