∥002-10 神様的多様性
#前回のあらすじ:神様になりたけりゃ死ぬか霞喰うかの2択
「話を戻しますと、お二人を助けたのは単純に、手伝ってほしい事があったからなんです」
「手伝ってほしい事・・・?」
「ええ。先程お帰りになった皆さんにも関係のあるコトです」
「それって―――」
ぼくらが思わず顔を見合わせると、ヘレンはにこやかに指を一本立ててから説明を続ける。
「ええ、彼等もまたお二人のように、『通過儀礼』を乗り越えた【神候補】の皆さんです。・・・まあ厳密に言うとちょっと違う部分もあるんですが、あえてここでは割愛します。彼等―――エリザベスさん率いる『Wild tails』、犬養さん率いる『立犬政友会』はともに、『クラン』として以前から私を手伝ってもらってます」
「『クラン』―――?」
「【神候補】の皆さんで作る互助会的なモノですねー、チームとかPTとかギルドとか、そういう的なモノとお考えくださいな」
耳慣れない単語に、思わず疑問が口をついて出る。
どうやらバスの中で別れた彼等は、それぞれ別の集団に属する【神候補】としての先輩であったようだ。
確かに言われてみれば、堂々とした立ち振る舞いや凄まじい戦闘力など、腑に落ちる点が多々思い当たる。
「あたし達も『クラン』作った方がいいのかなー?」
「それはまあ、おいおい考えていきましょうか。何はともあれお願いしたいのは、彼らと同じように世界を飛び回って、【彼方よりのもの】の襲撃を阻止・撃退するコトなんですよ」
「えっと・・・それ、ぼくでも出来る事なんですか・・・?」
「できたよ?」
「あーちゃんは黙ってて、どうぞ」
きょとんとした表情で小首を傾げる後輩を黙らせると、ぼくは再び空中へと視線を戻す。
サマードレス姿の少女はくすくすと肩を震わせると、くるりと逆さ向きになったままぼくに微笑みかけた。
「勿論、ソロでやらなきゃいけない理由なんて無いですよ?その為の『クラン』ですし、むしろ複数人で役割分担して貰うよう私からも推奨してます。お兄さんがやったように『守る』ことに専念してもらうのもアリですねー」
「なるほど・・・」
彼女の言葉に、先程の戦いにおける一幕が脳裏に浮かびあがる。
UFOの突進を【バブルシールド】で止めた、あの時のことを指しているのだろう。
ぼくは傍らに碧く輝く【神使】を呼び出すと、一時的に不壊の泡へと変化させ、再び元の水塊へ戻して見せた。
「ほえー・・・それが先輩の【神使】?」
「うん、【メルクリウス】って言うんだ、仲良くしてくれると嬉しいな」
「なんかカワイイかも・・・よろしくね、メルちゃん!」
「・・・・・・」
空中に漂う水塊をしげしげと眺めた後、にっこりと微笑んだ少女はメルに向けて小さく手を振って見せた。
それに応じたのか、僅かに青みを増した水塊はこぽり、と水泡を浮かべると、そのまま静かに宙を浮かんでいる。
「まあ、戦いに限らずモノ作りとか治療とか、何らかの形で周りに貢献してくれればヘレンちゃんとしてもOKですよ?実際そういう『クラン』も存在しますしねー」
「「ほほ~・・・」」
どうやら、【神候補】と一口に言っても色々なスタイルが存在するらしい。
ぼくらはひとしきり感心すると、再びヘレンの言葉に耳を傾けるのであった―――
今回の投下はここまで。




