∥002-06 吸引力の変わらないただ一つの呪文
#前回のあらすじ:ぼくがモテないのは5分前に創造主がそう造りたもうたからだよ!(半ギレ)
くるりと一回転、褐色肌の少女はどこからともなく取り出した伊達眼鏡を掛けると、お澄まし顔で再び口を開く。
「まあともかくですね、私ヘレンちゃん自ら頑張って色んな機能を搭載したので、お兄さんにも役立てて欲しい訳です!例えばほら、こんな事も―――」
「じ、【魂晶】が・・・!?」
ヘレンが手をかざすと、ぼくの前に漂う結晶群はその輝きを増したかと思えば、見る見るうちに【戴冠珠】へと吸い込まれてゆく。
驚愕に口をぱくぱくさせているうちに、あっと言う間に結晶群はきれいさっぱり姿を消し、残るは物言わず漂う石の珠のみとなった。
「ご自分でやりたい時は『収納!』とか『ダイ○ン!』とか、それっぽい言葉を叫ぶといい感じですねー。ちゃんとイメージさえできてればそれも不要ですよ?」
「な、なるほど・・・?」
「あ!あたしそれやってみたい!!ダイ○ン!ダイ○ーーン!!」
ぼくが半信半疑のていで首をひねる一方、隣のあーちゃんは石珠のパワーに興味を示したのか、目を輝かせながら若干危ないワードを連呼しつつぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
動きに合わせ後ろで一つに纏められた長い黒髪が尻尾のごとく揺れる。
スカートも揺れる。
だが胸は揺れない。
登下校中の幼児を見守る爺婆の如き心でそんな様子を眺めていると、それに呼応したのか彼女の前に浮かぶ結晶群が輝き、珠へと吸い寄せられ始めた。
それは良いのだが―――
「・・・多くね?」
先程と比較し10倍以上(当社比)はありそうな量の【魂晶】が、いっそう輝きを増し音も無く吸い込まれる様を、なかば愕然としつつ見送るぼくであった―――
 




