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お釜大戦  作者: @FRON
第三章 ようこそ揺籃寮へ!
60/340

∥003-10 tottemoイケメン!

#前回のあらすじ:営業開始!



[アルトリア視点]



「・・・神様(God)?」


「ですです」



果ての見えない純白の空間で、私はぱちくりと目を瞬かせ眼前の少女を眺めていた。


黒い髪に浅黒い肌、低い鼻。

白人では無さそうだがかといって黒人でも無い、あまり見た事のない人種の女の子だ。


―――ひょっとすると、これが話に聞く中国人なのかも。

そんなどこかズレたことを考えていたが、唐突に自分の容姿を思い出す。


正体を隠す為全身をすっぽりと覆っていた愛用のローブも今は無い。

私が慌てて後ろを向くと、背後では少女がおや、と訝しげに首を傾げる気配があった。



「どうかされたんですか?」


「あの、ごめんなさい・・・私の姿、怖いでしょ?」


「姿・・・?」



そのまままじまじと後姿を観察される。

何時だったか、ローブの裾から覗いた細かい毛に包まれた腕に、訝しげな視線が周囲から突き刺さった出来事を思い起こし、私は無意識に身体を縮こまらせる。


―――彼女にもあんな眼で見られるのではないか。

そんな不安にびくびくと震える私にふむ、と口元に指を当てると、宙を漂う褐色の少女は屈託なく笑って見せた。



「―――とってもイケメン(シャバーニ)ですね!」


「い、け、め、ん?知らない言葉だわ・・・」


「主に男性の容姿に対する賛辞を表す単語ですねー、『お!あそこの兄ちゃんイケメンじゃね?』てな感じで使われます」


「女性に使う言葉じゃ無いわよね、それ」



多分に呆れを含んだ私の言葉に、少女は「そですねー」とへにゃりと笑う。


何と言うか、緊張感の無い娘だった。

なんだか肩の力が抜けてしまった私は、彼女に対し過度の警戒を抱くのを止めることに決めた。



「まあいいわ。それで―――神様になる、だったかしら。それと、ここは・・・一体何処なのかしら?」


「お、いよいよ本題ですね!神様というのは―――うーんと、クリスチャン向けに言うといわゆるゴッドではなく、多神教における神々をイメージして頂くのがよいかと」


「つまり、全にして一なる存在ではなく、土着の精霊信仰(アミニズム)における信仰の対象のようなもの・・・ということ?」


「ですです。それと二番目の質問にも関わりますが、アルトリアさんは死後、魂が天に召される前にこの空間へ隔離しました。今は私の居る西暦2011年からここへ干渉を掛けてる状態ですねー」


「2011年・・・」



―――ああ、やっぱり私は死んだんだ。

遠い未来を意味するその一言に、ようやく私は自分がどうなったのかを実感した。


無言のまま頷き続きを促すと、宙の少女は指を一本立てるとこう続けた。



「これから私は貴女に『神様になる』取引の内容について詳しく説明します。アルトリアさんはそれを承諾しても良いですし、断ってもらっても構いません」


「・・・そこは是非に、と強くお勧めする所じゃないのかしら?」


「そうしたいのは山々ですが、貴女にとってのリスクもある訳ですしねー。―――ですがその場合この空間は解除しますので、再びここへ来ることも、『アルトリア=ジャーミン』の魂が神の御許へ旅立った後、現実世界へ影響を及ぼすこともありません」


「完全なる死―――という事ね」


「はい。ですのでよく考えて、ご自身で決断してください」



静かにそう告げると、少女は言葉を切って私の顔をじっと見つめる。

私はしばらく目を閉じ、これまで過ごした19年、とりわけ最後の一年に自分の身に降りかかった災難に思いをはせた。


思えば、ここ最近自らの意思で行動を起こすという機会がめっきりと減っていた気がする。

この身に降りかかる災難―――肉体の変貌、鏡に映る男、追手、そのどれもが外から自分を追いつめる要因ばかりだ。


―――これで終わりだなんて、納得が行かない。


再び目を開くと、宙に浮いたまま興味津々といった様子でこちらを伺う少女の姿がそこにあった。

少なくとも、説明と判断の猶予を与える気があるだけ、あの男(フィリップ)よりもマシな存在と言えるだろう。


私はひとり頷くと、少女に話の続きを促すのであった―――



イケメンゴリラ=シャバーニの賞味期限はそろそろ微妙な気もする今日この頃です。

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