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【悪逆の翼】  作者: 渦目のらりく
最終章 【悪逆の翼】
527/533

第515話 亡者と暴虐、“貪欲”と“傲慢”。薄汚れた手へと……


「おおおおおおおおおおッッ!!」

「ああああああああああッッ!!」


 空へと迫れば迫る程、“無限光”が激しくなっていく。神へと迫れば迫る程、焼け溶ける様な火炎を全身に感じる――


「それでもおぉおおおおッ!!」


 フランベルジュの噴き上げる雷火を地に向けたダルフは、さらなる加速を経て、並走していた鴉紋を抜き去った――


「ッおい、こんな時まで食って掛かってくんじゃねぇッ!」


 額にピキリと青筋を立てた鴉紋は、背の暗黒を爆発させながら、先をゆくダルフを追い立てて風を切る衝撃波の中を爆進し始めた。

 だがその時、勢い付いて迫る虫ケラを眼下に、神の指先が差し向けられていった――


『小さき羽虫めが――』

「ん――ッア!!?」


 するとそこで、ダルフの腹を一本の光線が射貫く――

 想像を絶する威力の白銀の線は、か細い刃と成りながら、地平の山まで届いていた。


「――ぐ……ぅ――――」


 これまで闇雲に宙を占拠していくだけの神秘の一筋が、明らかな意志を持って放たれて来たのである――


「くそ……っ!」

『この光は異分子からの干渉を受けない。遮るモノは例外無く塗り潰し、ゆくべき道を貫き、地を照らすのみ』


 腹を貫通した痛みに、しばし中空に留まるダルフ。光の速度で迫り来る白銀は避け難く、いともたやすく肉を突き抜けてしまっていた。

 この凄まじい威力を見るに、ヤハウェによって()()()と定められたダルフには、神の猛威を避ける事しか出来ないのかも知れない。この絶対なる力をフランベルジュで受け止めれば、希望の剣さえへし折れてしまうかも知れない……

 ……そんな風に、至極真っ当な思考で足を止めたダルフの元へ、眼下より黒き閃光が追い上げて来るのが見えて来た――


『もう一匹――』

「何時までも俺を虫扱いしてんじゃねェッ! 殺すぞぉッ!!」

「待て鴉紋――! この光は、強引にどうにかなる様な問題じゃない! 受ければ貫かれるだけだ、避けろ!!」

「――ッうるせぇぇあッッ!!」

『その傲慢(ごうまん)こそが、お前の身を滅ぼすと知れ』

「やめろ鴉紋――――!!」


 拳振り上げ雄叫びを上げた悪魔を迎撃せんと、空より煌めきの一瞬が過ぎ去る――


「――――――ッッ!!!」


 真正面、無謀にも振り抜かれた黒腕が“無限光”を捉えた時、小爆発を起こす発光がダルフの視界を奪っていた……

 そして次の瞬間、彼等が目にしたのは――


「グオオオオオオアガァァアアァアア゛ッッ!! ソコで待ってろヤハウェェエ――ッ!!」

『ハ――――?!!』

「な――ッ!!!」


 神の定めた神秘をへし折り、()を貫き通した悪魔の姿であった!


「今更俺の拳でブッ飛ばせねぇもんなんざ、ッある訳ねぇダろうがッ!」

『私の定めた現象を……奇跡の結晶体である“無限光(アイン・ソフ・オウル)”を……!』


 動揺を刻み付けた声音に、世界が震撼(しんかん)し始める――!


『ッ――()()()()()()()()……っこんな馬鹿な人間が、その様な力を宿したというか!』

 

 ――()()極まりし悪魔の拳は、神さえ撃ち抜く暴力を覚醒した!!

 怒り狂い、漆黒の煌めきを打ち上げながら、獣は叫ぶ――


「あるんだったら、テメェが見せてみろゴラァァアアッ!!!」

『――――、――く!!』


 “極魔”によって切り拓かれた閃光の一筋。神秘も奇跡も知った事かと。雄々しく、そしてどこか(まばゆ)いまであるその姿が、ダルフの網膜に焼き付いた……

 先程までの余裕は何処へやら、慌てふためき始めた“神”を横目に、ダルフは思わず吹き出しながら、猛る男へと微笑み掛けていた。


「……っハ! なんだよそれッ!」


 ――その時、ダルフの中より、迷いが切り払われた。


「無茶苦茶だ、お前は何時だって無茶苦茶で、向こう見ずだ……」


 眼前に構えたフランベルジュより、太陽の如き瞬きを解き放ちながら、雷火の螺旋が、“無限光”を()()()()()()――!!


『こちらの羽虫もっ!? 何が起こって――!』

「……認めるよ。俺はずっと、()()()()()()()()()()


 鴉紋を見詰めるダルフの視線――そこには何時だって、憎悪に紛れて()()の微かがあった。


「追い掛けていたんだ……」


 力に手を伸ばす。伸ばし続けた。人ならざる常人の息を超え、憎き怨敵の背中を追っていた。


「憧れていたんだ……」


 飽くなき欲望は底を知らず、“天魔”の力を授かり得ても尚、留まる事を知らなかった――


「お前の……()に――」


 渇望する。亡者の様に()()に!

 そうし続けてきた。その()()が、ダルフをここまで引きずり上げた!


 ――欲しい。お前の様な力が。

 破壊する為じゃなく、人々を守る為の力が――!

 やがてお前さえ喰い潰し、悪意を叩き伏せられるだけの力が――!!



 ――――()()()!!



 飽くなき力の渇望が、次なる力を得る可能性を与える――!


「お前と二人でならきっと、出来ない事なんて無い」


 深みへ達した()()。それは時に共鳴し、相互に作用をもたらす――……


「オオオオオオオオオオオアッグァァアァアァアァア゛アアアァアア――ッッ!!!」

「ぅおおおおおおおおっっ!! ウォオアアアアアアアアアアァアア――ッッ!!!」

『なん――――……だ』


 覚醒を果たす――()()()()


 揺るぎ無き眼光を(ほとばし)らせる二人の背より、雷電が激しさを増して空を這った――

 (おそ)れを知らぬ人類が、いま神へと至ろうと、血と泥に汚れた掌を、光へ伸ばす――!

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↑の☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂けると意欲が湧きます。 続々とスピンオフ、続編展開中。 シリーズ化していますのでチェック宜しくお願い致します。 ブクマ、評価、レビュー、感想等お気軽に
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