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美形悪役に生まれ変わった俺が、英雄になるまで  作者: 風嵐むげん
【第八章】 俺が、魔法騎士に……?
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四話 格好良さを追求した結果、騎士っぽさがどこかに行った


 意識してみれば、魔力というものは扱いやすいものだった。目には見えないものの、確実に自分の中にある。それをいくらか切り取り、イメージ通りの形に作り替える。

 そして、出来上がったものを右手で持ち上げる。我ながらかなりの出来ではないだろうか。


「なんだ、意外と簡単だな」

「あれ、ヴァリシュくんもう出来たの!?」

「ていうか、何ですかそれ? 筒?」


 リアーヌとフィアが、不思議そうに俺の手元を覗き込む。この世界では弓矢が主流で、騎士団ではもちろん狩猟でも弓矢を用いることがほとんどだ。錬金術でも爆弾を遠くに飛ばそうと試行錯誤している状態だ。

 よって、この世界にはまだ『銃』というものが存在しない。二人が知らないのも当然である。


「なになに? ヴァリシュ、何か出来たのか?」

「くくく……ちゃんと避けろよ、ラスター」

「え――」


 俺が作ったものが気になるのか、立ち上がったラスターに俺は魔力で作り上げたそれを構え、引き金を絞った。

 次の瞬間、小さな射出音と共に凄まじい速度で圧縮された魔力がラスターを襲った。


「うおぉ!? なな、なにそれ! なにそれぇええ!!」


 ラスターが剣を抜いて、魔力を弾くようにして防いだ。前世の話だが、男には必ず黒歴史だの中二病だのと呼ばれる時期が訪れる。俺もそうだった。これはその時の古傷……ではなく、戦利品だ。

 六インチの銃身に、蓮根型の弾倉。もちろん実銃など撃つどころか触ったこともないので、エアガンである。しかし競技でも使用されるモデルなので、作りも威力もエアガンの中ではかなりのものだ。かつての愛銃は本物と同じように弾倉に弾を込めなければならなかったが、この銃は俺の魔力を吸い取って撃ち出しているので六発撃っても再装填する必要が無い。

 なんなら引き金を絞る度に弾倉がくるっと回っているが、この仕様にも特に意味はない。そもそも回転式である必要が全く無いのだが、自動式よりは回転式の方が格好良いと思っているのでこれで良い。


「ムリムリムリ! 早い! 避けられねぇって!! ていうか何でさっきから顔ばっかり狙うんだ!? ぎゃああ!!」

「おー! 凄い凄い! ラスターくんが剣を抜くなんて、ヴァリシュくんすごーい!」

「仕組みが全然わかりませんが、格好良いですヴァリシュさん!」

「ふふふ、そうだろう? もっと言って良いぞ」


 一体どれだけ続けたかわからないが。とりあえずラスターが地面に膝をついて沈黙するまで続けてみた感想は、完璧である。狙いは定めやすいし、銃口から魔力を圧縮して放出しているので威力も速度も上がる。放出する魔力をいじればもっと凄いことが出来そうだ。

 それにこの銃なら片手で構えられるので、剣をしまう必要が無い。出来るなら利き手ではない左手で狙いを定められれば良いのだが。……そうだ、それこそアスファのように魔力にホーミング属性を付属すれば良いのか。

 

「魔法は凄い。ものすごく夢が広がるじゃないか……これは銃魔法ガンズマジックと呼ぼう。ありがとうラスター、お前のような立派な勇者が親友で嬉しいぞ」

「オレは親友が器用過ぎて怖いぜ」

「うーん、でも確かに。ヴァリシュさん、器用っていうレベルじゃないと思います。まさかこんなに早く、しかもいとも簡単に使いこなすとは。普通は悪魔と契約した人間は力に飲み込まれて暴走するか、自滅するかのどちらかなんですけど」

「そう言われると、そうねー。世界中を旅したけど、普通の人間はそういう人ばかりだったわ」


 フィアとリアーヌが俺を見て訝しむように唸った。そう言われても、使い方がわかってしまったのだから仕方がない。

 でも、二人の言い分も間違っていない。リアーヌは悪魔の血を引いているが、俺は完全にただの人間なのだ。フィアと契約した結果とはいえ、魔法とはこんな簡単に使えて良いものなのだろうか。

 ……ま、良いか。俺は銃を消して、もう一度実体化させてみる。イメージが固まったからか、これでいつでも銃魔法は使えるようになったと言って良いだろう。


「ちゃんと使いこなせるようになったのだから、文句はないだろう? さて、用も済んだし……そろそろ帰るか――」

「ちょーっと待った! これで使いこなしたって言って良いのか、ヴァリシュ? せっかくの魔法も、実戦で使えないと意味無いと思うけどなー?」


 踵を返した俺の肩をガシッと掴んで、ラスターがニンマリと笑った。的にされたことに関して相当思うことがあるのか、その手は離れそうにない。

 ていうか、リアーヌが言っただけで俺はラスターが来ることすら知らなかったのだが。


「どうせ今日は一日休みとったんだろ? このまま遊びに行こうぜ、ヴァリシュ!」

「お前の遊びはダンジョン巡りだから嫌だ!」

「良いじゃねぇか。旅の途中で寄った古い神殿なんだけどさー、どうも探索しきれていないように思えるんだよ。気になって仕方なくてさ。だから、ずる賢い親友の力が借りたいんだって思ってたんだよ」

「あ、もしかして宝玉があったスティリナ神殿のこと? 確かに、宝玉があったお部屋の奥にもまだ扉があったよね。叩いても燃やしてもびくともしなかったけど」


 ラスターの話に、リアーヌがぽんと手を叩いた。スティリナ神殿……確か、悪魔王城の結界を払う力を持つ宝玉があった場所だったか。

 二人はまだ奥があるように言うが、あの神殿は割とシンプルな構造で調べられそうな場所なんて大してなかった筈だが。


「とにかく、今度はこの四人で行ってみようぜ! 見る人間が変われば、新しい発見があるかもしれねぇし。ヴァリシュ頼む、マジでお願い! このままじゃ気になって寝られない!」

「……はあ、仕方ないな。日が暮れる前には帰るからな」


 全く引く気が無いラスターに、根負けしたのは俺の方だった。まあ、文句は言ったもののダンジョン探検は結構楽しかったし。銃魔法を実戦で使う良い機会だと考えよう。

 加えて今回は勇者だけではなく、聖女も居る。更に言えば既に攻略済のダンジョンなのだから、そこまで難易度も高くないだろう。


「あれ? 四人ってことは……さては、私も巻き込まれてますね!?」

「わーい、久しぶりの冒険だねー! しかもヴァリシュくんとフィアちゃんが一緒って、凄く新鮮で楽しみ!」

「よーし、決まりだな。じゃ、早速行こうぜ!」


 しっかり頭数に含まれたことに驚くフィアに、完全にピクニック気分なリアーヌ。大丈夫なのか、と心配しつつ。俺達はラスターが広げたオリンドの地図が示す神殿へと向かった。


 


 

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