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お釜大戦  作者: @FRON
第七章 急襲!怪力博士の巻!!
281/342

∥007-04 後輩の姿を求めて(上)

#前回のあらすじ:戦前の亡霊があーちゃんを攫った犯人・・・っ()()()!?



[マル視点]



「・・・じゃあ、私は戻りますがー。先程、お伝えした事を忘れないようお願いしますね?くれぐれも、(あずさ)さんを見つけても無暗に突撃せず、必ず私に連絡!ですからねー」



そう言い残し、()()()()とヘレンちゃんの姿が消える。

昼前となった管理人室に束の間、静寂が下りた。


先刻、ヘレンちゃんの口から敵の『()()』についての注意があった後。

今後の行動指針についてのお話が続いて、()()


ぼくの手の中には、半透明のプレート―――『任務』(クエスト)でも良く見る()()()()が収まっていた。


ガラスでもプラスチックでもない、不可思議な硬質の物質で構成されたプレート。

それは、先刻彼女から手渡された()()()()()()である。


これを持った状態で、ヘレンちゃんへ語り掛ければ彼女へ()()が伝わる―――の、だそうだ。

ぼくに限らず、部屋に集まった全員が同じ物を渡されていた。


ぼく、会取(えとり)姉弟、エリザベス(Elizabeth)嬢、シルヴィ嬢。

合計5枚分のチケットが、ぼくたちの手に渡っている計算になる。



(さて―――()()()()()()?)



そんな呟きを、小さく口の中で一人ごちる。


実行犯と思しき『怪力(くゎいりき)博士』。

そして、その背後に潜むという、()()()()()


あーちゃんを攫ったとおぼしき連中の素性については判明した訳だが、逆を言えば()()()()だ。

結局のところ、ヘレンちゃんでも後輩の居場所は特定できずじまいである。


彼女の捜索としては、現状ほぼ()()()()となる。

ぼくに出来る事はと言えば、地道に足を動かして聞き込みを続けるくらいだろう。



「ふう。埒があきませんわね・・・()()()()!」


「はい、お嬢様。既に、『Wild (ワイルド)tails』(テイルズ)の主要メンバーには声を掛けてあります」


「ご苦労様ですわ」


「・・・どうする気だ?」


()()()()()()()()()()()()・・・!今回の一件、もはや私のクランに対する明確な()()ですわ。『怪力博士』だか、何だか知りませんが・・・。総員を以て草の根分けてでも探し出し、きっちりお仕置きして差し上げますわよ!!」



唐突に立ち上り、握りこぶしを振り上げ金髪の令嬢は啖呵を切る。

つい先程、ヘレンちゃんから()()()()()()()()、と忠告されたのも、耳に入っていないと言わんばかりだ。


そのまま()()()()と、出入口まで歩いて行こうとする彼女。

その後ろ姿に向けて、明さんが()()()を掛けた。



「言いたいことは判るが、落ち着け。手掛かりの一つもナシに動くよりは、私達で協力して―――」


()()()()()!実行犯としての疑いは晴れましたが、貴方がたを信頼した訳では無くってよ?協力するのならどうぞ、そちらで頑張ってくださいまし!」



それではごきげんよう。


―――と、綺麗なカーテシーを見せると、()()()ときびすを返しエリザベス嬢は出て行ってしまう。

取り付く島もないその様子に唖然としていると、続いて、女性家令(スチュワード)が音も無く立ち上がった。


()()()()と靴音を響かせ、主人に続き出入口へと歩き出す彼女。



「待ってくれ。頼むからあんたからも、エリザベスに―――」


「―――お嬢様の手前申し上げませんでしたが、貴方達に関してはわたしも()()()です。特に、疑いを向けられる身でありながら()()()()()()()()()()()()()()()()


「・・・!」



追いすがるように歩み寄った亜麻色の少女に、拒絶の一言が浴びせられる。

視線を上げれば、銀縁眼鏡の奥からブラウンの瞳が、冷ややかな光を湛えこちらを見つめていた。


その視線の冷たさに、思わず()()()と身をすくめる。

次いで、ぼくは無意識に隣に立つ少女を見上げていた。


女性としては長身な彼女。

その素顔は現在、()()()()()によって固く覆い隠されていた。


言われるまでもなく、話し合いの場にあって()()()()()()()()では相手の信を得る事は難しい。

それは至極、当然の指摘である。


だが―――()()のだ。


ぼくは、彼女が素顔を隠すその()()を知っている。

そこに相応のリスクがあるからこそ、真剣な場であるこの時においても、彼女は面を()()()()()()のだ。


それを知る第三者として、ぼくにはこの場を収める義務がある。

密かに意を決すると、ぼくは立ち上がり声を張り上げた。



「待ってください、()()()・・・!!」


「全くもって、あんたの言うとおりだ。・・・すまなかった。()()()()()()()()()()()()()()?」


「・・・・・っ!!!」



小さく、息を飲む音が響く。


ぼくの決意をよそに、明さんは実にあっさりと面を外していた。

一同の視線が集う中、素顔のまま()()()()と頭を下げる彼女。


その姿を直視したまま、綺麗なブラウンの瞳を大きく見開き、シルヴィ嬢は硬直していた。


―――()()()()()()()()()()()

