表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お釜大戦  作者: @FRON
第七章 急襲!怪力博士の巻!!
305/343

∥007-28 戦後処理・上

#前回のあらすじ:お片付けは一瞬で!



[マル視点]



「あーちゃん!先に来てたんだ?」


「先輩だ!先輩先輩せーん-ぱーいーっ!!!」


「元気みたいでよか()()()()!??」



後輩による()()()()()()を受け、ぼくの身体が「()」の字に折れ曲がる。


慣性の法則に従い、後方へと吹っ飛ぶぼくの身体。

後輩ともみくちゃになったまま、そのまましばし床を転がり、開けっ放しのドアにぶつかるとようやく、二人は止まるのだった。


頭を()()()()に打ち付け、ぼくの目の前は一瞬真っ暗になる。



「いちちち・・・」



()()()()と痛む後頭部をさすりながら、視線を落とす。

そこには無言のまま肩を震わせる後輩が、ぼくのおなかに()()()()()()いた。


先程の()()()()()()に、文句の一つも言おうかと思っていたが、殊勝な姿を目の当たりにしてそんな気も何処かへ行ってしまった。

いつも以上に自由な彼女であるが、失踪騒ぎからこのかた、顔を合わせるのは()()()()である。


秘密研究所から帰還した後。


後輩が無事、目を覚ましたことは既に、羽生(はにゅう)家へ連絡して確認済みである。

すぐにでも顔を見に行きたい所であったが、原因不明の昏睡が続いた後とあって、彼女はそのまま検査入院していた。


検査やら何やらで結局会えずじまいのまま、今日、この場でようやくの再会である。

この様子だと、彼女の方も会えない寂しさが募っていたのかも知れない。


―――なんて事を考えつつ。


彼女の様子を見守っていると、どうにも()()()()()()()()事に気付いてしまった。

おへその辺りに鼻先を埋めつつ、後輩は()()()()と深呼吸を繰り返している。



()()()()()()・・・()()()()ー」


「・・・ちょっと??」



そこはちょっとこそばゆい・・・()()()()()


なんだかちょっと()()()()()な絵面になってきたので、流石に止めようかと思い始めた、その時。

ふと視線を感じて顔を上げてみれば、腰に手を当ててふんぞり返る、ゴージャスな金髪令嬢が視界に飛び込んできた。


半眼のまま()()()、とぼくを睨んだまま、「()」「()」「()」「()」と無言のまま口の形で催促される。


思わず立ち上がり、「()()()()」の姿勢を取る。

床に()()()()と落ちる後輩、それをパンツスーツの女性が()()()、と抱え上げた。


子猫のように後輩を抱え、ボーイッシュな女性家令は()()()、とこちらへ視線を送る。

思わず()()()、と小さく頭を下げると、グラスの下から覗くブラウンの怜悧な瞳が瞬き、彼女もまた会釈を返してきた。


エリザベス(Elizabeth)嬢とシルヴィア(Silvia)さん、彼女達もまた、ぼくらと同じようにこの場へ招かれた口である。

その目的は唯一つ、()()()()()()()()()()()()()()()()()であった。




  ・  ◆  ■  ◇  ・




後輩の失踪騒ぎが終結して、()()3()()()()()()()()()


その最終日に、【()()()()()()()()()()()

そして、()()()()()()()()()()()()()


これらは、一部の【神候補】達の間で()()()()()()に囁かれていたが、今の所大した騒ぎにはなっていない。


尤も、このまま沈静化して貰った方が()()()()()()()だろう。

同じ【神候補】の中に、()()、そして()()()()という、あからさまな犯罪を働く輩が現れたのだから。


だがしかし、当事者としては()()()だ。

一連の出来事の裏で、()()()()()()()()()を知りたいと思うのが当然である。


人造湖東岸に人知れず存在した、怪人『怪力(くゎいりき)博士』の()()()()()

そして、その最奥で遭遇した、"色欲(luxuria)"と呼ばれる()()()()()


