表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悪逆の翼】  作者: 渦目のらりく
第一章 この世界の全てが悪だ
1/533

第1話 プロローグ*スペシャルイラスト

挿絵(By みてみん)

【画:久賀フーナ様 Twitter:@hu_na_ 】


   第一章 この世界の全てが悪だ


 降りしきる冷たい雨の中で、見も知らぬ荒野を歩く異形が居る。頭から闇を被ったような漆黒の巨人が地を踏み込むと、大地は轟き、腕を振り上げれば、空が雷鳴の轟音を鳴らす。


 その男は世界の全てから嫌われていた。


 男は世界の全てを嫌っていた。


 彼は空を見上げて激しく咆哮した。その叫声(きょうせい)に呼応した怒涛(どとう)の疾風が吹き荒れると、辺りの木々は裂けて飛び散り、大地は音を立ててひび割れる。


 男の遠吠えは激しい怒りに満ち溢れていたが、そこには同時に、海よりも深く、闇夜の様に暗澹(あんたん)とした悲しみが同居している。


 やがて男は辺りを何千、何万の軍勢に取り囲まれる。

 まるで地がそのまま(うごめ)いている様なその軍勢は、一丸となって呪文を詠唱し始めた。


 その男ただ一人を封印する為に。


 その世界の全てが男の敵なのだ。


 男は強大すぎる光の六芒星に捕らわれた。そして無数の軍勢が命を代償に詠唱を始める。


 ――そして大地に、虚空の如き黒く巨大な風穴が出現する。


 呪文の詠唱を終えた兵は、次々に命を枯らしてその場に倒れていった。

 黒き男は言語とは云えぬ叫びを上げて、六芒星の発光と共に、別次元へと続く黒き穴に押し込められていく。


「堕ちろ悪魔、愛しき魔王よ。地上よりも下、もっともっと深淵へ」


 誰かがそう言葉を残した。それは彼にとって、肉親よりも聞き覚えのある声だった。

 ――そして毒の様な怨嗟が、悶え苦しむ黒き男の口より垂れ(こぼ)される。


「殺してやるぞ()()()()……例え“園”を追放されようと、俺はこの燃え盛る復讐が為に、地の果てまで貴様を……ッ!」


 男が抵抗すると、数千の雷撃が絶え間無く降り注いだ。みるみると数を減らしていく軍勢だったが、男はジリジリと押しやられ、やがてはその虚空に落ちていった。


 無数の兵を従える、将の影を見ながらに。


 ――延々と、延々と次元の狭間へと落ちていく。


 そして黒き男はみるみると姿を小さくしていきながら、薄れゆく意識の中で、深淵とも知れぬ“怒り”の汚泥に呑み込まれた。



「この世界の全てが悪だ」


 邪悪を放散し、白き()()()()へとその身を収束していきながら――


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆を★★★★★にして頂けると意欲が湧きます。 続々とスピンオフ、続編展開中。 シリーズ化していますのでチェック宜しくお願い致します。 ブクマ、評価、レビュー、感想等お気軽に
― 新着の感想 ―
[良い点] とても格好いい書き出しで迫力があります。これぐらいスケールが大きくて壮大であれば、次の話も楽しみです。 [一言] 少しずつ読み進めさせて頂きますね。宜しくお願い致します。
[良い点] 文章がカッコいい……良い意味で香ばしいですね [気になる点] あらすじが少し長すぎると思います 鴉紋の紹介を短くしてほしいです
[良い点] 素敵な冒頭です。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