子vs親
「じゃあ、準備はいいか?アル」
「いやいや、よくないんですけど⁉⁉」
なんでこうなったんだ。いやまぁ、なんとなくそんなことにはなるだろうなと思ったけど。いや、この二人をここで相手しちゃまずい。本格的にやるなら、外でだ。
「ねぇ、二人とも。さすがに施設を壊したくはないからさ、外に練習場あるし、せめてそこでやろう?ね?」
「あぁ、そこまで言うならまぁ、わかった」
よかった。さすがにここは理解してくれたか。できることなら問答無用で戦闘なんて挑んでこないでほしいんだけどな……。俺が本気出しても勝てるわけないし、今スキル強化終わったとこなのに。まぁ、とりあえず外に向かうか……。
…………ついてしまった。此処まで来たら、やるしか無いんだよな。はー、もう怖い。即気絶とか勘弁してよ。
「さぁ、アル。始めようか。いつでも来い!」
母さんがそう叫んだ次の瞬間
「ちょっと待った!!」
と、叫び声が聞こえた。
兄さんの声だ。でもどっからだ?周りにはいない。魔力探知にも……上だ、上にいる。
そう思い見上げた、次の瞬間。
ドゴォォーン!!!!という轟音を響かせながら、兄さんが降ってきた。
「またせたな、アル!助けに来たぞ!」
「兄さん!!どこいってんだよ!」
「お、おォ、ちょっと調べ物をしに行ってたんだ。すまんな、連絡取れなくて」
どっか行ったと思ってたら、そう言いうことだったのか。まぁいい。そんなことよりもだ。
「兄さん、状況は分かってるね?」
「あぁ、父さん、母さん、久しぶりだね。それじゃあ久々に、俺たちと手合わせ願おうか!!」
そういうと兄さんは魔力を放出し、姿を変えた。竜のような翼にツノ。そして吸血鬼の爪と目。
……俺は一瞬で気づいた。これはクロハの力だ。いったいどうやって?
「兄さん、それ、クロハの力だよね?今はいいけど、後でしっかり教えてよ?」
「あぁ、任せておけ」
なんだか頼りになる兄だ。俺も前世でこんなお兄ちゃんほしかったぜ、もう遅いけど。
「やるなぁ、キール。黒龍に認められたのか!だが、その程度で俺たちに勝てると思うなよ?」
父さんも戦うのかぁ……。まぁ、わかってたことだし、仕方がないか。
よし、覚悟を決めろ。魔力を込めろ。本気で行くぞ!
俺は刀と指輪を装着し、魔力を全開放して吸血鬼化を発動した。だけどこれじゃ勝てない。だから、こっちも使う!
「白狼獣化発動。混合発動 紅鬼獣化!!」
発動直後、全身の毛は逆立ち赤く染まる。魔力が爆増し、身体能力、魔力操作ともにすべてが跳ね上がる。だが、予想の使用限界時間は15分。制限時間後は、1時間は動けないだろうな。
「さぁ兄さん、短期決戦だ。できる限り早いうちに決着をつけるぞ!」
「あぁ!」
「さぁレオ、いくよ!」
「任せろキアラ!」
こうして、化け物同士のぶつかり合いが始まった。




