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お釜大戦  作者: @FRON
第七章 急襲!怪力博士の巻!!
293/343

∥007-16 パラケルススの剣

#前回のあらすじ:秘策は我にアリ



[マル視点]



()()―――ですか?」


「はい!」



流星のごとく魔弾が降り注ぐ中。

()()()()()()()()()()()()の体勢でぼくを抱えたまま、縦横無尽に鎧の麗人が駆け抜ける。


―――危ない所を、またもや鎧の人こと、シルヴィア(Silvia)さんに助けられてしまった。


少々情けない姿だが、彼女に協力を仰ぐには丁度、いい機会かも知れない。

ぼくは先程浮かんだ『()()()()()()()』を、こっそり兜越しに耳打ちした。


()()()()()()と囁やかれた内容に、鎧の麗人は僅かに息を呑む。



()()()()を考えてるんですが。・・・どうでしょう?」


「上手く行く確証は―――()()、この期に及んではそうも言ってられませんね。乗りましょう、その()


「ありがとうございます!」



僅かに悩む素振りを見せるが、ほぼ即断でOKを出してくれた彼女に向かって勢いよく頭を下げる。

これで第一歩、後輩を助け出す為の筋道へ歩み出す事が出来た筈だ。


残るメンバーは一人、エリザベス(Elizabeth)嬢にも協力を要請したい所だが、そこは従者であるシルヴィアさんの働きに期待するとしよう。



「とにかく、先ずはあーちゃんの動きを止めないと話にならないんで。準備ができるまでは足止めと、陽動をお願いできれば・・・と!!」


「畏まりました。では―――はっ!!」



後輩が降らせる光の雨、それに一人立ち向かう真紅の令嬢。

そのフォローに向かったシルヴィアさんの後ろ姿を、束の間見送る。


次に、()()()()とホールの隅へ移動すると、ぼくは背負っていたナップザックを()()()()と床へ降ろした。

紐を解いて入口を広げると―――


暗闇の中に()()()()と瞬く、二つのグリーンの瞳と目が合った。



「・・・きみ、見かけないと思ったらこんな所にいたの?」


()()()


「避難中に申し訳ないけれど、ちょいと失礼しますよ・・・っと」



()()()、とザックの中から取り出したのは、()()()()()()()()()()()()()であった。

先程バトルが始まった折、一早くこの中に身を隠していたらしい。


一言断った後、おりんちゃんの小さな身体を、脇に置いてから物色を始める。

()()()()は、すぐに見つかった。



「よし。お次は―――()()!!」


『・・・!』



続いて、不定形の相棒(メルクリウス)を中空に呼び出す。

()()()、と気泡を生じさせ、淡く紺碧色に輝く水塊が音も無く姿を現した。


ぼくは無言で、手に持った物体―――円筒状の『()』を差し出す。

先端に開いた穴から()()()()、と中へ、コバルトブルーの水塊が這入り込んだ。


筒を揺すると()()()、と手に重量感が返ってくる。

筒の中身が満たされたことを確かめ、ぼくは再び後輩へと視線を戻した。


ホールの中央では、今も激闘が繰り広げられていた。


円筒を目前に掲げ、しばし眼を瞑る。

己の目的を再認識した後、おりんちゃんがナップザックに入るのを待って、ぼくはそれを背負いなおした。




(チャンスは恐らく一度きり。必ずこの、『()』で―――)



薄暗いホールを光の雨が行き交う。

それに相対するのは、真紅の令嬢と白銀の騎士。


無数に枝分かれし、変幻自在の軌道を描く鞭が空を薙ぐ。

亜音速の鞭打は光弾を弾き、そのことごとくを叩き落としてしまった。


令嬢の背後から走り出したのは、無骨な甲冑を身に纏った銀の乙女だ。

宙に漂う分身体から降り注ぐ魔弾を躱しつつ、シルヴィアはじっとその動きを注視し続ける。


―――恐らく、12の分身は少女兵器の兵装、【有翼の靴】(タラリア)が齎した()()()だ。

瞬間移動のタイミングを制御することによって、【魔弾の射手】(タスラム)の発射元と、着弾先を自在に制御している。


移動先はランダム、分身体を攻撃しても無意味。


一見、無敵のように見えるが―――

それが移動ならば、()()()()()()()()()()()()()だ。


始点―――転移を始めた時点の像は、すでに()()のもの。

故に、無敵。


途中、無数に現れる像もまた、総て幻。

霞のようにかき消えるだけで、決して手応えは得られない。


ならば―――狙うべきは、()()()()

移動の始点と終点を結んだ()、そこに生じる像にこそ、唯一攻撃が通る筈だった。


そして既に、銀の乙女は()()()()()()()を見出していた。



「そこ―――!!」


「合わせますわよ!フレキシブル(Flexible) ウィップ(Whip)―――!!」



終点、すなはち12の像の中で唯一、()()()()()()()だけが、本物。

腰に差したサーベルを、再度投擲。


回転する刃が向かう先に、示し合わせたようにエリザベスが振るう鞭が伸びる。

先程の場面をリフレインするかのように、光の楯(アイギス)によって阻まれるサーベル。


しかし、()()を追うように飛来した鞭が少女の身体へと巻きつき、盾ごとその動きを封じた。

一方、投擲した後のシルヴィアはサーベルを回収せず、後方へと飛び退っていた。



「・・・お待たせしました!」


「いいえ、タイミングばっちりです!目覚めろ、『()()()()()()()()』―――!!」



降り立った先でぼくを回収し、二人は後輩の元へとUターンする。


白銀の鎧に抱きかかえられ、ぼくは手に持った筒の真の名を唱える。

円筒の内部に刻まれた紋様が光を放ち、刀身が()()()を上げた。


―――()()()()()


放浪の賢者パラケルススは、()()()()()を携えていた。

この剣には1匹の悪魔が封じられており、使役者の命に従い、奇跡を引き起こすのだと言う。


アゾット(Azoth)』、あるいは『錬金術師(パラケルスス)の剣』。

伝説にその名を残す剣を模した一振りを手に、ぼくは後輩の元へと向かう。



「お膳立てはしてあげましたわよ!この私が譲ってあげるのだから、責任持ってブチかましてあげなさい!!」


「勿論です!()()()()・・・!」


『・・・・・・!!』


()()()―――!!」



筒状の刀身を、紺碧の水膜が覆う。

瞬く間に、円筒は突撃槍(ランス)のような形状へと変化していた。


未だ身動きの取れぬ後輩、その細い身体に向けて、ぼくは全身で体当たりを仕掛けるのだった―――!



今週はここまで。

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