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15)人魚姫は、知らない

 私の一言を聞いて怒り狂った父は、渦潮(うずしお)を巻き起こし、すごい勢いで一艘の船を城門まで呼び寄せた。

 その船にはセオドア様が乗っていた。

 彼はひらりと船から下りると、礼をとった。


 「婚約詐欺とはどういうことだ、人間よ。お前がアリアを好いていると言うから、此度の縁談を承諾したのだ。アリアはお前の顔だちを気に入っておったからな。しかしアリアは騙されたと悲しみ、落ち込み、塞ぎ込んでおる。私に涙を見せたのは、初めてだ。繊細な真珠のような我が娘を傷つけるとは、海の怒りをかいたくてか!」

 え、ちょっと待って!父が婚約を承認していたの?いつの間に。

 そして、どうして私がセオドア様のお顔が好きなことを知っているの?

 泣いたのは、お父さまが私を大切に思ってくれたことを知ったからよ!

 セオドア様に騙されたからじゃないわ。

 父の後ろで話を聞いていた私が1番ダメージを受けている気がする。


 だって、海王の怒りを真っ直ぐ向けられているセオドア様は、堂々と父に対峙しているもの。

 しかも、“顔立ちを気に入っている”の(くだり)では、父の後ろに立つ私の方を見てた。

 なんならちょっと口角が上がってた!


 セオドア様が、すっと右手を肩の辺りまで挙げた。

「敬愛なる海王陛下、発言をお許しください。此度の婚約について私の臆病さ故に、アリア殿下に誤解を与えてしまったこと、大変申し訳なく存じます。どうか今一度、アリア殿下に釈明の機会をいただけないでしょうか」

 その声は、静かな海の中に、凜と響いた。


 それを聞いたお父さまは、「次はない」とだけ告げて踵を返した。

 そして、私の頭をその大きな掌で撫でて、城へ戻っていった。

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