表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お釜大戦  作者: @FRON
第八章 ゼロの決死圏!!
324/342

∥008-06 急襲

#前回のあらすじ:互いに自己紹介は終わり



『グエッ!(潜航停止!)』


『グエグエッ!(深度46m、クレバスに沿って水平航行開始)』


「ソナーに敵影なし。魚も影も形も無し。不気味なくらいに静かっす」


「・・・よし」



先程から続いていた縦方向のGが収まり、ようやく艦全体が水平へと戻る。

人心地ついたぼくは固い座席の上から、狭い艦内を()()()と見渡した。


厚い耐圧殻の内部は薄暗く、金属製の壁面には無数のパイプ類が並んでいる。

湿り気を帯びた空気も相まって、まるで樹海の底にでも居るかのようだ。


だがしかし、今ぼくらが居るのはツェツィーリエ(Zäzilie)嬢が操る潜水艦の中。

しかも、極地の海の中を航行中であった。


―――船員との顔合わせも終わり、Uボートの【神格兵装】(アーティファクト)、『ヴィリー号(Willy)』はいよいよ出航の時間となった。


地上に広がる氷原には敵の姿が無く、救助すべく人影も見当たらない。

()()()()()()、とばかりに潜った後の場面が、先程からの一連のやりとりであった。


クルー達からの報告を受け、女性艦長はゆっくりと頷きを返す。



「ひとまずはこのまま、真っすぐ進むぞ。―――()()は、この先で合ってるんだな?」


「・・・た、多分!」



急に質問を振られ、ぼくは慌てて手元の『()()()』に視線を落とす。


八つの辺に方角が掘られた、木製の板。

その中心には()()()()と回転する磁針が取りつけられている。


『見鬼盤』と呼ばれる、【彼方より(シング フロム )のもの】(ザ ビヨンド)の居場所を示すアイテムだ。


磁針が反応するのは【彼方よりのもの】を始めとする、異界の勢力達。

周囲の木板を通して【神力】(プラーナ)を流せば、()()()()()()()()()()()―――という寸法だ。


しばし、回転を続けていた針はやがて、艦の進行方向のあたりで()()()と静止する。

・・・普段使う時は、()()()()()()()()()()()()()()()()()ような気がするのだが。


小首を傾げながらぼくが発した返答に、少女艦長は一瞬、怪訝そうな表情を浮かべる。

が、彼女は帽子を目深に被り直すと、クルー達に前進の号令を発するのだった。



「ならば良し。・・・()()()()!氷壁にぶつけないよう慎重に進め、いいな!」


『グェー!!』



艦長の号令に、甲高い鳴き声で答える小バウアー達。


()()()()歩きで艦内を駆けずり回るペンギン達によって命を吹き込まれ、艦尾のスクリューが()()()を上げる。

海水をかき分け、潜水艦ヴィリー号は棚氷の隙間に広がる巨大な渓谷を、ゆっくりと進み始めた。


ソナーによって浮かび上がる像は、この地形が暫く続くことを示している。

両側は氷の絶壁、行く手に広がるのは細々と続く陰鬱な隘路。


頭上から差し込む光は乏しく、眼下に広がる闇は果てしない。

―――しばしの間、艦内を静寂が支配する。



「・・・しっかし。拙者が()()()()()()()()に、世の中は目まぐるしく変わったものでござるなあ。よもや、海の中を進む船に乗る機会が来ようとは」


寅吉(トラキチ)さんは、()()()()()()()()でしたっけ?」


()()()()()()。あの当時は件の()()や、()()()ひとつ目にする度に大騒ぎしたものでござるが。技術の進歩という奴はまっこと、空恐ろしいものでござるなあ」



シートの上でくつろぎながら、しみじみとそんな事をのたまう猫面の男。

彼が生きた江戸時代末期からすれば、この艦などは正しく慮外の代物であろう。


()()()()()、と口にはすれど、それでも殊更忌避することもなく、大人しくこうして座席の上に収まっている。

彼という人物にはなんだかんだで、()()()()()()()()()()()()()のようなものを備わっているのだろう。


束の間訪れた歓談の時間。

後の席から身を乗り出した後輩も参戦し、艦内にはしばし他愛のない談話の花が咲く。


そうして進む事、数分。

最初の異変は、まず()()()()()()()()()



()()・・・?」



()()()()と揺れながら、行く手の一方向を差していた磁針。

それが、()()()()()()()()()()()()()()


視界の端でそれを認め、ぼくは慌てて視線を落とした。



『ドウシタ、何カ気付イタノカ?』


「えーっと。なんだか針の様子が―――()()()!?」



ぼくの様子に気付いた野呂(ノロ)さんの問いかけに、応えようと声を上げるが―――

言い切る間もなく、()()()()()()()()()()()()()()



『グエッ?』『グェー!!』


「どうした、()()()!?」


「し・・・()っす!」



全身が、激しく揺さぶられる。


断続的に襲う付き上げるような衝撃、()()()()と内壁が嫌な音を上げて軋む。

突然の出来事にびっくりした小バウアー達が、そこいら中で転んだり、慌ただしく周囲を駆け回ったりしている。


焦りを帯びたツェツィーリエの声、それに()()()()()独逸男子は、ソナーによる探査を試みる。

海中に潜む()()を暴き出す音の波はやがて、艦体を覆う『()()』の像を浮かび上がらせた。


ヴォルフラム(Wolfram)の声に、緊張の色が混ざる。



「取りつかれました!()()()()っす!こいつ・・・()()()()()()()()()()()()()()()()!!」


「何だと・・・!?」



ぼくは慌てて、『見鬼盤』の向きを()()()()()()()()()()()()()


床に対して垂直、真下を()()()と指す磁針。

それは、ゴム床を超えた向こう側、海底より浮かび上がった『()』の存在を示していた。


耐圧殻の外から、巨大な艦体を抑え込んでいる『()()』。

その急襲により、極海での初戦の火蓋は今、まさに切って落とされた―――!!



今週はここまで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