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お釜大戦  作者: @FRON
第七章 急襲!怪力博士の巻!!
306/342

∥007-29 戦後処理・中

#前回のあらすじ:なんかゆるキャラ出て来たんですけど!?



[マル視点]



秘密研究所を探索した面子(+()())を集めて開かれたこの場にて、ヘレンによる説明が開始される。

議題となるのは、謎の敵である『()()()()』について。



『さてさて。まず、『大罪悪霊』とは名前の通り、()()()()です。突然ですが、皆さんは()()()()・・・()()を見たことはありますか?』


「―――本当に突然ですわね?まあ、()()()()けれど」


「私も、()()()()には」


「あ、はい。ぼくも()()・・・」


()()()()よねー」



サマードレス姿の少女が最初に切り出したのは、やや唐突に思える問いかけだった。

それに戸惑いつつも答える英国コンビに続いて、ぼくは曖昧に頷きを返す。


後輩がほっそりした指を顎に当てながら呟いたように、『常設任務』(クエスト)の途中、時折、幽霊と遭遇する事がある。

敵の姿を求めてうろついていると、()()()()()()()()()()()()()、なんて場面が()()()()あるのだ。


一度、死にかけて覚醒した際、どうやら()()()()()()()にも目覚めたらしい。

そのせいか、今の自分はスピリチュアル(霊的)な存在も、普通に感じ取れてしまうのだ。


これはぼくに限らず、【神候補】()()()()()()()らしい。

【神候補】になった事を後悔してはいないが、()()()()()だけはちょっぴり苦手だ。


聴衆の面々が思い思いの反応を返す傍ら、ホワイトボードの側では(あきら)さんが、神様にお粥を与えつつ()()と聞き耳を立てている。

助手として紹介された通り、どうやら彼女は()()()に徹するつもりらしい。



『はい、ありがとうございます!・・・そんな訳で。皆さんもご存じの幽霊さんですが、これには色んな種類があります』


()()()()()()()()()()()・・・とか?」


『ですです。今、お兄さんが仰ったように、その性質によって幽霊は様々に分類されます。中でも、『()()』は生けとし生ける者全てに害をなす、悪性の存在を指す訳です』


「・・・『()()()()』も、()()()()()()()()だ、と?」


『です』



ぼくが挙げた例に、ヘレンは()()()()と頷いて肯定する。


生者を羨み、その足を引っ張ろうとする。

祟りを引き起こして、己に関わる者へと害をなす。


『大罪悪霊』とは、そうした性質の存在であるらしい。



『更に付け加えるならば、彼奴等は【彼方より(シング フロム )のもの】(ザ ビヨンド)()()である、という点でしょうかね』


「あれが、『()()()()()だって・・・!?」



サマードレス姿の少女が零した一言により、聴衆の間にざわめきが広がる。


【彼方よりのもの】とは、異世界である『()()』より飛来する、人を襲う怪物の事だ。

奴等は犠牲者の元に姿を現す時、UFOや宇宙人といった、()()()()()()()を象る場合が多い。


襲われる者が恐怖を抱く、『()()()()()()』の姿。

それを仮初の肉体として纏い、彼奴等はこの世界へと現れるのだ。



「つまり―――『()()()()()()()()()()()()を模した、【彼方よりのもの】。それが、『大罪悪霊』ってコト・・・?」


()()。それとはまた違いまして、あれは()()()()()()()()()()()です。奴等もかつては人間だった・・・()()()()。―――その魂魄は今も、『()()()()()()()()()んです』


