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お釜大戦  作者: @FRON
第七章 急襲!怪力博士の巻!!
308/343

∥007-31 ループ系主人公ヘレンちゃんは完走したい・上

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

#前回のあらすじ:「ビーターや!」「違います」



[マル視点]



我等が小さな()()()()こと、ヘレンちゃん。

彼女の正体は、この世界のほんの少し未来からやってきた、時間旅行者(タイムトラベラー)であった。


時間遡行という奇跡を可能にしているのは、大いなる(Great)古のもの(Old One)、神ダグザの秘宝『ダグザの大釜』の力。

数多の時と世界線を越え、彼女は『大罪悪霊(レギオン)』という新たな脅威が迫りつつあることを、ぼくらに警告するのだった―――



「つまり・・・()()()()()()()()()()()()()()!」


「あーちゃん??」


『ん-、まあ。そういう事になるんですかねー?』



・・・と、まあ。


そんな感じに話を聞き終えたところで、後輩が唐突に妙なことを口走る。

思わず首を傾げるぼくに対し、当のヘレンちゃんはあごに指を当て、()()()()とした表情を浮かべた。


こうして見れば、天使のように可愛らしい女の子だ。

しかし本当に、彼女は未来からやってきたのだろうか?


話の内容が内容なだけに、なんだか信じられない。

しかしそれもまた、仕方のない事なのかも知れない。



「・・・つ、つまり。このままではこの世界はその、『大罪悪霊』のせいで滅びてしまうって事ですの・・・!?」


()()()()()()?』


()()



ショッキングな話の内容のせいか、若干青ざめた顔のエリザベス(Elizabeth)嬢。

彼女が零した一言に、意外な答えが返される。


側でそれを聞いていたぼくらも、揃って「()?」という表情を浮かべてしまった。

滅びないの?なんで?


・・・いや、その方がずっと良いのだけれど。


いわゆるタイムスリップ物の()()よろしく、破滅へ向かう絶望の未来から過去の世界へ、唯一の希望を求めてやってくる、()()

そんなお決まりの展開を裏切り、()()()()()()とした表情のまま、夏空少女はこう続けるのだった。



『一応、補足しておきますとー。仮に、『彼方(ビヨンド)』の大侵攻を放置した場合でも、直ちに世界は滅びません。現世にもヒトとしての限界を超え、超自然的な力に目覚めた人間・・・『覚醒者』が存在するからです』


「それって、あのオッサンが所属する組織みたいな・・・!?」


『ですです。お兄さんは既に面識がある訳ですが、第六感に目覚めた彼等は高次元世界を知覚することが出来ます。つまり、【彼方より(シング フロム )のもの】(ザ ビヨンド)が発生させる【影の国】(アルバ)にも対抗できる訳ですねー』



【影の国】とは、この世界へ侵攻する際、【彼方よりのもの】が発生させる領域の事だ。

現実世界を写し取った()()()()()()()には、()()()()()()()()()


3次元世界の生物にとっては致命的な環境であるが、高次元生物である奴等にとってはそれも無関係。

身動きの取れない犠牲者は、一方的に嬲られ精気を絞り尽くされる羽目になる訳だ。


それに対し、生物の枠を超越した『覚醒者』は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

通常の手段では討伐の難しい【彼方よりのもの】への、()()()()()となるのだ。


そして、北海の大決戦の際、ぼくは政府機関の所属を名乗る奇妙な男と出会った。

真調(ましら)という、類人猿(チンパンジー)めいた風体の中年男だ。


奴の言によれば、人類社会の裏にはぼくたち【神候補】のような、いわゆる『覚醒者』達が密かに存在しているらしい。

そして、ヘレンの言うとおりそれは日本に限らず、全世界、あらゆる国に共通する事なのかも知れない。



「それってつまり、世界各国にも『既知対(キチタイ)』みたいな組織が存在する、ってコト・・・!?」


()()。古くからある伝統宗教は大抵、内部にそれ専用の部門を密かに抱えています。キリスト教圏の『悪魔祓い(エクソシスト)』なんかがそうですね。更に言えば、政府機関による超能力開発、宗教勢力の囲い込み。そいうった取り組みも、国家の霊的防衛を視野に入れたものだったりする訳です』


