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金魚の願い  作者: 千夢
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あなたが望むものとは

「金魚の擬人化?」

 イラストを学ぶ学校で、生徒同士ペアを組み、課題を出し合ってイラストを描きなさいという授業だった。

 私、水野梨乃の相手の子、加藤彩奈の課題がそれ。

「うん、もうちょっと詳しく言うと、赤と白の金魚で、服装がひらひらしてるの。水の使い手」

 じ、情報がもうちょっと欲しい……。

「服装はどんなイメージがいいのかな? 金魚も和金とからんちゅうとか琉金とか、種類いっぱいあるけど」

 相手はうーん、とうなると、さほど悩んだそぶりもなく、私の肩を叩いてニコッと笑った。

「任せた」

「えー……」

 任せるにもほどがあるのではないですこと?

 そうは思ったけど、強く出るのが苦手な私はそのまま続きの言葉を飲み込んだ。

 とりあえずラフ画を描くためにスケッチブックを取り出す。が、イメージが大まかすぎて全く描けなかった。金魚のことを知らなければと、スマホで金魚の画像と説明の書かれたページに飛ぶ。

 最初に載っていたのは琉金だった。もっとも金魚らしいという説明もある。

 ほむほむ、中国から琉球を通って薩摩に上陸、と。

 出身が中国か……男性なら漢服、女性ならチャイナ服って感じかな? どちらにしろ、ふくよかなほうが琉金っぽい。手足尾びれが長いってのもひらひらしているという課題にとっていいイメージかな。

 彩奈に男女どちらがいいか聞いてみた。

「断然、女性」

 そこははっきりしてるんだ。

 私はもう一度スケッチブックに向かう。グラマーな女性にチャイナ服に近いものを着せ、腕や腰回り、足元にオーガンジー生地をイメージした布でご希望のひらひら感を出してみた。

「こんな感じでどう?」

 彩奈に見せる。あまり嬉しそうじゃない。

「スレンダーなキャラを想像していたんだが」

 だったら、先にそれ言ってください……。

 私はへこみながら隣のページにスレンダーな女性を描く。もう一度、金魚のサイトへ飛んでいかにもスレンダーなコメットという品種を見つける。一旦アメリカに行って日本に逆輸入、ですか。

 尾びれの長いのに惹かれた私はラフ画に足元を重点的にひらひらさせてみた。でも、服装はあまり表現しきれなかったのだけど。

「今度はどう?」

 彩奈はちらっと私のスケッチブックを見ると、うんうん、と頷き、左手をグッドのジェスチャーする。

 私はさっきのグラマーな琉金のほうが好みだけど、相手が希望するキャラを描くのが課題だからこれを提出することになる。

 ちょっと、残念だなぁ。

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