表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お釜大戦  作者: @FRON
第四章 怪奇!月夜の廃屋にリトルグレイの姿を見た!?
84/340

∥004-17 大脱出!

#前回のあらすじ:お姉さんは心配性?



夜空に浮かぶ白銀の月の下、鬱蒼と茂る森の只中にぽつんと佇む一棟の廃墟。

かつて商業施設として建造され、持ち主の手を離れた後は『人肉屋敷』と呼ばれるようになった場所。


普段は人ひとり寄り付かないこの地に今、無数の人影がそこかしこに蠢いていた。

否―――それは人影などではない。


ヒトと似通った姿形をしているが、有機物ですらなく―――

それは【彼方】と呼ばれる高次元世界から投影された、霧状の粒子が疑似的な肉体として振舞う怪異達―――【彼方より(シング フロム )のもの】(ザ ビヨンド)


都市伝説に語られる、UFOや宇宙人といった姿を取るものどもが何処からともなく湧き出し、廃墟の中へと続々となだれ込んで行く。


その多くは痩せこけた子供のような歪な姿を持つ、宇宙人(グレイ)型シングと呼ばれる個体が占めている。

よたよたとおぼつかない足取りで荒れ果てた廊下を進む宇宙人(グレイ)型の群れに交じり、頭上を飛び交うのは広場の戦いでは見かけなかった、1mにも満たない小型UFOの姿だ。


彼らが目指すのは上階。

縁がすり減り切片が散らばる階段を昇り、叶少年が囚われていた部屋へと【彼方より(シング フロム )のもの】(ザ ビヨンド)どもの混成部隊が踏み込もうとしたその時―――


突如として沸き上がった白煙に視界が閉ざされ、先陣を切った宇宙人(グレイ)型シング達の黒くつややかな瞳が大きく見開かれる。

もうもうと立ち昇る大量の煙に襲撃者たちが立ち往生していると、白煙のヴェールを突き破って何かが飛び出してきた。


それは、3mはあろうかというサイズの巨大な水塊であった。


特大サイズのシャボン玉は勢いのまま数体の宇宙人(グレイ)型をなぎ倒すと、ガラスが割れサッシのみが残された窓へと飛び出す。

草むらの上に転がり落ち、鈍い地響きを立てる球体。


そのままごろごろと転がり森の中へ消えてゆく光景を、呆けたように眺める宇宙人(グレイ)型達であったが、すぐに我に返ったようにばたばたと球体が去った方角へと走り出す。

虫の音一つ聞こえないひっそりとした夜の森は、やにわに追跡者達が立てる足音により一時のにぎわいを見せ始めるのであった―――




 ・  ◆  □  ◇  ・




「・・・行ったかな?」


「みたい、です・・・」



森の奥へ【彼方より(シング フロム )のもの】(ザ ビヨンド)どもが消えた後、たっぷり3分は経過した廃墟のふもとにて。

窓から水塊が着地した地点よりすぐ、広葉樹の根本付近から何者かの囁きが微かに響く。


声の主の姿は見えない。

ややあって声がした付近の空間がわずかに揺らぐと、人間大の何かがゆっくりと立ち上がった。



「それにしても・・・クラマスプレーだっけ?本当に自分の体まで見えなくなっちゃうんだ」


「は、はい・・・雨なんかには弱いんですけれど、今の環境ならしばらく持つと思います。あ・・・でも、よく見れば違和感ぐらいはあるので・・・派手に動くと気付かれちゃうかも?」



―――声の主は、特殊なアイテムで姿を隠したぼくこと丸海人(マルカイト)と叶くんの二人だった。


廃墟の2階で叶くんを救出した後、ナップザックに満載された道具の説明を受けて思いついたのが次のような作戦だった。


・煙幕で敵の目を晦ます

・バブルシールドを張ったメルに入って廃墟から出る

・メルに敵を引き付けているうちに姿を消して逃げる


―――煙幕を張るのに使ったのは発煙筒、ザックに入っていたアイテムの一つだ。

【彼方より(シング フロム )のもの】(ザ ビヨンド)の視覚は通常の有機生命体とは異なるので、普通の煙幕だと効果がないのだとか。


バブルシールド状態のメルに入り込めることはさっき証明済みなので、二人で乗り込んで敵の群れを突っ切るアイデアはすぐに思いついた。

廃墟から出たら一旦解除した後、メルだけを森の中へ突っ込ませデコイにしたというわけだ。


当然、そのままではすぐに見つかってしまうから―――クラマスプレーの出番だ。

『天狗の隠れ蓑』の伝承を基にしたというこのアイテム、効果が続く間は外敵から姿を見えなくしてしまうことが出来るのだとか。



「何はともあれ、後は他のみんなと合流するだけかな。勿論、奴らに見つからないようこっそり静かに―――ね?」


「は、はい・・・!」



白い頬を僅かに紅潮させ、両手で握りこぶしを作って頷く(見えないけど)叶くん。

ぼくは一つうなずくと、できる限り足音を立てないよう、ひっそりと夜の森を歩き始めるのであった―――



今週はここまで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