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お釜大戦  作者: @FRON
第七章 急襲!怪力博士の巻!!
315/344

∥007-E 父がウツになりまして・前

#前回のあらすじ:先輩のお宅訪問!



[マル視点]



―――あれは今から4()()()、ぼくが()()2()()()()()()()の事だ。


ある日、父の同僚から呼び出されたぼくは、カフェの4人掛けテーブルを前に半ば()()していた。

テーブルの上に所せましと並んでいるのは、色とりどりの()()()()()


ケーキ、プリンアラモード、チョコパフェ、e()t()c()


ガラス容器の上には純白のクリームを土台に、お菓子とフルーツのパラダイスが広がっている。

それが、()()()()()()()()()()()()


見ているだけで胸やけしそうな景色、その向こうでは鷲鼻の西洋人男性が、喜色満面のままそれらを次々と頬張っていた。



「ワオ!この店はアタリだね。甘すぎず、かといって薄味でもなく。クリームの質感がお見事、フルーツとの相性もすこぶるいいね。欲を言えば・・・もうちょっとボリュームが欲しいかな?ああ!君も見てないで、好きな物から食べるといいよ!」


「いえ、その。見てるだけで満腹なんで、遠慮しときます・・・」


「そうかい?なら全部、僕だけで食べちゃおうかな!ンン・・・美味い(デリシャス)!!」



()()()()()()()()()()


長柄のスプーンを器用に動かし、並み居る甘味を次々と制覇していく。

数分もしないうちに、テーブルの上に置かれた容器は全て、空になってしまった。


()()でも見るような目つきで、ウェイトレスが空の器を片付けいった、その後。

手ぬぐいで口元を綺麗にし終えると、彼はようやく()()()()()を切り出した。



「―――()()()()()()()()()()?」


「そうなんだ」



彼の口から聞かされたのは、正に寝耳に水の事実だった。


ミッチェル(Michel)は外資系企業で働く、父の部下の一人だ。

公私ともにお世話になっているとかで、うちの一家とはかれこれ10年以上、家族同士の付き合いを続けている。


営業マンらしく、その性格は軽快にして多弁。

()()()()()()()()()()()と豪語するだけあって、寡黙な父とは対照的に常時、喋くり倒している印象が強い。


そんなミッチェルの言によると、うちのお父ちゃんは現在、()()()()()()()()()()のだという。



「事が発覚したのは、先日実施されたメンタルチェックの時さ。うちはあれ、()()()だろう?客先とのトラブルや業績の不振なんかで、心の均衡を崩す奴が時々、出てきちゃうんだ。社としても、そこは頭を悩ませてるらしくてね。暫く前に定期的なチェックと、問題の見つかった社員に対するケアが義務化された訳なんだ。でも―――ヒデアキは、()()()()()()()()()


()・・・()()()?」


「それが、わからないんだ」



()()()()()

()()()()()


二重の意味での「()()()?」を零したぼくに、コーカソイドの中年男性はゆっくりと首を振る。

欧米系らしく、彼のジェスチャーはいつも大げさでわかりやすい。


つまり、()()()()()()()()()()ということだ。


彼にしては珍しく、懊悩を湛えた様子の琥珀色の瞳。

それが、テーブルの向こうから()()と、ぼくのことを見つめていた。



「・・・表面上は、()()()()さ。でも、間違いなく―――()()()()()。ヒデアキは、内に抱えるタイプだからね。これまでに何度も、悩みが無いか聞き出そうとしたのだけれど・・・。結局、だんまりのままだった。だから―――()()()()()()()()()んだ」


「ぼく!?でも、そんな。専門家か何かに任せとけば、それでいいんじゃ・・・?」


「精神科の受診はあくまで、()()だからね。僕がヒデアキの事情を知ったのも、社の勧告を再三無視しているって、相談が回ってきたのがきっかけだったんだ。当人にその意思が無い以上―――出来るのは現状、()()()()()()()()()()しかない」


「そんな・・・」



テーブルの上で組まれた、歴史を感じさせるごつごつとした太い指。

俯き加減の彼は普段見せる、明るい表情はなりを潜めている。


ぼくをまっすぐ見つめる表情は、真剣そのものだ。

ここへきてようやく、ぼくは自分に掛けられている『()』を理解した。


十年来の親友の危機、それに対し彼は方々手を尽くして、()()()()()()

それでも諦められず、藁をもすがるような思いでたどりついたのが、()()だったんだ。


その期待の大きさに、思わず身じろぎする。

だがこの期に及んで、ぼくの中には未だ、『()()()()()()()()()()()()?』なんて楽観論が居座っていた。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「いや、でも。ぼくに一体、何が出来るってのさ・・・?」


()()()()()()()。家で見せる様子、ふとした時に零した言葉。そういった中で、カイトが気付いた事があれば僕に教えて欲しい。会社での様子からは、ヒデアキを悩ましているものの正体は判らなかった。となれば、残るは家庭の事情くらいしか糸口が思い当たらないんだ。―――頼むよ、()()()()()


「わ、判った、判りましたから・・・!普段と違う事があれば連絡する、それでいい?」


「恩に着るよ、カイト!!」



テーブルの向こうから身を乗り出し()()()()と両手を掴まれる。

その掌の大きさに()()()としているうち、ミッチェルは脇に避けていた手荷物を()()()()と集め始めていた。


小物をバッグの中へ詰め込むと、慌ただしく立ち上がった彼はもう一度、こちらへと視線を投げかける。



(せわ)しなくてすまないね。本当は客先から帰る途中だったから、これから急いで戻らないとなんだ。・・・()()()()()、連絡待ってるよ」


「うん。・・・ミッチおじさんも、お元気で。()()()


オ・ルヴォアール(さよなら)!」



最後に軽くハグすると、おじさんは店の外へ出て行った。

賑やかな彼が居なくなると、急にあたりが()()と静まり返ったように感じてしまう。


店の支払いは、彼が先程済ませてくれている。

このままここで、時間を潰しても大丈夫な状況だ。


―――()()()()()()()()()()()()

手持ちぶさたになったぼくは、()()()と呟きを漏らした。



「・・・()()



結局、ぼくは店を出てそのまま()()()()と歩き始めた。

帰路に就く途中、先程の出来事を改めて思い返してみる。


なんだか、現実味の無い出来事だった。


()()()調()()()()()()()()()()()()()()()()

とりあえず流れで協力することになったが、()()()()()()()()()()()()()()()


歩きながら首を捻ってみても、何も思い浮かばない。


4年後の今から振り返ってみると、この頃のぼくは、あんまり()()()()()()()()()()()ように思う。

ただ何となく暮らしていれば、大きくなって大人になれて、()()()()()()()()()()()()


そう、何の根拠も無く信じていたんだ。

要するに、()()()()()という事なんだろう。


しかし、事態は()()()()()()()()()()()()


待っていれば、訪れるはずの未来。

()()()()()()()()()()()()()と、そう気付いたのはそれから、()()の事だった―――


今回はここまで。

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