「・・・奴等によって奪われた、()()()()()()()。その霊魂が、『大罪悪霊』とやらの()()か」


「なんですって・・・!?」



ぼくが発した疑問は、ヘレンによって即座に否定された。


宇宙人を模したように、()()()姿()()()()()()、【()()()()()()()】。

それが、件の怪物の正体と推理した訳だが、どうやら()()()らしい。


ぼくが首を捻る一方、それまで()()と話に聞き入っていた亜麻色の髪の少女が、()()()と呟きを漏らす。

その一言に、エリザベス(Elizabeth)は思わず()()()と椅子を蹴って立ち上がった。



「低級の()()()は精々、人間から精気を掠め取る程度の存在だ。しかし、高位の()()は肉体ごと、人を()()()()()()()()()()()()()()()。いわゆる、『神隠し』(アブダクション)の一要因だな。『()()』へ落とされた人間は、奴等の餌となる訳だが・・・。肉体が死亡した後、残された霊魂が()()()()()と言うと―――」


「現世であれば、天に召されるのが()でしょうね。ですが、『彼方』で()()が通用するとは思えません。行き場を失い、異界へ取り残されたゴースト。それが今も、彼方の奥底に人知れず存在する。・・・()()()()()ですか」


『・・・ですです』



女性家令が明の言葉を引き継ぎ、『()()()()』なる存在の()()を言い当てる。

視線を宙に浮かぶ夏空少女へと向けると、彼女はゆっくりと頷きを返した。


ヘレンによる説明は続く。



『先程、お話しした幽霊の分類の一つに『()()()』、というものがあります。肉体を失った死者の霊魂は、そのままでは存在を保つ事ができません。周囲に溶けだすようにゆっくりと、存在が希薄になっていき、いつかは消滅してしまうんです。それを防ぐ為、一部の霊は生物に憑りついたり、他の霊体を襲って取り込んだりします。このうち()()()()()()()が行きつく先が、『()()()』です』


「ん・・・昔、()()()()()()かも。()()()が近づいちゃダメだ、って言ってたかなー?」


「あーちゃん、それっていつぐらいの事なの・・・?」


()()()()()()。いっぱい、人とか動物の顔が浮かんでて、ちょっとキモかったなー」



後輩が()()()と漏らした言葉に疑問を返すと、彼女は()()()と首を横に倒しそんな事を呟いた。


・・・それが事実だとすると、【神候補】になるずっと前から、「()()()()()()()()()のだが。

山盛りの疑問を()()と飲み込んで、ぼくはヘレンちゃんへと視線を戻した。



(あずさ)さんが仰った通り、『()()()』自体は稀に自然発生する存在です。彼女が目撃したのは恐らく()()()()の存在ですが、土地や血族に端を発する『集合霊』は、()()、あるいは()()()と呼ばれ、神様の一つとして数えられているんです』


「・・・確か、『泥艮』(ディゴン)深泥(ミドロ)族の祖霊だって話だったよね?」


『ですです』



()()()()()()


こういった()()()()()()()()()()()、いわゆる『()()』の類は、我が国でも時折、信仰の対象となる存在だ。

精霊信仰的な『()()()』の在り方であるが、今、遡上に上がっている『大罪悪霊』は、それとは()()()()()であろう。


悪性の存在でありながら、神に比肩する力を持つ、()()

ヘレンとの間で繰り広げられた、神話めいた闘争を思い出し、ぼくは思わず()()()と背筋を震わせる。



『『大罪悪霊』は現在のところ、知る限りで()()()()。『()()』という、極めて特殊な環境が生み出した()()()()()()です。特筆すべきは、その霊的質量。・・・最低で()()、多く見積もって()()()()()。その規模の死霊が、一つに集まっていると推測されます』


「なんだって・・・!?」



ヘレンの言葉に再び、どよめきが室内に流れる。


少女が()()()、と指を鳴らすと、ホワイトボードの前に半透明のパネルが開き、あの日、ぼくが目撃した戦いの光景が映し出された。

固唾を呑んで見守る観客達の前で、天地を揺るがす大決戦が繰り広げられる。



「これは―――地形から見て、()()()()()()()()()()()、でしょうか?」


「それで合ってます。と言うか、ぼくが見た光景、()()()()()のような・・・?」


()()()です、お兄さん。視界を()()()と拝借して、皆さんへの()()()に使わせて貰っちゃいました』


「・・・()()()()も出来ますの、貴女?と言いますか、()()()―――」


「いくら何でも、()()()()()()()()んじゃ無いのか・・・?」



()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()