元々は、後輩の捜索が目的だったぼくらにとって、完全に予想外のエンカウント(遭遇)である。

だが唯一、ヘレンちゃんだけが彼等に対し、()()()()()()を持っているようであった。


わけもわからず巻き込まれた側としては、徹底的に問い詰めなければ気が済まない。


・・・という経緯があって、エリザベス嬢率いる『Wild (ワイルド)tails』(テイルズ)直々に質問状を送り付けていた。

それに対し、このメンバーが()()()に呼び出された次第であった。


【イデア学園】南側、学園講堂を始めとした、大き目の建物が並ぶ一角。


大手のクランハウスが集い、クラン同士の話し合いに使う広間を有する建物も、数多く存在している。

クラン関係者にとっての重要区画であるが、ぼくらが居るのは()()()()()()()のうちの一つであった。


席に着いたまま、()()()と部屋の中を見回す。


まず目につくのが、室内中央に置かれた広々としたテーブル。

磨き上げられた天板は飴色に艶を放ち、4つの辺に陣取る3人の少女と、ぼくの顔を映し出している。


壁の一面には大きく明かり取りの窓が嵌められ、外から差し込む陽光が、宙に舞う細かいチリを白く浮かび上がらせている。

残る面には、大きな壺が乗せられた戸棚、ハードカバーの本が詰まった本棚、壁に掛けられた鹿の角の飾りといった、高級そうな調度品が見て取れる。


全体的に落ち着いた雰囲気の、いかにも応接間といった感じの一室であった。


そのテーブルの上に、()()()と浮かぶサマードレス姿の少女が一人。

言わずと知れた我等が小さなかみさま、ヘレンちゃんその人である。



『今日は皆さんお忙しいところ、お集まりいただきありがとうございます!(あずさ)さんも、調子が戻ったようで良かったですね。残りの皆さんも、その後お加減は如何でしたかー?』


「お陰様で()()()()、病気知らずの健康体でしてよ!()()()()()。それより先ずはこの場に集まった()()の件、きちんと説明して貰えるんでしょうね?」



()()()と笑顔を浮かべるヘレンに対し、真紅の令嬢は眉根を上げてそう言い放つ。


()()()()()態度であるが、内心ぼくも同じ気持ちであった。

ヘレンちゃんはちょっと、今回、隠し事が多すぎである。


テーブルの反対側ではシルヴィアさんも、()()()()と頷いている。

あーちゃんは・・・薄目を開けたまま、()()()()()()と舟を漕いでいた。


その口の端から、()()、とよだれの筋が垂れる。

乙女の沽券に関わる光景から、ぼくは()()と視線を逸らした。



『エリザベスさんは、()()()()をご希望なんです?他の皆さんも?』


「「(無言で頷き返す)」」


『うーん・・・。でしたら、仕方ないですね。前置きは飛ばして、先日の一件について早速お話ししましょうかー』



付和雷同に(一名除く)、上がった疑問の解消を求める声。

ヘレンは上下さかさまになったまま()()、と丸く目を見開く。


前置き無しでの説明開始が合意となった所で、()()()()と手を叩くと、ヘレンは入口に向かって声を上げるのだった。



『・・・と、いうわけで。()()さーん、()()()()ー!』


「はいはい・・・っと」


(あきら)さん!?」



夏空少女の呼びかけに、()()()()とドアを開けて入ってきたのはぼくらも良く知る顔であった。

【揺籃(ようらん)寮】の副管理人、会取(えとり)(あきら)その人である。


()()()()とホワイトボードを押しながら入室した彼女の服装は、最近よく見るゆったりした長袖シャツと、ジーンズの上下。

亜麻色の長髪を靡かせ、部屋の一角にホワイトボードを固定すると、()()()()()()、とヘレンに向かって視線を送る。


宙に浮かんだまま、「()()」のジェスチャーを返す夏空少女。

・・・その足下で、()()()()()()がうろちょろしていた。


大きさは、体高60cm程ぐらいだろうか。

寸胴で、全身がモップのような長く白い体毛に覆われている。


顔らしき部分には大きな鼻と、真っ白なひげで覆われた口。

瞼は厚ぼったく、その下に覗く瞳は潤みがちで、黒く()()()()と飴玉のように艶めいている。


頭と首と胴体の区別が無い、()()()()()()()()な身体。

それに対し、不釣り合いな程に短い脚。


それを小刻みに動かし、()()()()()とホワイトボードの二つの脚の下を行ったり来たりしている。


その手には大ぶりな木匙が握られ、歩く度に上下に揺れ動いていた。

全体的な印象は、地方の道の駅に居そうな()()()()()()()、といった感じだろうか。


そんな、生物というより()()()()っぽい存在の出現に、ぼくは思わずその背中に()()()()()()()()()()()()()()()()()と探してしまった。

