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お釜大戦  作者: @FRON
第七章 急襲!怪力博士の巻!!
283/345

∥007-06 後輩の姿を求めて(後)

#前回のあらすじ:ケバブおいしいよね



[明(あきら)視点]



「・・・マルがまだ、【()()()()()()()()()だって?」



捜索三日目。


浅い眠りから醒め、【揺籃(ようらん)寮】の一室に来た私は、だしぬけに妙な話を聞かされそんな呟きを漏らした。

つい先刻、マルこと丸海人(マルカイト)が【イデア学園】の一角にて、その姿を目撃されたというのである。



「一応聞いておくが、単に()()()()()()()()()()()()()()()()()、って訳じゃないんだよな?」


「その・・・。他のメンバーの報告だと、()()()()()()()()()()()そうで」


「多分、()()()()()()()んじゃないかと・・・」


「えぇ・・・?」



改めて説明しておくと、ここ、【イデア学園】は【夢世界】(ドリームランド)という、一種の異世界に存在する。


()、と名の付く通り、本来の【学園】は()()()()()()()()()()な立地にある。

しかし、ヘレンがそこを調()()した結果、現在の【学園】は現実世界から丁度、()()()()()()()()()()()()()()()


グリニッジ標準で現すと、GMT 00:00の時点で【学園】へ移動すると、こちらでは()()となる換算だ。

マルのような日本出身の【神候補】はそれを実感することは少ないが、西欧~南北米大陸のような()()()()()を拠点とするメンバーにとって、【学園】は()()姿()()()()()なのだ。


先程の報告をしてくれた二人は、どちらも『Wild(ワイルド) tails』(テイルズ)のメンバーだ。

欧州を拠点とする彼女達は、夜中の捜索を率先して担当してくれていている。


そのこともあって、()()()()()()()()()()()()の姿が余計に目についたのだろう。



「・・・わかった。そっちは、私の方で何とかしておく。一応聞いておくが、(あずさ)の居場所は判らずじまいのままか?」


「ええ・・・。あの子、普段から()()()()出歩いてるから心配で・・・」


「クランメンバーで付き合いのある人達も、みんな気にしてるみたいなんです」


「・・・そうか」



心配そうに溜息をつく少女達に相槌を返すと、()()と部屋の中へ視線を走らせる。


普段空き部屋となっているこの場所は、急遽、模様替えされ即席の『羽生梓(はにゅうあずさ)捜索本部』と化していた。

部屋の中央には巨大な円卓が置かれ、その上には淡く輝く【学園】の見取り図が浮かび上がっている。


光のラインで形成された見取り図の上には無数の光点が瞬き、そのうちの幾つかはゆっくりと移動していた。

(かなえ)の能力である、『伏龍(フクリュウ)盤』(バン)だ。


円卓の周囲には、幾人もの者達が光点の動きを目で追いながら筆を走らせ、出来上がったメモ書きを卓上に貼り付けて行っている。

()』と共鳴する【魂晶】(ジェム)を介し、捜索班から入る報告を順次、反映させているのだ。


現在、見取り図の()()()()()には、時刻と捜索結果を記したメモが無数に貼られ、円卓の上を彩っていた。


急ごしらえだが、この仕組みは『Wild tails』と明・叶の両名が協力し、この2日で造り上げたものだ。

こうして情報を積み上げてゆくことで、遠からず梓の行方を探し当てる事も可能であろう。


それを確認すると、私はもう一度頷く。



「・・・少し出てくる。後の事は、そこの()()にでも引き継いでおいてくれ」


「ええっ!?お、お姉ちゃん。一体何処に・・・?」


()()()だ」



捜索本部の立ち上げは終わった。


情報集積の要である弟が居れば、この場の維持には問題ないだろう。

そう結論付けると、私は出入口へと歩き始める。


その背を追いかけようとする弟を()()()と見ると、そんな言葉を残し、亜麻色の髪の少女は部屋の外へと消えて行くのだった―――




  ・  ◆  ■  ◇  ・




[マル視点]



・・・空が白んで来た。

あーちゃんはまだ見つからない。


昨日、決定的な手掛かりと思われる証言を得てからずっと。

ぼくは足を棒にして、この辺りを歩き回っていた。


その間、声を掛けた通行人はそれこそ無数に上る。

―――が、有力な手掛かりはあれ以降、()()だ。


足下から、主を心配するような、()()()()()()が上がる。

・・・が、それは今、ぼくの耳に届いてはいなかった。


視界に入る人影を追いかけ、声を掛けて、後輩の行方を尋ねる。

今のぼくはただ、それだけをひたすら繰り返している。



「悪いけど―――」「知らない―――」「後にしてくれ―――」



半ば朦朧となった意識の中。

甲高い耳鳴りに紛れそうになる声へと、必死に耳を傾ける。


()()()()

()()()()()()()()()()()()()


()()()()()()()()()()()()()()()()()()

でも―――()()()()()()()


あーちゃんはまだ見つかってないんだ。

彼女が消えてからもう二日、タイムリミットは近いと見て間違いないだろう。


今は少しでも、手掛かりを集めないと―――。



「―――い、返事し―――」



横合いから誰かに声を掛けられた―――ような、気がした。


一瞬、それが知っている誰かの声に思え、足を止めようとする。

だが、それが()()()()()()()()()事にすぐ気付き、すぐに歩みを再開する。



「ごめんなさい、後にして・・・あーちゃん・・・ブツブツ」


「・・・()()()()()()()()()?マル―――()()()!!」


「!?」



ぼくは胸の内で密かに落胆しつつ、謝りながらその場を後にした・・・が。

歩み出したその一歩は、有無を言わさず肩を掴んだ力強い手によって、物理的に阻まれていた。


視野が()()()と180度回転する。

()()()()()()流れ、止まった視界の中心には、ここ数日の間に()()()()()()()()()()があった。



「明さん・・・?」


「ああ、お呼びの通りの明さんだ。・・・そう言うお前はまた、()()()()()だな?目つきが尋常じゃないし、唇も()()()()だ。ちゃんと水分取ってるか?休止を挟みつつ進めないと、見つかるモンも見つからんぞ」


