∥007-05 後輩の姿を求めて(中)
#前回のあらすじ:猫クランの人も捜索に協力してくれるみたい
[マル視点]
「人探しかい?見たこと無い子かな・・・」
「ちょっと心当たり無いねぇ」
「昨日からどこにも居ないんだって?その子にだって、一人で出かけたい時ぐらいあるでしょ―――」
捜索二日目。
ぼくは【学園】の中をマーケットを中心にあちこち歩き回りつつ、あーちゃんの行方を聞いて回っていた。
昨日に続き二日目となるが、初日は探し人の似顔絵すら無い状態だったせいか、全て空振り。
そして今日。
現世から彼女の写真(小ぶりな似顔絵に変換済み)を持ち込み、満を持しての聞き込み開始。
既に昼前を回っているが、ちらほらと証言を得られてはいても、決定的な手掛かりとは言い難い状況だった。
「ふう、一休みっと。・・・一体何処に行っちゃったのさ、きみ」
『なう~~~・・・』
もう何度目になるかわからない空振りの後、建物の壁に背を預けて小休止を取る。
小さく背中を丸め、深いため息をつくぼくの足下から、気遣わしげな鳴き声が響く。
視線を落としてみれば、まるいグリーンの瞳がふたつ、じっとこちらを見返していた。
今日の捜索はおりんちゃんも一緒だ。
少し腰をかがめ、和毛に包まれた小さな頭を撫でる。
気持ちよさそうに目を細める彼女の姿にちょっとだけ口元を綻ばせると、ぼくはよっ、と掛け声と共に立ち上がった。
「・・・そろそろお昼だし、露店で何か買い物しつつ探そっか?」
『にゃあ』
おりんちゃんに一声かけ、表通りへと足を向ける。
マーケットの対岸に当たるこの辺りは、道沿いにちらほらと小規模な屋台が並んでいる。
今も、物売り達が通行客に向けて、威勢よく呼び込みの声を上げていた。
そのうちの一つ、サンドイッチ風の料理を扱う店に当たりを付けて、その前に並ぶ。
左腕の根本近くに嵌まった腕輪に右手をかざすと、菫色の光が僅かに煌めき、掌の上に親指の爪くらいの結晶体が転がり落ちた。
【神候補】なら誰でも身に着けているこの装飾品―――【戴冠珠】。
これは【神候補】としての身の証であると同時に、サイフとしての機能も兼ねていた。
【学園】において通貨として使われる【魂晶】は、この内部に収納することができるからだ。
列がはけて、露店の白いテーブルクロスが見えるようになる。
前に進んだぼくは、中東風の衣装に身を包んだお兄さんの掌に、先程取り出した【魂晶】を落とした。
代わりに、湯気を上げる焼きたてのラム肉を挟んだ、風変りなサンドイッチを受け取る。
お釣りとして、より小ぶりな結晶を2、3個受け取りつつ、ぼくは視線を走らせた。
・・・テーブルに立てかけられた案内板を見るに、どうやらこれはケバブサンドという料理らしい。
「ありがと!・・・あ、ついでなんだけど、この子のこと最近、何処かで見ませんでした?」
「どうだったか?・・・もう一つ、買ってくれたら思い出すかもな」
「え~?しょうがないなぁ・・・ほいっと」
「まいどあり。似顔絵の娘なら、2・3日くらい前に見かけたと思うぞ」
「・・・本当に!?」
ついでとばかりに、あーちゃんの写真、もとい似顔絵を見せて反応を見る。
商人らしく、ちゃっかり情報量を要求されてしまったが、追加の【魂晶】を握らせることで無事、商談成立。
似顔絵の前で眉を寄せると、店主はぽつりとそんな呟きを漏らした。
予想外の反応に、思わず小さく叫びを上げるぼく。
この辺りでの目撃証言は、これが初だ。
すかさず手帳を取り出すと、万年筆片手にぼくはお兄さんへと詰め寄った。
「それはいつ、何時くらい!?一人だったか複数人だったか、どんな様子だったか詳しく・・・お願いしまっす!!」
「おお!?何だ何だ、急に。・・・その娘なら、一人で夕暮れ時くらいに、ふらふらとここの前を歩いてったぞ。様子がおかしいから、何となく覚えてたんだ。―――ああ、思い出した。2日前だよ、その娘を見かけたのは」
「・・・!!」
ついに得られた有力な手掛かりに、大きく目を見開く。
あーちゃんの失踪が判明したのが、昨日。
その前日の夕方ともなれば、それは彼女が姿を消した、丁度その時の出来事かも知れない。
ぼくは店主の両手をがっしと掴んでブンブン振ると、2つ目のケバブサンドを引っ掴み走り出した。
「待ってて、あーちゃん・・・!!」
『にゃっ!』
「お、おい・・・?お客さんー!お釣りー!!」
一目散に走り出したぼくの後を、慌てておりんちゃんが追いかける。
その後ろ姿を更に、若き店主が上げた声が追いかける。
しかし後者は届かず、雑踏の中へと消えるのだった―――
本日はここまで。




