∥003-15 謎の猫侍・寅吉参上!
#前回のあらすじ:ようやく全員勢揃い
「会取明だ」
「謎の猫侍、寅吉でござる」
「今自分で『謎の』って言った・・・」
「―――で、お前は誰なんだ?」
やはり変人の巣窟―――!
もはや確定した評価に戦慄するぼくへ、顎に細い指を当て訝しげに首を傾げ、たった今自己紹介を済ませたジャージ姿の女性から疑問の声が上がる。
「あ、ご紹介が遅れましたわたくし丸!○×の丸に海の人と書いてマルカイトとお呼び下さい!」
「どういうノリだそれは。・・・そうか、今日から来るっていう新入りがお前か。―――ご愁傷様」
「にょほ?」
「ちょっと、そこで私を見るの止めてくれる?」
「ううっ・・・」
「自覚があるのとないのととぼけてるので1:1:1か、先が思いやられるな」
分厚いグラス越しにぎろりと鋭く視線が送られると、当人らしき3名はめいめいに反応を返してみせる。
最後に登場したメガネの御嬢さんだが、どうやら中々にキツい人物であるらしい。
彼女はひとつため息をつくと、くるりと向き直ってぼくを正面からじっと見つめる。
特大サイズの銀縁眼鏡のせいか、その表情はきりりと結ばれた口元を除いて伺い知れない。
「―――さて、ようこそ【揺籃寮】へ。改めてだがわたしは会取明、ここの寮長―――『代理』、だ」
「代理・・・?まあいいや、よろしくお願いします!・・・ところでつかぬことをお伺いしますが、ひょっとして叶くんの―――?」
「姉だ。そこの不詳の弟が早速迷惑を掛けたようで申し訳ない」
「あう・・・」
流れるような動作でふかぶかと頭が下げられる。
つられて艶やかな亜麻色の髪が幾筋か肩にかかり、ランタンの光を受けて橙色交じりの艶を放った。
綺麗な髪質だな、と胡乱な感想を抱きつつその頭頂部を眺める。
基本辛辣なようでいて、身内の謝罪で見せた一つ一つの所作はどこか洗練されているように見える。
―――どういう女性なんだろうか。
改めて寮の先輩に対し湧き上がった疑問に、その表情が気になり綺麗な形のつむじから視線を下す。
その先には、重たげに垂れさがる釣鐘型の二つの頂きがあった。
でかい。
「いっ―――いえいえ、別に迷惑じゃありませんでしたから!」
「そうか?―――それなら良かった」
慌てて思わず視線を逸らすぼくに彼女は顔を上げ少し思案する様子を見せると、にっこりと微笑む。
「これで準備を進められる」
「・・・何の?」
「もちろん―――歓迎会だ」
彼女の顔には三日月のような笑顔が浮かんでいた。
何の事だろうと思案するぼくの背後では、ひっ、と息を飲む声が同時に上がるのであった―――
今週はここまで。
次回からは番外エピソードの後に次の章となる予定です。




