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お釜大戦  作者: @FRON
第一章 恐怖!町内巡回バスUFO襲撃事件!!
9/330

∥001-09 お嬢様無双

#前回のあらすじ:お嬢様はたぶんS



[マル視点]



―――ここで、少し場面を戻そう。


バス襲撃の時間軸へ出発する前、謎空間にて。

戦いを切り抜ける為の『()()』を伝授されたぼくは、サマードレスの少女とふたり向き合っていた。


目にもまばゆい純白の地平を背景に、ヘレンは()()、と薄い胸の前で両手を合わせ、にっこりと微笑む。



「―――さて!これでお兄さんは晴れて【()()()】の仲間入り、いつでも()()に臨めるってワケですねー」


()()・・・つまり、『ぼくが死んだ要因を排除する』って事?」


「ですです」



にこやかに告げられた言葉とは対照的に、表情を曇らせるぼく。


―――いまさら言うまでも無いが、()()()()()()()()()()

それを覆す為には、死の直前に戻って、自らの手でその『()()』を排除しなくちゃならない。


本来ならば無理筋の話だが、それを可能にするお膳立てを目の前の少女はやってくれた。

更には、戦う為の力と助っ人まで手配してくれるのだという。


本当に有り難い話だ。

ここで奮い立たなきゃ、日本男児として名折れだ、と思う。


―――それはそれとして、怖いものは怖いのだった。

緊張した面持ちで()()()、と唾を飲むぼくを()()と見つめると、彼女はそっと囁いた。



「・・・とは言いましても。荒っぽいコトに不慣れな人にはこんな事、荷が重い!って、感じちゃうかも知れませんね?」


「そ、そんなことは無いですよ!?」


「ふっふっふ、私の目は誤魔化せませんよー?お兄さんのその、滝のような汗が証拠です!」


「ギクーッ!?」



()()()、と指先を突き付けられて、ぼくは思わずその場で数㎝飛び上がってしまった。

どうやら、内心ちょっとビビっていたのも、彼女には全部お見通しだったらしい。


頭の後ろをかいて恥じらうぼくに、ヘレンはあっけらかんとした口調で語り掛ける。



「大丈夫!お兄さんには先程お渡しした『()()』もありますし、何より・・・。今回に限っては、()()()()()()()()()()()なんですよねー」


「へ?それって一体・・・?」


「まあ、詳細はヒミツです。ぶっちゃけお兄さん『()()』は、座って待ってるだけでも何とかなると保障しますよー?」


「えぇ・・・?」


「まあまあまあ、ここは一つ騙されたと思って送り出されて下さいな」



持って回った言い回しに、ひとり首を捻るぼく。


対するヘレンはそれを誤魔化すように、ぼくの背後へ回るとぐいぐいと背中を押し始めた。

アゴを強調するジェスチャーと共に拳を突き上げる少女に倣って、首を傾げつつも右手を振り上げる。



「迷わず行けよ・・・行けばわかるさ!」


「イ○キかっ!」



・・・そんなこんなで、バスの中へと送り出されたのだが。

ぼくはすぐに、()()()()()()()()を知ることになるのだった―――




  ・  ◆  □  ◇  ・




そして、現在。

ぼくは今、ヘレンちゃんの言葉の意味をはっきりと理解していた。



「はあああっ!【Crimson(クリムゾン) Whip】(ウィップ)―――!」


【現(うつ)し筆・墨虎招来】(ぼっこしょうらい)!!」



白昼の下飛び交う銀盤の群れ、そしてそれを追い詰め、次々と撃破する少女達の姿。

窓ガラス一枚を隔て、バスの車外では目を疑うような光景が繰り広げられていた。


エリザベスが手にする【髭鞭(しべん)サイクラノーシュ】が赤熱すると、バスの外を飛び交う円盤が豆腐のように切り刻まれてゆく。

二度、三度と黒褐色の軌跡が閃く度に、無数にいたUFO達は目に見える程にその数を減らしていた。


編隊をかき乱され、散り散りになってゆくUFO達。

その孤立した個体を狙うようにして、墨黒の虎が空を駆け、次々に牙と爪を以て引き裂く。


倒された円盤は煙のように空中に溶け、菫色の光の粒子となって消滅した。

そうして瞬く間に、バスの周囲は夜空のごとく、煌めく菫色の燐光に包まれていた。



『Tuli!!』


「【ネフェルティティ】・・・みんなを守って」


「(にゃーん)」



やられっぱなしではないとばかりに、円盤達からの反撃も行われている。


楕円状のボディから放たれる菫色のビームは、槍のように鋭く伸びて少女達の身体に突き刺さる。

―――かに見えたが、両者が接触する前に立ちはだかる物があった。


表面に猫のレリーフが入った、宙に浮かぶ石板の盾だ。


少女達に殺到した攻撃はことごとくが石盾によって防がれ、逆に彼女達の攻撃は着実にUFO達の数を減らしてゆく。

【猫女神の盾】(ペルシウム)と名付けられた浮遊盾によって、戦況は早くも一方的な様相を見せていた。


現在、彼女達が居るのはバスの周囲―――()()()()()()()()()()()()()()だ。


先程から、可愛らしい鳴き声を上げながら影絵の猫が()()()()と戦場を歩き回っている。

短い四つ足が踏みしめるのは、何もない空中だ。


重力を無視するかのように空中を進む、厚みの無い小猫が通過した後には、ひとりでにくすんだ灰色の足場が生成されていた。

【石灰岩の回廊】(セラピウム)と名付けられたそれは、マルヤムが喚び出した壁画猫――【ネフェルティティ】の力の一つである。


灰褐色の舗装道を足場として、彼女達は宙を自在に駆け回り、UFO達を相手取っていた。



(ヤバイ・・・この娘達マジ強い)



近距離-中距離を中心に、隙なく広範囲をカバーするエリザベス。

自立型の墨絵で遊撃・追撃を自在にこなす清水嬢。


派手に立ち回るこの2名に目が行きがちだが、彼女達のコンビネーションの柱はその後ろに控えるマルヤムだ。


【石灰岩の回廊】による陣地構築、【猫女神の盾】による鉄壁の防御に加え、絶えず戦場全体に気を配り、他の2名とアイコンタクトを交わしている。

彼女が司令塔となり、エリザベス嬢が前線へと斬りこみ、清水嬢がそれをカバーする。


どうやらこの形が、彼女達3名の戦法のようだった。



「ふぅ・・・こんなものかしら。呆気ないわね」


「リズ?あまり油断が過ぎると―――」


「大丈夫よ」



艶やかな金髪をかき上げ、髭鞭を腰に当て息をつくエリザベス。


そのブルーの瞳に映るUFO達は、既に残すところあと僅かとなっていた。

戦闘開始から数分、正しくあっという間の出来事である。


そんな状況もあっての発言であるが、気の緩みを疑い、傍らに佇む和装の少女(しょうこ)から友人をたしなめる一言が飛ぶ。

すっぱりとそれを否定した彼女であるが、その内には元より油断はおろか、ひとかけらの緩みも存在していなかった。


エリザベスにとって、今回の任務は絶対に失敗できないのである。


内心ではこのまま何事もなく終わる事を願いつつ、金の令嬢はそっと後方へと視線を向ける。

その先、【石灰岩の回廊】の隙間から覗く後部座席には、一人の少女が微動だにせぬまま解放の時を待っていた。


誰にも聞かれぬよう、少女は小声で一人ごちる。



(そう、今回だけは、失敗する訳にはいかないのよ―――)


※2023/09/11 文章改定

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