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お釜大戦  作者: @FRON
第八章 ゼロの決死圏!!
341/342

∥008-23 もう一つの戦い


#前回のあらすじ:人類の明日を守るお仕事!



[(かなえ)視点]



一方、場面は海の中へと移り変わる。


マル達地上班に別れを告げ、謎のシングを探しに海中深くに向かった()()()

彼等は正体不明の敵を相手に、未だその戦いを続けていた。



「お告げがありました―――()()()!!」


『BYIIIIIII!!!』


()()()()()()()!」


「ヨーソロ!!」



棚氷の下、縦横無尽に走るクレバスの只中にて。

暗い海の奥深くより、音もなく敵の魔の手が忍び寄る。


独逸(ドイツ)勢と日本勢を乗せたUボートの【神格兵装】(アーティファクト)ヴィリー(Willy)号はシングの接近を察知し、即座に回避行動を取る。

弧を描くように鋭く右へカーブ、その軌跡に被さるように上方より突如、姿を現した巨大な影が通過する。


間一髪、回避が間に合ったところで艦首を下げ、ヴィリー号は怪物の胴体中央へと照準を合わせる。

お返しとばかりに、魚雷発射管より2発の魚雷がシング目掛けて放たれた。


スクリューの回転音を雷鳴のように響かせ、黒き鉄塊が怪物の背目掛けてひた走る。

狙いよし、タイミングよし―――間違いなく、必殺の間合い。



()()()()!?」



今度こそは、という密かな期待を込めて、ダークブロンドの少女艦長は観測手を務める同胞へと視線を向ける。

しかし、ソナーに注視していたヴォルフラム(Wolfram)は力なく首を横に振るのだった。



「駄目ッス・・・。ソナーに感なし、魚雷も不発ッス。敵さん、()()()()()姿を晦ましたみたいッス」


「くそ!・・・これで()()()だ!?毎度毎度、追い詰めても霞のように手ごたえがない奴め・・・!」


「て、()()()()でしょうか・・・?」


「みたいだね~」



()()()()()()()


皆の間から溜息が漏れる中、クレメンスの言葉にツェツィーリエ(Zäzilie)は歯噛みする。

かれこれ数度、同じような状況から敵に逃げられる展開が続いているのだ。


いいかげんクルー達の間にも、鬱屈とした空気が漂い始めていた。



「今のところ、私の【託宣】(Orakel)で不意打ちは回避できてますが・・・。このままでは()()()かと」


「むぅ・・・」



クレメンス(Klemens)の能力【託宣】は、()()()()()()()()()()ことが出来る。

攻防共に活躍する優れた能力であるが、今のところその活躍は敵の襲撃を察知する場面のみであった。


海の底深くに潜み、不気味な声と共に現れる正体不明のシング。

その姿は海中ゆえ目撃できていないが、ヴィリー号を鷲掴みにした事から相当のサイズと予想されている。


それだけの巨体にも関わらず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。


こちらの攻撃はいずれも手ごたえが無く、敵の()()はこちらへ届く。

【彼方より(シング フロム )のもの】(ザ ビヨンド)の上位個体は()()()()()()()()を持つ事があるが、今回もその例に漏れず、厄介な相手らしかった。



「何れにせよ、ここからは再び敵と()()()()()だ。この際、長期戦も覚悟せねばなるまい・・・」


「そ、それじゃ、行きます・・・『伏龍(フクリュウ)盤』(バン)!敵の居場所を教えて・・・!」



白髪の少年の前に淡く輝く、半透明の盤面。


その上に小さな手をかざすと、映し出された像が()()()に鋭い輝きを放つ。

やがて、ヴィリー号を示す光点の遥か前に、新たに()()()()が灯った。



「・・・()()()()!このまま少し深度を下げつつ、まっすぐ進めば―――!?」


「どうした?」


「わ、わかりません・・・。でも、今、何かが―――?」


()()()



【伏龍の盤】の力で、敵をあぶり出した叶。


その報せを告げたところで、少年は何かに気づいたように視線を上げる。

急に途切れた言葉に、クルー達が訝しむ中、隣のシートに座る黒髪の少女が()()()、と呟きを漏らした。



「来るって・・・一体何だよ?まさか新手でも現れるんじゃ―――」


「見てくださいッス!赤い光点が急に、()()()()・・・!」



切羽詰まった様子のヴォルフラム(Wolfram)の声に、周囲の視線が盤面へと集う。


見れば、それまでヴィリー号の進行方向で沈黙していた赤い光点が、急に異なる動きを見せていた。

次第に速度を上げ、今や怪物の位置は叶達を乗せた潜水艦の、目と鼻の先にまで迫っている。



()()()()!?」



誰もが息をのむ中、意を決した少年は再び盤面の上に掌をかざす。

掌中に虹色の光があふれ、薄暗い艦内を一時、まばゆく照らし出した。



「間に合ってください!【静寂(セイジャク)帳】(トバリ)―――!!」



ヴィリー号の前方に、純白の幕が下りる。


薄布のような頼りない()()は見かけとは対蹠的に、並大抵の攻撃では寄せ付けぬ程の強度を秘めていた。

それを以てしても、敵はヴィリー号に匹敵するほどの巨体。


果たして、その突進を受け止める事が出来るのか・・・?

乗員たちの間に束の間、緊張が走る。


やがて―――



「は、()()()・・・?」



唖然としたような声で、()()()と呟きが響いた。


待ち構えていた衝撃は訪れず、代わりに艦内は()()、と静まり返っていた。

思い思いに防御態勢を取っていたクルー達も、戸惑うように辺りを見回している。



「・・・敵、()()()()()()()()()!そのまま離れて行くみたいっす・・・()()()?」


「・・・さあ?」



ヴォルフラムの報告に、誰ともなしに零した相槌が応じる。

何故かはわからないが、敵は()()()()()()()()()()()()()()らしい。


一時、艦内を弛緩した空気が満たす。

しかし、それを変えたのは(あずさ)の呟いた一言だった。



「あの方角・・・()()()()()()()()()()だ」


「!?」


「て、敵の反応は・・・!?」


「赤い光点―――()()()()()()()()()()()()()()!」



その報告に、クルー達は一斉に息をのむ。


正体不明のシングが陸上でも活動可能かは不明だが、このまま放置しても良い結果にはならないだろう。

急いで、後を追う必要がある。


意を決すると、ツェツィーリエは鋭く号令を発した。



「・・・()()()()!全速力で奴を追うぞ!」


「「「了解(Jawohl)!!」」」



威勢のいい声と共に、ヴィリー号はきびすを返す。

求めるは正体不明のシング、今度はこちらがその()()()()()()()()だ。


水面下で繰り広げられるもう一つの戦いは、新たな局面を迎えようとしていた―――



今週はここまで。

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