プロローグ
頭が…痛い。体が熱い
なんなんだろう、この痛みは。それと、体全体を包み込んで喰ってしまいそうな程の熱。
辛い辛い、つらいつらい、ツライツライツライ……!
そうだ、いっそのこと寝てしまおう。寝てしまえば、痛みなど忘れるだろう。
そう思った私は、、今まさに、体を喰わんとばかりに襲ってくる熱に身を任せた。
数秒後、彼女は息を引き取った。
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なんだろう。目の前がチカチカする。まぶしい…そうう思いながら私は、土の上に無造作に寝かされた重い体を無理やり起こす。
「…此処は何処…?」
起き上がった私の目に一番に入ってきたのは、森の木々の鮮やかさ。その次に真っ赤な太陽。
「う…うん?私は一体…」
コツンッ
何かが手に当たった。
それは大きな剣の入った鞘だった。
「何…これ…剣?それにしても、大きい…」
ガサッ
木の葉が擦りあう音が聞こえた。しかし、風は吹いていない。森の木々の間から、黒く大きなものが見える。そう、それは―
「―魔物ッ!?」
私は警戒体制をとった。かなり大きな魔物だ。油断はしていられない。とっさに私は剣を抜き、構える。
「ミノタウロス…!」
かなり大きな魔物―それは、巨大なミノタウロスだった。
私は立ち上り、剣をふるう。
…そこら辺の子供の方が相当マシだろうという具合に。
「えいっ!えい!そりゃ!あ、た、れぇぇぇ!!!」
それでも剣を振り回す。さっきから一回も当たってはいない。
ゴンッ!
鈍い音が、森に響き渡る。それは、彼女が、ミノタウロスに一発当てたという証拠だった。次の瞬間、ミノタウロスは、灰となって消えた。
「へ?や…った?」
しばらく、驚きと歓喜の混ざり合ったような感情に浸っていたが、唐突に不安に襲われた。
ここは何処なのか。
なぜこんなところにいるのか。
どうしてこうなっているのか。
そして―
私は一体誰なのか。
先程の剣の柄を見る。そこには『ライア』と刻まれていた。
不思議な名前だと思った。同時に温かい名前だとも。
私を救ってくれたこの剣は、今日から一緒に旅をすることになるのだろうか。
ならば、名前くらいは覚えておいたほうがいいだろう。
そう思ったのを喜ばしく思ったのか剣が輝く。そうして貰えると嬉しい。と。
少々びっくりしたが、なんだか不思議に当然のことだと思えた。
私の旅の目標は、本物の私を探すこと。
あぁ、そうだ。仮の名前も考えなくては…。
そんなことを考えつつ、私は歩き出した。
―彼女と『ライア』は、自分を探しに旅へと出たのだった。
しかし、彼女はまだ知らない。『ライア』がこの世界の闇の元凶を断ち切る、聖なる剣だということを―