会取明(えとりあきら)という女性の美貌は、目にする者総てを魅了せずにはいられないのだ。


それをわかっていてもなお、巻き添えを食う形でしばし放心するぼく。

ようやく正気を取り戻し、慌てて()()()と頭を振って活を入れなおすと、ぼくは再び口を開いた。



「・・・ぼくからも、改めて謝罪させて下さい。()()()()()、明さんには素顔を出せない事情があるんです。今更だけれど、先にきちんと説明しておくべきでした・・・」


「なる・・・ほど。()()()()()()



そう呟く間も、シルヴィの視線は明の顔に貼り付けられていた。

口をついて出る言葉も、熱に浮かされたようにどこか浮ついている。


無理も無い。


予備知識のあるぼくでさえ、気を抜けばついつい、視線が吸い寄せられそうになるのだ。

女性家令は再び()()()と輝く美貌を見つめた後、()()と気付くと慌てて眼を瞑り、大きく息を吐き出した。



「・・・先日、ちょっとした()()()()が原因で愛用の眼鏡を無くしてな。失礼とは承知の上で、こうして顔を隠させて貰っている。気を悪くさせてしまったなら申し訳ない、()()()()だ」


「いえ。・・・こちらこそ、申し訳ございませんでした。その、事情はよく理解できましたので―――()()()()()()()()()、と」


「ありがとう」



シルヴィ嬢の言葉を受けて、再び申面を身に着ける明さん。


その素顔が覆い隠される瞬間、()()、と残念そうなため息が洩れる。

完全に無意識だった()()に、ぼくとシルヴィ嬢は()()と顔を見合わせると、恥ずかしそうに()()()とそっぽを向いた。


()()()、と誤魔化すような咳払いの後。

僅かに頬を紅潮させた女性家令は改めて、遠慮がちに口を開くのだった。



「・・・色々、納得が行きました。これは確かに、隠しておかねば()()()()がありますね・・・。ご愛用の眼鏡を無くされたというのは、()()()()()()―――?」


「ああ。既に耳にしているかもしれないが、先日マーケットであった騒動は、()()()()()だ」


「心中、お察しいたします」



明さんが口にしたのは、湖上のマーケットで起きた、白昼堂々の眼鏡強奪事件の事だ。

主犯である()()()()()()()に見つかる事態を避けるため、明さんは未だ、うかつに外を出歩けない状況が続いている。


奴によって奪われた眼鏡には()()()()()があり、彼女の美貌を周囲から隠すのに役立っていたからだ。

現在、彼女が身に着けている京劇風のお面は、その()()()という訳だった。


あの時の一件は、【学園】の中でも随分噂が広まっているらしい。

そうした経緯で、シルヴィ嬢の耳にも入っていたようだ。


それを肯定した後の、彼女による気遣わしげな一言に、場の空気は先程の緊張感からようやく解放される形となった。



「・・・梓はよく、この寮に遊びに来ていてな。その人となりは、私も良く知っている。こちらとしても一刻も早く、彼女の行方不明を解決したいと思っているんだ。私に出来る事があれば、何でも言ってくれ」


「ありがとうございます。その・・・、前言を翻す形とはなりますが、ご協力をお願いしても?」


「勿論だ」


「良かった・・・!」



目の前で、二人の手が固く結ばれる。


雪解けの形となった両者の姿に、()()と胸を撫でおろすぼく。

フィリップス(Phillips)家の家令であり、クラン『Wild tails』の中核メンバーである彼女の協力が得られたのは大きい。


エリザベス率いる令嬢チームと、ぼくら【揺籃(ようらん)寮】チーム。

ただ闇雲に後輩を探すのではなく、この両者が手分けして捜索した方が、効率もぐっと上がるであろう。



「私の方でも、マーケットの知り合いを中心に情報を集め始めている所だ。何かわかり次第情報を共有しようと思うが・・・構わないか?」


「有り難く存じます。此方からも、クランメンバーが集めた情報を伝えさせて頂きますね」


「了解した」


「ぼくも微力ながら協力します。必ず、あーちゃんを見つけ出しましょう・・・!!」



三者三様に、しかし同じ目的を持って、決意を新たにする者達。

その後ろで遠慮がちに握り拳を固める(かなえ)くんを含め、この時より()()()()()()()()は【学園】全域に向け、大々的に展開される事となった。


()()()―――


その行方の手掛かりを掴む事すらできず、いたずらに時は進む。

忽然と姿を消した梓、その背後に見え隠れする怪人の暗躍。


少女の行方は何処に?

ヘレンの力すら欺く『()()』とは一体?


舞台は翌日、再び【揺籃寮】から始まる―――


今週はここまで。

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