()()()()()()()()?」


「完全に、陰謀論の世界ですね・・・」



後輩が口にしたのは、かつてのアメリカが行っていたという、洗脳実験のコードネームだ。

一説では、超能力によるマインドコントロールも行われていたとされ、いわゆる陰謀論の定番となっている。


シルヴィア(Silvia)さんが呆れ気味に呟いた通り、なんだか()()な話になってきた。

()()()()()()()()、どうやらこれが世界の真実らしい。



『世界中の国々は通常戦力と共に、霊的国防の為の戦力を持ちます。『彼方』の()()()くらいじゃ、我々の世界は屈したりしないって事ですねー』


「それじゃ、私達がわざわざ手を出す必要なんて無いって事じゃありませんの・・・?」


『―――()()()()()()んですよね、これが。国々が持つのはあくまで、()()()()()()()に向けた戦力。『彼方』のような、完全に認識外からの攻撃は想定外な訳です。特に奴等は性質上、被害が表面化するまで時間がかかりますから・・・』


「外から見れば、バス事故や旅客機事故みたいな扱いになるから、()()()()()()()()()のか」


『ですです』



【彼方よりのもの】は人気の無い郊外を好み、そこに迷い込んだ人間や、車両などを襲う習性を持つ。

更に、襲撃される当人はそれを知覚できず、結果として原因不明の昏睡や心臓麻痺として、周囲には認識される。


何度も続けばじきに()()()()()()()()()だろうが、それまで被害は出続ける事になる訳だ。

奴等の厄介な所であり、対処の難しさを生み出す()()である。



『霊的国防とは名の通り、()()()()()()といった脅威から自衛する為のものです。彼等は既に、国内外にあるリスクで手一杯なんですね。そこへ、外から襲い掛かる()()()()()が加わると、じきに機能不全に陥っちゃう訳です』


「対応能力が()()()して、既存の脅威にも対処できなくなるという事ですか」


()()。・・・私は最初、ループを開始する前の世界で、『彼方』の大侵攻を乗り越えました。ですが、侵攻の終結後、小国から順に()()()()()()ようにして、人類世界は()()して行ったんです』


「大侵攻そのものではなく。それによる負荷(ストレス)が遠因となって、世界は破滅へと向かう・・・?」


『ですです』



ヘレンはそう答えると、重苦しい様子で頷きを返す。


一時、その場に沈黙が流れた。

聴衆は互いに顔を見合わせ、戸惑いの表情を浮かべている。


無理も無い、ぼくも少々混乱している。


今年の12月、『X()()()』を迎えた後の世界。

そこにはやはりというか、『()()』が待ち構えていた。


『彼方』の脅威そのものは退けられても、()()()()()()()()

答えの無い問題のような状況に、ぼくの中で()()()()と疑問が渦巻いている。


まとまらない考えに四苦八苦する中、静寂を破ったのは少しハスキーな声であった。



「・・・話はわかった。だがヘレン、何故それを()()()()()()()?」


「えっ・・・?」


『ここに居る皆さんに、お願いしたい事があるからです。色々考えた末、()()()()()()()()()()だと判断しました』


「それは別に、他の有力クランでも良かった筈だ。『Wild (ワイルド)tails』(テイルズ)は有力クランの一つだが、『()()()()()()()』や『()()』。構成人数や規模で勝るクランは他にもあった筈だ」



ヘレンの言葉に、(あきら)は淡々と切り返す。

彼女が挙げたのは、どちらも圧倒的な構成人数で知られる有力クランである。


片や欧州を中心に、100を下らない人数と高い団結を誇る騎士団。

もう一方は、それ以上の人数を擁し、圧倒的な求心力を持つ中核メンバーが、それを纏める極東アジアの雄。


どちらも引けを取らぬ強豪クランであるが、『Wild tails』も規模としては負けてはいない筈だ。

だがしかし、()()()()()()()()()()()()()()


言われてみれば確かに、疑問が残る状況であった。



『その答えは、()()()()()()()()()に関わってきますね。私は過去のループの中で、幾度となく【()()()()()()()()()()を経験しました。今回、(あずさ)さんが攫われたのも()()()()と言えます。明さんが挙げた二つのクランを選ばなかったのは、実力ではなく()()()()()()()()()()()()()()()を、この場に集めた結果なんです』


「【学園】内部で起こる襲撃・・・」


「敵は―――()()()()()()()()()?」



明の言葉に、ヘレンはゆっくりと頷きを返す。

再び()()、とその場に静寂が満ちた。



『これが、奴等を()()()()、と呼ぶ所以です。『大罪悪霊』は密かに忍び寄り、今も【学園】内部に着々と、その触手を広げ続けている筈です。それに対抗する為、皆さんには協力をお願いしたいんです』



そう言い終えると、宙に浮かぶ夏空少女は()()()と頭を下げる。

それを前にして、ぼくらは戸惑いの表情のまま、再び互いに顔を見合わせるのだった―――



今週はここまで。

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