「え、と・・・」



呟いた通り、目の前には明さんの姿があった。

いつの間に現れたのだろう、彼女はいつも神出鬼没だ。


そんな脈絡のない状況にぼくは困惑しつつ、ためらいがちに口を開く。

―――今はそんな事より、()()()()()()()()



「・・・ごめんなさい。ひょっとしたら大事な話があるのかもだけど、今、ぼく急いでるんです」


「・・・結構な人数でこの二日、【学園】中を探し回っても見つからないんだ。今更、お前が無理したところで状況は変わらんぞ?」


「・・・はい」


「―――と、言ったところで聞く耳持たんか」


「ごめんなさい」



()()()、と短く頭を下げ、きびすを返して歩き出そうとする。


背後で何か言っているような気がするが、後だ。

今はとにかく、得られた手掛かりを元にして、一刻も早くあーちゃんを探さないと。


・・・そう、口の中で一人ごちていると、()()()と伸びてきた何者かの手によって、両側から頭を掴まれた。



「じゃあ、ぼくはもう行くんで―――」


「よ、っと」


「!?」



抵抗する間もなく、そのまま()()、と身体ごと後に引き寄せられる。


()()()()

後頭部が何か、()()()()()()()()()()()()によって包まれた。


反射的に身をよじって逃れようとすると、()()が動きに合わせ変形する。

今までに感じた事も無い感触に、ぼくの全身は瞬時に凍り付いたように固まってしまった。


振り返るわけにも行かず、声だけで背後の人物へと呼びかける。



「・・・あの、明さん?」


「どうした?」


「つかぬ事を伺いますが、まさか。後頭部に当たってるのって・・・」


()()()



恐る恐る発した疑問に、()()()()と押し殺したような笑いが応える。


こちらからは見えないが、多分―――

いや確実に、ぼくの後頭部は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


それまで、霞がかかったように朦朧としていた意識が、()()とクリアになる。

そして逆に、ぼくの思考はすっかり()()()()()()()()()()


()()と顔に血が上り、鼓動は早鐘を打ち始める。


()()()()()()、とか、()()()()()()()()、とか。

胡乱な思考が浮かんでは消えてを繰り返す間も、身体は微動だにできない。


そうして目を白黒させていると、ぼくの様子に満足げに頷いた彼女は訥々と語り出した。



「よしよし、思った通り。()()()()()()、珠には役に立つもんだな。わかってるとは思うが・・・()()()()?動くと()()擦れて、困ったことになるからな」


「・・・()()!?」


「ご想像にお任せします。―――()()



そして声のトーンを落とすと、彼女は一つの結晶を取り出し、ぼくの耳に宛がった。

爪先程の小さな結晶は、()()()()()を宿し、ほっそりとした指の中で煌めいている。


やがて、結晶の煌めきは()()()()と無数の人が囁くような声となり、ぼくの鼓膜を揺らすのだった。



「そのままでいいから、聞いてくれ。・・・今、【学園】中で梓の捜索が行われてる。協力者は彼女のクランメンバーと、『明峰(メイホウ)商店』のツテで私が声を掛けた連中だ。24時間体制で各地から上がる報告を取りまとめて、全力でその行方を追っている所だ」


『・・・南エリア・・・目撃情報ナシ・・・』『・・・で・・・らしき人物を見たと証言が・・・』


「・・・これ、『泥艮』(ディゴン)と戦った時と()()―――?」


「そうだ」



更に耳をすますと、それは部屋の中に響く、無数の声であることが判る。

囁く声のその総てが、行方知れずの後輩を探し、その行方に関する情報を告げていた。


そこまで耳にして、ぼくは()()()()を思い出す。


会取叶(えとりかなえ)

背後に居る彼女の弟が、数多の意志と声を繋ぎ、北海の大決戦において()()()()()を示した事を。



「引っ込み思案のあいつが、友人の危機にもう一度、自分の足で立つ決意を固めたんだ。【揺籃寮】を中心に、今、【学園】全土に散らばる人々の努力と情報が集約されている。・・・いいか?()()()()()()()()()


「一人じゃ、ない・・・」



オウム返しに呟くと、その事実が()()()()と心の中に染み入ってきた。


()()()()()()()()()

明さんや、叶くん、他にも多くの心強い味方が、一緒になってあーちゃんを探してくれている。


()()を理解すると、代わりに全身が鉛のように重くなった。

瞼が()()()、と自然と落ちてくる。


ああ―――ぼくは、()()()()()()()()()()



「沢山歩いて疲れたろう?後は任せて、お前はもう休め」


「ごめん、なさ・・・あり、がと―――」



急速に薄れゆく意識の中。

それだけ言い残し、ぼくは眠りについた。


()()()、と全身が弛緩すると、()()()()()を残し、小さな身体が消失する。

そこまで見届けると、亜麻色の髪の少女は少年の居た腕の中に向かって、穏やかな声で語り掛けた。



「謝らなくたっていいわ。貴方はいつも頑張ってるもの―――」



普段の彼女を知る者が聞けば()()()()()()()()、しかし、()()()()()()()()()()()

そんな優しい声は朝霧の中に消えて、その場には仮面によって素顔を隠された少女が、一人。


やがて、少女もまた音も無く立ち去ると、その場には何の変哲も無い、早朝の風景のみが残されるのだった―――


今週はここまで。

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