()()()と他の参列者を見れば、彼女達も一様にそちらを目で追っている。



「あのー・・・明さん?」


「明でいい。で、何か質問か?」


「そのゆるキャラ・・・()()()()()。不思議な生き物は、一体・・・?」


()()だ」


「・・・()()!?」



藪から棒に飛び出した予想外の呼称に、ぼくは思わず素っ頓狂な声を上げる。

その声で目が覚めたのか、テーブルを離れた後輩が謎生物、もとい神様の前に屈みこんだ。



「神様なんだ・・・。ほんとにー?」


(ポリッジ)!』


「え?これ・・・あたしに?」



()()()、と首を倒して、毛むくじゃらの顔(らしき部分)を覗き込む。


それに応えたのか、()()のような()()()のような、不思議な声が響いた。

続いて、()()、と少女の前に差し出される大ぶりな匙。


思わず()()()()と瞬きした後、それを手に取る後輩。


木匙のつぼ(窪み)を()()()()と見つめる彼女の目の前で、空だったそこに()()()()()()()()()()()()()

それは見る見るうちに()()を増すと、湯気を立てる麦粥(ポリッジ)がすり切りいっぱいまで満たされていた。


部屋の中に、()()()、とほのかに甘い香りが漂う。


唐突に起きた、摩訶不思議な現象。

もう一度大きな眼を瞬かせる少女の前で、神様は()()()()と口を大きく開いた。


奥歯のような臼状の歯が等間隔に並び、その奥には真っ赤なのど()んこがぶら下がっている。

手に持った匙と、口の間とで視線を交互させると、おそるおそる()()()()開けた口の中へと()()を挿し入れる。


()()()、と匙の先を咥えると、()()()()()()と咀嚼を始める。

()()()、と喉の辺りが動くと、厚ぼったい瞼の下で眠たげな瞳が()()()、と輝いた。



(ポリッジ)(ポリッジ)!』


()()()()、ですか?良かったですねー、神様』


()()。流れが全然わかんないんですけど、これは一体・・・?」


『このお方はですねー。この学園に()()()、神様です!これからするお話にも無関係ではないので、顔見せついでに同席して貰っちゃいました。()()()()?神様』


(ポリッジ)!』


「は、はあ・・・」



綺麗な歯並びを見せて、笑顔の神様。

ご機嫌な様子にこちらも笑顔を咲かせるヘレンちゃんに、ぼくは戸惑いながら曖昧な笑みを返す。



『さてさて。脱線はこのぐらいにして、ちゃっちゃと()()に入りましょうかー。本日みなさんにお話するのは、こちらについてです』


()()()()・・・?」



()()、と柏手と共に仕切り直すと、サマードレスの少女はホワイトボードの前に()()()と移動する。

小さな手が指差した先には、『()()()()』と大きく、赤のペンで書かれていた。


皆が一様に、首を傾げながらその文字を呟く。



『これが、皆さんが先日、遭遇した()()の呼称であり、私が目下、()()()()()として警戒する存在です。あの日、皆さんに出した指示も、全ては()と、皆さんが直接()()する状況を避けるための、準備の一つでした』


「それは―――つまり。『怪力兵(くゎいりきへい)零号』(ゼロゴウ)と呼ばれた女性の正体が、()()だという事ですの?」


()()()()



真紅の令嬢が発した問いに、ヘレンは()()()()と頷きを返す。


あの日、秘密研究所の奥底にて、ぼくらは囚われ洗脳された後輩と、その()()たる怪人と遭遇した。

後輩を取り戻すべく、怪人との間に勃発した戦闘のクライマックスにて、その傍らに侍っていた女性が突如、()()()姿()へと変貌した。


それこそが、『()()()()』なのだという。


普段よりも五割り増しで真剣な表情を浮かべると、サマードレス姿の少女は説明を再開する。

この時、ぼくは【学園】全体の存亡を掛けた騒動について、()()()()()()を知ることになるのであった―――


今週はここまで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