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お釜大戦  作者: @FRON
第七章 急襲!怪力博士の巻!!
289/342

∥007-12 怪力兵拾号

#前回のあらすじ:信じて送り出した後輩が変わり果てた姿に・・・!?



[マル視点]



()()()()()()が射す中心で、一人の少女が寝台から起き上がる。


あどけなさを残した美貌、動きに合わせて流れる艶やかな黒髪、細身で均整の取れた肢体。

それは見る者を陶然とさせる、優れた美術品のようであり、同時に()()()()()()()のようでもあった。


日常の象徴のような、()()()

見る者の胸に暖かな光を点す、あの笑顔が。


眼前の人物から、その一切が感じられない。

ビスクドールのような、無機質で硬質な少女。


ガラス玉のような瞳で見つめられ、ぼくは悲鳴のように()()()を叫んでいた。



()()()()()・・・!!」


『・・・?』


「おや?もしかすると君・・・拾号(ジュウゴウ)()()()()!これは奇遇、奇縁。青天の霹靂とは正にこの事!ふむぅ、これはますます以て、世話役としてスカウトしたくなってきたなぁ」



小さな叫びに、少女は一瞬、不思議そうな表情を浮かべる。

ぼくの顔なぞ、一度も見たことが無いといった反応だ。


その様子に愕然とする一方、この状況を作り出した張本人は顎鬚を指で()()()()、としごきつつ、幾度か大仰に頷いて見せる。

そして()()、と柏手を打つと、満面の笑みを浮かべこう言い放つのだった。



「先程の話だが・・・()()()()()()()()!少年、君が我々に付いてくれるのであれば、拾号の()()()()()となる権利を与えてやろうじゃあないか。どうかね?如何なる勢力の手先としてこの場に居るのかは知らんが、魅力的なオファーだと思うのだがねえ」


「パートナー・・・って?」


()()()()()()()というのだよ!何なら初々しく()()()()()に興じるよう、吾輩直々に命じてやってもよい。・・・どうかね!?」


「・・・答える前に、ひとつだけ聞かせて」


「ぅん?・・・ああ、何かね?」


「あーちゃん―――(あずさ)ちゃんに、()()()()()



()()、と奥歯を噛みしめ、眼前の怪人を睨みつける。


数日失踪しただけの筈の後輩。

それが、様変わりしただけでなく、ぼくの事までわからなくなっていた。


とても()()()()()では、こんな変化は起こらない筈だ。

それをしたのがこいつなら、()()()()()()()


内なる怒りを()()()()と蓄える一方、後輩の真相を知ると思しき人物は、()()、と顎の先を撫でる仕草をした後に再び口を開いた。



「―――()()()()


「・・・は?」


「やった事を端的に表すならば、そうとしか言えんなあ。手始めとして催眠誘導による無意識下への刷り込み、更に従順になるよう()()()を済ませた上で、吾輩は本丸となる身体改造へと取り掛かった!全身の経絡(チャクラ)の整流と励起、内分泌系の調整!覚醒により強化された身体能力を増幅、etc(など).etc(など).・・・この場ではとてもとても語り尽くせない程、全身くまなく手を入れたとも!だが―――()()()()()()!!」



あっけらかんと語られる、後輩に対する所業の数々。

信じられないような心持ちでそれを聞くぼくの前で、怪人は両の拳を振り上げながら慟哭した。



()()も!()()も!彼女という()()()()()()()を彩る作品を完成させるには、とてもとても!!アイディアは()()!吾輩の脳髄で()()()を巻いて今か今かと!日の目を見るその時を心待ちにしていると言うのにッ!!嗚呼、次に何を成すべきか?中でも―――」



乱れ髪を掻きむしりつつ、博士は狂気めいた光をその眼窩から零す。

・・・かと思えば()()()、と急に動きを止めると、ゆっくりとこちらへ視線を向けた。



「あぁ、()()が良い。・・・少年、『()()()()()()()()』を知っておるかね?」


()()()()()()()()?」


「古くは欧州に於いて行われた、民間療法の一つだよ。頭蓋骨の()()―――丁度額のあたりに孔を開けて、()()()()()()()()()()。・・・ああ。勿論、施術中に切開した皮膚はきちんと縫合するとも。一般には科学的根拠なしと評されるこの手法だが、超自然的な感覚に目覚めた事例が幾つか報告されていてねぇ。果たして拾号に如何なる変化を齎すのか?吾輩はそれを―――()()()()()!!」



妄言としか呼びようのないアイディア。


それを聞かせる怪人の瞳は、将来の夢を語る少年のようにキラキラしていた。

―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



(・・・()()()()



完全に()()が外れた人間。

ぼくはそれを、産まれて初めて目の当たりにしていた。


世にあまねく倫理、常識。

それらを意に介さず、己の望むままに行う人間。


それは時として、時代を切り開く変革者とも、或いは気の触れた狂人とも呼ばれる。

少なくとも、眼前の人物は―――()()だ。



「うちの後輩を・・・あんたみたいな()()()()()()なんかに、任せておけるもんか!家出は今日限りにしてもらって、彼女は連れて帰ります!!」


「ふぅむ。―――()()()()、か。止むをえまい・・・拾号」


『はい、博士』



当初の方針通り、後輩を奪還する決意を宣言する。

それに対し博士は()()()と指を鳴らす。


音も無く立ち上がった少女が一歩、前へと進み出た。



「圧縮術式1番から3番まで、使用を許可する」


『了解。圧縮術式起動、【魔弾の射手】(タスラム)【金剛石の盾】(アイギス)【有翼の靴】(タラリア)―――救急如(スタンバイ)律令』(・レディ)


「!?」



少女の声が響き、その全身を覆っていたラバーのような質感のスーツが強い光を放つ。

()()()()のラインが走った跡には、右手、左手、両足首を彩る()()()()が浮かび上がっていた。



「少々、あの少年にお灸を据えてやり給え。くれぐれもやり過ぎないようにな?」


『はい。オフェンスコンディション1・非殺傷。(ノンリーサル)目標、個体名丸海人(マルカイト)。怪力兵拾号―――()()()()()()()



無機質な声が、戦端の開始を宣言する。

寝台の前に佇んだままの後輩と、正面の『怪力(くゎいりき)博士』とその側に侍る黒髪の女性。


どちらを相手にすべきか?


本来の目的通りなら、正面の怪人をやっつけて後輩を連れ帰るべきだろう。

しかし、どうやら今の彼女は()()()()()()()()らしい。


彼女の恐るべき戦闘力は、何度か同行した任務(クエスト)や北陸での一件で目にしたとおり。

とてもじゃないが、真正面からぶつかって無事でいられる相手ではない。


難しい選択を迫られる中、決断する間もなく後輩の―――

否、『怪力兵拾号』による攻撃が、ぼくの身に降りかかるのだった!




今週はここまで。

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