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【悪逆の翼】  作者: 渦目のらりく
第三十八章 灯火消えようと、友はそこに居る
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第386話 その“嘘”は嘘ではない


 シャルルへの対応の手立てが無く、ひたすらに命が銀へと変わっていく。増々と大きくなっていくシャルルの“球”に、皆がこの教会からの脱出を頭に過ぎらせた……。


「ふぅーむ……」


 嫌らしい笑みを携えながらミハイル像の前に座るクリッソン。半透明となった老将に向き合いながら、ひたすら打開策を思考するフロンスへと皆が振り返る。


「この教会から早く脱出しなければ、我等はただ死を待つのみ!」

「おいロチアート! さっさとクリッソンの術を打開する策を考えろ!」

「……」


 考え込んだフロンスに対して横柄な口を利き始めた騎士達。しかし当人は眉根も動かさずに顎に手をやっている。


「ああ言っておるぞ、何か思い付いたか家畜? ぐふふ、どうだ? 私の能力は何だと思う?」

「まだピースが足りません、まだ何か……」

「そうか、ならばヒントをやろう……本当の私は既にここには存在せず、教会の外から自らの姿を投影しているだけだ」

「あぁそれは嘘ですね。私達はこうして小声で囁きあいながら視線を合わせています。屋外からではこの声はくぐもり、ましてや視線を合わす事など難しい……ここに居ないとしても、貴方はこの教会の何処かからこの光景を窺っているのでしょう」

「ぐっふ〜なかなか頭の回る……やはり相手取るならば多少は知恵の回る方が良い」


 顎を上げたフロンスがハッと口を開いた。


「“嘘”……何故息をするように“嘘”を並べ立てる?」

「ぐふ〜?」

「まさか、貴方の能力は……」


 何かに辿り着いた様子の肉の異形を見上げ、不敵に片眼鏡(モノクル)を輝かせたクリッソン。彼は片方の目を弓形にしながら、黄ばんだ歯を見せて笑った。


「お前達は私の嘘を甘く見ているな……」

「いや、まさかそんな能力など……」

()()だ。私の()は“嘘ではない”」


 視線を竦ませ驚愕としたフロンス……ピクついた口元が動き出し、その眉根を上げる――


「貴方の能力は、“嘘を現実にする”能力……」

「御名答だ、食肉よ……ぐふふ」


 遂にクリッソンの能力に検討をつけたフロンス。しかし明らかになった情報は、ただ自ら達をさらなる窮地へと陥れる結果としかならなかった。


「信じられるか、クリッソンの能力がそんな……そんなの反則だ!」

「何でもありじゃないか、そんな能力にどう対抗しろって言うんだよ!」

「チクショー、なんでったってこんな事に! そんな能力があるなら、俺達を見限る必要なんて何処にも無かったじゃないか!」


 彼等の会話を聞いていた騎士達は、もう膝を着いて嘆く事しか出来なかった。


「……」


 しかし多くが命を諦めていく心情の中、その場には一人、未だその慧眼(けいがん)に光を灯らせてクリッソンを見据えるフロンスが居た。

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