それに対する怪物―――"色欲(luxuria)"も、なんでも噛み砕く()と、変幻自在の動きで互角の戦いを見せる。


改めて見ると、この戦いの最中で生き残れたのが不思議なくらいだ。

全ては、障壁で護ってくれたヘレンのお陰なのだが、あの場に取り残されたのも彼女のせいだけに、お礼も言い出しづらい。


一通り戦いのハイライトを流し終えると、半透明のパネルは映像を打ち切って消失する。

誰ともなしに溜息が漏れる中、宙に浮かぶ少女は再び口を開いた。



『―――と。()()()()()()()()()、『大罪悪霊』とは悪性の神、()()()()()()()()です。『彼方』に閉ざされたその()()は、()()()()()()()()()()()()()。この場を催した目的の一つ、それは彼奴等の()()と、その()()を正しく認識して貰い、警戒を改めて頂く事なんです』


「ヘレンちゃんより強い、だって・・・!?」


「・・・でも、待ってくださいまし。それは()()()()ですわ。それ程の犠牲者が出ているのなら、今まで何故、()()()()()()()()()()()()()んですの?」


「―――別に()()()()()()()()()()()()んじゃ無いのか?」


「「「えっ?」」」



『大罪悪霊』の()()と、()()


その二つを知らせる事が、ヘレンの目的なのだという。

実際に、その強さを見ている身としては納得の理由であるが、真紅の令嬢は()()に疑問の声を上げる。


最大で、数百万単位の犠牲者。

それが『彼方』へ連れ去られ、巨大な怨霊と化しているという。


しかし、そんな数の死者が出ているのであれば、()()()()()()()()()()()のだ。

そんな、ある意味当然の疑問に対し、異を唱えたのは明であった。



「お前達も、聞いたことくらいはあるだろう。『彼方よりのもの』は別次元の世界からこちらへ来ているが、あちらとこちらの()()―――要は、()()()()()()()()()()()()()が存在する。2()0()1()2()()1()2()()2()1()()に、それが最低になる『X()()()』が迫っていて、今、奴等の襲撃が多発しているのは()()()()だ。だが逆に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思う?」


「『Xデー』から時間が経つと、二つの世界は離れて()()()()()()()()。その逆に・・・()()()()()()()()()()()()()()()?」


『仰る通り。『彼方』に閉じ込められているのは、()()()()()()()()()()()()。全く別の()()、別の()から連れ去られた生物も、死後()()()()へ取り残されるんです。その魂の大部分は、時間経過によって摩耗しているでしょう。ですが、それでも膨大な量の死者が、今も残されているのは確かです』


「そんな事が・・・」



『大罪悪霊』を構成するという、数百万単位の霊魂。


その正体は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()だという。

驚きの真実であるが、驚愕も冷めやらぬままに説明は続く。



『死者の霊魂は、時間と共に摩耗します。それを補う為に融合したとしても、人間らしい豊かな感情は削り取られ、先鋭化された()()()()のみが残されてゆきます。怨霊が、人を憎む()()()()()()()ように。数多の霊を取り込んだ『大罪悪霊』もまた、()()()()()()()()()に呼応した『化身』(アヴァター)を持つのです』



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()、とホワイトボードの前に移動したヘレンが赤いペンを手に取り、新たな内容を書き加えてゆく。


"傲慢(superbia)"

"嫉妬(invidia)"

"憤怒(ira)"

"怠惰(acedia)"

"強欲(avaritia)"

"暴食(gula)"

"色欲(luxuria)"


()()()()()()()()()()』。

その名を書き終えたサマードレス姿の少女は、()()()とこちらを振り返り、再び口を開いた。



『これら全てが"色欲"と()()()()を持ち、()()()()()を振るいます。死後、最後まで残された()()()()()()。最も根源となる"()"を核として、同じ傾向を持つ万単位の悪霊を従えた存在。それが、我々の前に立ち塞がる―――()()()()です』



今週はここまで。

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