∥002-04 アイテムファンファーレ
#前回のあらすじ:みんな帰るってさ
「・・・なんだか、とんでもない事になっちゃったね」
「そだねえ」
困ったようにお互い見つめ合うと、人知れずくすくすと小さな笑い声が漏れ出る。
全く、本当にとんでもない事に巻き込まれたものだ。
人を襲うUFOの群れに、空を漂う褐色少女、【神候補】に、先程までの激闘。
こんな経験をした高校2年生は世界広しといえど、そう滅多に居るものでは無いであろう。
「それで―――ひとまず危機は去ったみたいだけど、これからぼく達どうなるのかな?」
「それはですねぇ・・・」
通路の中央部分へと目を向ける。
そこには先程と同じ姿勢で、小首を傾げ微笑みながら漂うヘレンの姿があった。
人差し指を立てると、少女はそれをリズミカルに振りながら宙へ浮き上がり、ぼくたちの周りを滑るように周り始める。
「先ずは、お祝いからですね。―――おめでとうございます!お二人は無事、死神に絡め捕られた運命を自ら解き放ち、神様としての一歩を踏み出しました。それを祝してわたくしヘレンちゃんからプレゼントをお送りしちゃいます・・・はいっ!」
「ほえ・・・石の、ビー玉?」
「これ、他の皆が持っていたのと同じ―――?」
やや芝居がかった仕草で右手を振り下ろすと、ぼくらの目の前には直径3cm程の石の珠が光沢を放ち浮かんでいた。
記憶が定かであれば、犬養氏が【魂晶】を収納していたのと同じものだ。
「これは【戴冠珠】と言いましてですね、ざっくり説明すると【神候補】の皆様をサポートするお助けアイテムのよーなモノです」
「リア・ファル・・・って、確かゲームのアイテムなんかで聞いた覚えがあるような・・・?」
「それは多分四秘宝の『戴冠石』ですねー。正当なる王に叫びを上げ応えるとかなんとか、そーゆー謂れのあるお宝です。【戴冠珠】はまあ根っこは同じと言いますか、【神力】に呼応する性質を持った石から作られてるので、そのお陰で色んなコトが出来る訳です」
「ほええー・・・(よく解っていない)」
ヘレンの言によれば、眼前の石ころはエリンの秘宝と同種のオーパーツであるらしい。
本当であれば凄い代物なのだろうが、あいにくと平凡な人生を送ってきたぼくには、事の真偽も石の持つ価値もいまいちピンと来ないのであった。
当惑するまま助けを求めるように隣の少女を盗み見るが、こちらはこちらで長話に頭がついて行けないのか、アタマの天辺から煙を上げつつうんうんと頷きを繰り返していた。
だめだこりゃ。
ぼくはヘレンの言葉に注意を戻す傍ら、後輩のおつむの残念さ加減に密かに頭を抱えるのであった―――




