∥002-05 王権神授なんとか
#前回のあらすじ:初戦クリアボーナスはリア・ファル(小)
「はい先生!質問いいですか!」
「どうぞどうぞー?」
びしっと右手を上げ直立不動の姿勢を取ったぼくに、ヘレンはへにゃりと微笑んで見せる。
「えーっと。とりあえず素朴な疑問だけど、【神力】に反応する石がなんで王様と関係があるの?」
「それはもちろん、古代の王様は大体、神と関係がある、もしくは神そのものだったからですねー」
「いやいやそんなまさか」
「じゃあ逆に考えてみて下さい。お兄さんは今こうして不可思議な現象を目の当たりにしていて、あまつさえ奇怪なバケモノまで実在することを知りました―――そうですよね?」
「そ、それは・・・まあ・・・」
あまりに荒唐無稽な話に思わず突っ込むが、ヘレンが続いて発した問いかけにぼくは曖昧に呻くことしか出来なかった。
それは間違いなく、たった今自分の目で目撃した出来事だったからだ。
―――この世に神秘は、実在する。
「この世に既に存在している出来事は、必ずそうなるに至った経緯と原因があります。五分前仮説じゃあるまいし、『今』バケモノや神様が居るのなら『昔』だってそうだったってコトですよ、お兄さん」
ぼくの目の前でふわりと静止すると、少女はいたずらっぽくウインクして見せた。
『我々の居る世界は、今から5分前に現在の姿で創造されたものである』
彼女が口にしたのは、そんな暴論とも呼べる前提に基づく仮説のことだ。
世界の歴史も、人々の記憶も、総ては創造された時点でそのように存在していたのだと仮定すれば、ヘレンが示唆したように現在の状況から過去の出来事を証明することは不可能になってしまう。
じゃあ一体何を信じれば良いんだと叫びたくなるような話だが、これはあくまで哲学的な思考実験の話である。
つまり、実際にそんな事実は存在しない。
あくまで、過去があるからこそ現在があるのだ。
これを一言で表す言葉を『因果律』と呼ぶ。
そこでふと疑問が湧き上がる。
(待てよ?ぼくは確かに一度死んで、【神候補】になってその過去を修正した。つまり神様って因果律から半ば外れた存在なんじゃ―――)
どうやらヘレンには改めて、色々と問いたださねばならない気がする。
だが彼女の説明が途中であることを思い出し、ぼくは軽く頭を振って疑問を追い出し、再び話に集中するのであった―――




