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お釜大戦  作者: @FRON
第七章 急襲!怪力博士の巻!!
295/343

∥007-18 最初にして最強

#前回のあらすじ:なんかキモい蟲出た!



[マル視点]



()・・・』



体内から()()()()を引き抜いた瞬間、少女の細い肢体が一瞬、()()()、と痙攣する。

大きく見開かれた瞳は光を失い、重力に引かれた身体は()()()()と床に向かって落下を始めた。



キャシー(Cathy)っ!?」


「―――っとぉ!セーフ・・・()()()!?」



少女の身体は後頭部から、石畳に叩きつけられようとしていた。

小さく上がる令嬢の悲鳴。


しかし―――寸でのところで、落下地点へ滑り込んだぼくの身体が()()を受け止めていた。

背中のど真ん中に()()()、と加わる()()()()()()()()


()()()()()()()()()()

肺の中の空気を総て吐き出し、悶絶するぼくの回りに慌てた様子の英国主従が駆け付ける。



「キャシー、キャシー!?しっかりなさいまし!!」


「・・・大丈夫ですか?」


()()()。な、何とか・・・」



気遣わし気なシルヴィア(Silvia)さんの声に、何とかそう答える。


ぼくはあーちゃんの下から這い出ようと、10秒ほど()()()()と藻搔くも、力及ばず。

()()()と動きを停めた後に、情けない声を上げるのだった。



「・・・あの。出来れば、引っ張り出して貰えると―――」


「しょうがないですわね。・・・()()()!!」


「・・・あ"り"がと"う"ござい"ま"す"」


「どうしたしまして!」



すぽーん!


なんとも漢らしい掛け声と共に、ぼくの身体は頭の方から引っこ抜かれる。

勢い余って擦りむいた鼻の頭を押さえつつ、とりあえずお礼を述べる。


そうこうしているうちに、石畳の上に仰向けに寝かされた後輩の姿が眼に入った。



「全然目を覚ましませんけれど、本当に大丈夫ですの・・・?」


「手応えはあったんで、洗脳は解除出来たと思います。・・・()()()


()()()、って・・・」



瞑目したまま、少女の瞼はは()()()とも動かない。

ラバー質のボディスーツに覆われた、薄い胸に視線を向けると、ゆっくりとだが上下に動いている。


・・・未だ、目を覚まさない後輩。


彼女の精神を蝕んでいた()()は、少し離れた床の上で干からびている。

()』を抜く前に、体内の水分をごっそり奪っておいたお陰だ。


そんな訳で、いつ目を覚ましてもおかしくない彼女。

それが未だ昏睡している事実に、真紅の令嬢は声を荒げる。



「それで彼女の身に何かあったら、一体どうする気ですの!?」


「・・・お嬢様、それとマル様も。(あずさ)様の身が心配なのはわかりますが、今はそれよりも()()()()()を優先すべきかと」


()()()()()」「()()・・・?」



ぼくとエリザベス(Elizabeth)嬢、二人揃って視線をホールの奥へと向ける。


果たしてその先には、興味深げな視線をぼくの手元に向ける『怪力(くゎいりき)博士』。

そして、その傍らに()()()()と侍る黒髪の女性が居た。


確かに、後輩の身柄を取り戻したところで、失踪の()()が野放しのままでは本末転倒だ。

いずれ、似たような事件が起きてもおかしくない。


―――【イデア学園】にも、()()()()()()()()()()()


一部の有志が巡回しつつ、違法行為が行われていないか目を光らせているのだ。

万一、問題が発覚すれば即座にヘレンちゃんが呼ばれ、治安維持組織と協力して解決に当たることになっている、()()()


今回の場合も、件の組織か、いっそのことヘレンちゃんに直接、博士の身柄を引き渡してしまえばよい。

それでさしあたっての不安は解消されるだろう。


()()()』である彼が重犯罪を犯した場合、最悪、強制退去―――召喚契約を破棄し、魂魄を送還される羽目になる。

【学園】における最上級の罰則、()()()()()()だ。



「・・・でもさ。アジトもわかった事だし、今は一旦引いて、あーちゃんの保護を優先すべきじゃ?」


()()()()()()()ですわ!今!この場で引っ捕まえて、然るべきトコロに突き出してやれば万事解決ですもの。・・・シルヴィ!?」


「お嬢様なら、そう仰ると信じておりました。―――鳥保野(とりぼの)蓮太郎(れんたろう)、通称・『怪力博士』。()()()()()()()()()()()?」



兜の下から静かな怒りを滲ませ、白銀の騎士が腰のサーベルを抜き放つ。

その姿に破顔すると、真紅の令嬢は黒褐色の鞭を一振りし、獰猛に口元を吊り上げるのだった。


一旦引くことを提案したぼくに対し、主従二人は徹底的に『()()』事を選択したようだ。

否応なしの連戦に、ぼくもまた愛剣に水刃を纏わせ正眼に構える。


一方。


窮地に立たされた筈の博士はそんな事はお構いなしに、好奇心に溢れた視線を一点へと向けている。

その先はぼく―――()()()、『パラケルススの剣』だった。



「君!それはもしかすると、かのアゾット(Azoth)剣のレプリカかね!?拾号(ジュウゴウ)の肉体に一切傷を残さず、腹中蟲のみを抜き出すとは・・・!」


()()


「先程の()()は錬成反応?剣をフラスコに見立て、肉体から蟲を分離・抽出した・・・?ううむ、興味深ぁい!!」


「・・・()()


「・・・何かね!零号(ゼロゴウ)、吾輩は今、()()()()()()のだよ!?」


「ご無礼は承知。ですが今は、()()()()()()()()()()()()ので・・・」



これから討伐されるという時に至って、『怪力博士』の意識は興味と、知的好奇心に占められているようだ。


それをたしなめる黒髪の女性。

彼女は、口を尖らせる主を背に庇うようにして、その前に立ちはだかる。



()()()()ですわ、『怪力博士』一味。今でしたら抵抗せずに降伏すれば、手心くらいは加えて差し上げましてよ?」


()()()()()。梓様はお嬢様にとっての唯一無二の親友、それを(カドワ)かした罪は万死に値します。・・・お二人とも、ご覚悟を」


「博士、()()()()


「・・・()()!」



()()()()()()()()()()()()()()()()、と言外に迫る主従。

それに対し、こちらの二人は至ってマイペースであった。


淡々と、主の命を求める従者に対し、博士は顎鬚をひと撫でする。

そして、()()()()と大きく瞳を見開くと、襲撃者を見やった。



「よかろう。では怪力兵(くゎいりきへい)零号(ゼロゴウ)、血気に逸ったお嬢さん方に、少々()()()()()()()()()()()


「かしこまりました。・・・式神十二天将が一、毘羯羅(ビカラ)()()律令(りつりょう)(ごと)く、()()()()―――」


『・・・・・・!!』



それまで静観を貫いていた黒髪の女性―――否、()()()()()がしなやかな腕を振るう。


やはりというか、彼女もまた『()()()』。

かの怪人によって改造され、異端の力をその身に宿した人間兵器であったようだ。


()()()


ロングスカートの先に広がる地面が泡立ち、()()()()()()()()()

()、それは闇などではなく、その一つ一つが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


これまで幾度となく目にしてきた、施設の至る所に蔓延っていた鼠の群れ。

あれこそが、彼女が従える『()()』なのである。


あっという間に膨れ上がり、視界を覆う程にまでになった鼠の群れ。

怒涛の勢いで押し寄せる()()()に、ぼくらは揃って引きつった表情を浮かべるのだった―――


今週はここまで。

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