第514話 Ain Soph Aur
長く続いた、魂のダークファンタジー
今週末に完結!!
どうか、ブクマ評価レビューで最期の応援を
いがみ合いながらも、同時に走る黒と白の閃光――
激しき光に晒されながらも、天上の“神”の元へと雷鳴と共に駆け上る。
すると空を突き抜ける光の巨人は、まず左の掌を中空へと掲げた。
『“無”より――』
そこより怒涛の闇の波動が溢れ出す光景を認め、ダルフは面食らいながら額の汗を拭った。
「な……また“虚無”を打ち出そうというのか!?」
「いや違う――――!!」
『“無限”が生まれ――』
更にヤハウェは残る右の掌をも掲げ、そこより明滅する“無限”を打ち放っていった。しかしそれを直接鴉紋とダルフへと照射するでも無く、神は“無”と“無限”の解き放たれる波動の柱を、その胸の前で組み合わせる――
繰り出されんとする衝撃のエネルギーを察知し、二人は視線を通わせて左右に全力で旋回して行った――次の瞬間!
『“無限”より――“無限光”が生まれる――』
終焉と開闢が混ざり合い――超新生が巻き起こる――
『あるべき世界へ――“無限光”』
「んナ――――っ!!!?」
「うっアア――――?!!」
解かれた両の掌が差し向けられると、何よりも濃密な白銀の光線が、細く無数に放射して地に降り注いぎ始めていた――
「ヌ――っおおおおお!!」
「アガッ……っうう!!!」
身を捩るも、光を掠めるしか無かった二人。
その白銀は、光でありながら透けて通らず。この世の奇跡の全てを濃縮した事で、刃よりも過密な質量を得ていた――
「なんだこれは、実態のある……光!?」
「質量があり、触れれば肉を抉り取られる!!」
されど、それもあくまで光明の一つであり、性質として、光ともあり粒ともあり、流動的に変異したまま、何よりも速く果てへと達し、反射し、屈折し、散乱し、分散し、干渉する――
『無限の光は神秘の形。地を均し、生命を産み出し、あるべきでない異分子を排他する』
頭上より降り注ぐ光。その全てが脅威となりながら、乱反射してダルフと鴉紋を襲う――
「くっ……逃げ場がねぇ、どんどん拡散していきやがる!」
「っ……ただでさえ避けるのに精一杯なのに、大地からも反射して来ている! この光が害をなすのは俺達だけか!」
地に届いた光明は屈折し、散乱して分散する――無数の脅威に板挟みにされた二人を、海が囲い、灼熱の空が焼き焦がす――
「ヤベェな……っ」
「このままでは……っ」
空を惑う白雷と黒雷の閃光――
圧倒的絶望。詰みの形。もう数秒となく、人類の生存出来るスペースがこの惑星より取り払われるだろう。反射を繰り返す白銀は増幅を繰り返し、無限の脅威で地球を埋め尽くしていく――
「迷ってる時間なんてねぇ……ククッ」
「道は一つだ――ッ」
――だがしかし、未だ勝機を信じて疑わない二人の眼光が、同時に天を仰ぎ見ていた!
「――ッ行くぞぉおおおおっ!!!」
「応――ッッ!!!」
『――――っ!?』
天上へと、何処までも飛翔していく二人の翼。けたたましいまでの雷鳴を轟かせながら、光線を避けて神の喉元目掛けて迫り上がって行く――
『分からぬのか。お前達には、この絶望さえ』




