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3)人魚姫は、認めない

「それでアリーは、その王子様の婚約者になったってこと?物語のお姫様みたい!ロマンチックね」

 うっとりと目を輝かせるのは、イルカのルー。乙女チックな可愛い女の子。

 人間のことが好きで、時々人間の物語を仕入れてくる。その中に、人魚と人間が恋に落ちる話があるらしい。何でも最近はやっていて、人間がよく物語を話してくれるという。


「全然ロマンチックじゃないわ!あれは騙されたのよ、詐欺って言うの!契約書はきちんと読みましょうって習ったのに…あのカリカリなしがない役人さんもどきが、オヨヨと嘆くから、つい…」

 そう、あの自称“しがない役人”さんは王子様の最側近で、全く()()()()などなかった。

 騙された。何もかもが、あの王子様の掌の上だったのだ。

 あの時を思い出して、私はもう一度大きな声で叫んだ。

「あれは、詐欺よ!」


◇ ◇ ◇


 私がサインをした紙を満足そうに見たカリカリおじさまは、「確かにいただきました。ここに、セオドア殿下と人魚姫のアリア殿との婚約が成ったことを宣言致します」とその細い体からよく出るなと感心するほど響く声をあげた。

 静かに見守っていた王子様御一行が、歓声をあげる。まだ状況が分からずに驚く私の手をとり、王子が口づける。

「末永くよろしく、我が人魚姫殿」


 その時初めて、私はちゃんと王子(セオドア様)を見た。

 深海みたいに深い青い瞳は私を一心に見つめ、薄い唇はゆるく笑んでいる。


「我が愛しの君は、アリアという名前なのだな。ようやく貴方の名を呼べる。愛しいアリア」

 私の名を呼ぶその声は、とろりと甘く、私は思わずぞくりとしたのだった。

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