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お釜大戦  作者: @FRON
第七章 急襲!怪力博士の巻!!
303/344

∥007-26 最後に残されたもの

#前回のあらすじ:ヤ○チャ視点でお送りします



[???視点]



"色欲(luxuria)"は今、消滅の危機にあった。


頭上、中空に浮かんだ漆黒の『()』より降り注ぐ()()が、ありとあらゆる物体を焼却してゆく。

砂塵、石、大気に至るまで、全てが瞬時に蒸発し、跡形も無く消し飛んでゆく。


悪霊(レギオン)である自分は本来、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

しかし現在、この空間を満たす灼熱は確かに"色欲"の霊体を破壊し、一欠片も残さず焼き尽くそうとしていた。


この、得体の知れぬ熱の正体は―――()()


あらゆる生命の根幹にして頂点、天に座す巨いなる恒星。

対する"色欲"は悪霊、陰陽の『()』に属する存在である。


対極に位置する概念であるが故に、二つがぶつかり合えば弱い方が消えるのが道理。

故に、この『熱』は()()()()()()()


"色欲"は本能的に危機を感じ取り、この場からの脱出を試みた。

身体を構成する影の一部を切り離し、即座に四方へと放つ。


分身体は多次元空間に繋がる裂け目(鼠穴)を見つけ出し、そこへ逃げ込むことでこの空間から離脱―――



()()()()()()!』


『・・・っ!?』



―――()()()、と指を鳴らす音が響いた。


あと一歩で次元の裂け目を開く、というところで裂け目が閉じ、同時に放射線の嵐が降り注ぐ。

逃走を許さぬ、小さなかみさま(ヘレン)による妨害であった。


敵対者は立て続けに、上空へ新たなゲートを開く。

天上に口を開けた漆黒の門からは、光の爆裂(フレア)と共に致死性の宇宙線が大量に吐き出された。


不可視の怪力線が霊体を貫く度、"色欲"の構成要素が()()()()と削り取られてゆく。



()()()()()・・・!)



逃走は不可能。

今や、消滅は時間の問題。


刻一刻と己の存在が薄れ行く中で、彼女は一つの()()をする。


頭上に翻る純白のサマードレスを一睨みすると、"色欲"はそれに背を向け、己の中心に深く両手を差し入れる。

そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


ヒトの形を抽象化したような、異形の身体が()()()()と二つに裂け、その中から()()()()が姿を現す。

それは夢うつつのまま瞑目する、『怪力(くゎいりき)博士』の肉体であった。



()()()()・・・』


「ン、ウム?・・・()()()()()()。吾輩を起こすのは一体、誰であるか?」



若い女の声が、博士の鼓膜を揺らす。

先程までの罅割れた()()とは打って変わり、生前のままの声。


博士は()()()()()()と目を擦ろうとして、()()()()()()()()に気付き怪訝な表情を浮かべた。



『博士。私です、零号(ゼロゴウ)です・・・』


「零号!?いや、()()()()()・・・?」



目を幾度かしばたかせる。


眼前に広がっていたのは、ヒトを模して絵コンテで乱雑に書きなぐったような、奇怪な輪郭であった。

目と鼻の先にある異形からはしかし、()()()()()()が響く。


博士は二、三度首を傾げるが、目の前の存在が長年連れ添った存在であることを確信すると、ためらいがちに口を開いた。



「一体全体、君の()()はどうなっておるのかね・・・?」


『後生です。あまり、まじまじと見ないでくださいまし・・・』



恥じらうように、異形と化した手で身体を覆う。

博士の放った当然の疑問に、"色欲"は答える言葉を持たなかった。


土御門(つちみかど)(れい)とは既に()()である。

後に、怪力兵(くゎいりきへい)零号(ゼロゴウ)と呼ばれるようになった女は既にこの世に無く、今の彼女は死した後に残された存在。


そんな彼女にとって、博士の存在は手放すことのできぬ()()、そのものであった。

悪霊に成り果ててもなお、心の内に残された()()()()()()()()()()


そんなかけがえのない存在だからこそ、彼女は己の内に取り込み、傷つかぬよう保護していたのだ。

言いよどんだまま黙して語らぬ様子に何かを察したのか、博士は再び口を開く。



「・・・そうか、ならばよい。して、零号?()()()()()()()()()()()()??」


()()、とお聞きにならないのですか・・・?』


「フン!吾輩を誰だと思っておる!!戦後最大の怪人、『()()()()』ぞ!そのような些末な事にかまけるほど、耄碌しておらんわ!」


『流石です、博士。・・・ですが、そんな貴方にこれから、お別れを告げねばなりません』


()()()!?」



単刀直入に切り出された言葉に、博士は再び目を見開く。


己の消滅を悟った今。

彼女にとっての心残りは唯一、この死地に連れて来てしまった博士の事であった。


周囲を満たすのは摂氏百万度の灼熱の大気。

いかな"色欲"と言えど、そこから護るのにも限度がある。


このまま彼女が滅ぼされれば、博士も同じ運命を辿るのは火を見るよりも明らかであった。



『・・・叶う事ならば、何時までも貴方にお仕えしたかった。ですが、それも最早叶わぬようです。敵は強大、このままでは共に滅びゆく運命でしょう。()()()―――』


「言ってみなさい、零号」


『・・・今は何も言わず、私を信じて頂けますか?』


「無論だとも!君は吾輩の誇り、吾輩の()()()()だ!!」



呵々(カカ)、とまばゆい笑顔の花が開く。


初老に至ってなお、彼が浮かべるのは幼い()()()のままの、子供のような笑顔であった。

それを胸に刻み込み、かつての少女はゆっくりと目を閉じる。


覚悟は決まった。

あとは()()()()()()()



「吾輩にとって、お前達は我が子そのもの。それを信じずして、何を信じようと言うのだ。()()()()()()()()()


『・・・ありがとうございます』



洞穴のような眼窩より、()()()()が零れ落ちた。


異形と化した両手を伸ばし、包む込むように博士の身体をかき抱く。

かつて土御門零であったモノはただ()()()()()()()()()()()()()()()()()()



―――++【愛の結晶(■■■■■■■)】++。



再び巻き起こる、光の爆裂。


ゲートより迸る特大の太陽嵐が"色欲"もろとも、辺り一帯を薙ぎ払う。

破滅の光が通り過ぎた跡には、悪霊の姿は影も形も残されていなかった―――



今週はここまで。

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