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お釜大戦  作者: @FRON
第七章 急襲!怪力博士の巻!!
278/344

∥007-01 羽生梓、失踪

#前回のあらすじ:用語解説おわり!



[マル視点]



「あーちゃんが・・・()()()()!?」



管理人室に、ぼくの上げた素っ頓狂な叫びが響く。


昼下がりの室内には現在、ぼく、(かなえ)くん、(あきら)さんの面々があつまっている。

その足下にはぼくの愛猫たる()()()ちゃんが寝転び、慌てた様子の主人を見上げ、不思議そうな表情を浮かべた後、再び夢の世界へと戻って行った。


一方、テーブルを挟んだ反対側には、ぼくらと向かい合う形で二人の来客が着座している。

金髪碧眼のゴージャスな令嬢、エリザベス(Elizabeth)お嬢様と、その隣に佇むボーイッシュな()()()()()だ。


後者のほうは以前何度か目にしたことのある、あーちゃんとエリザベス嬢と同じ()()()に属する人の筈だ。

きちんとした自己紹介をし合ったことは無い筈なので、互いにこれがほぼ初対面となる。


紺色を基調とした、カッチリした女性用スーツに身を包み()()と背筋を伸ばし、木製の椅子に腰かけていた。

その姿は服飾店でディスプレイされるマネキンのように、硬質な美を湛えている。


年は大学生くらいだろうか?

隣に座すご令嬢とはまたタイプの異なる、なかなかの美人さんである。


そこまでを()()と観察し終えると、ぼくは改めてテーブルの向かいに陣取る来訪者へと向き直った。



「それ、本当なんですか・・・?」


「何を白々しい・・・。マルカイト!貴方がそれを知らない筈が無いでしょう!さあ、私のキャシー(Cathy)を何処へ隠したの!?素直に白状しないと―――()()()()


「・・・失礼」


「「「!!?」」」



ぼくの上げた疑問の声に、やたらヒートアップした様子の令嬢が()()()と椅子を引いて立ち上がる。

そして()()、とこちらを真っすぐ指差すと、怒髪天を突くといった様子の令嬢は啖呵を切り―――


その直後、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


皆が目を丸くする中、膝から崩れ落ちる金髪の令嬢。

その脇から腕を差し込んで立たせると、黒髪の女性はそのまま椅子に座らせる。


()()()()と白眼を剥いたお嬢様をよそに、静かに着座した黒髪の麗人は()()()()、と小さな眼鏡の位置を直す。

そして、つい先程の一幕など無かったかのように、穏やかな口調で語り出すのだった。



「・・・お嬢様がご迷惑をお掛けいたしました。改めて、フィリップス(Phillips)()()シルヴィア(Silvia)テイラー(Taylor)です。以後、お見知りおきを」


「あ、はい。丸海人(マルカイト)です、こちらこそご丁寧に・・・。ところで、そのー。()()()()・・・?」


「お偉いさんの家で、使用人の統率やら資産管理を担当する人の事だ。執事と似たようなものだが、あちらより担当する仕事の範囲がやや狭いらしいな」


「そのご認識で相違ないかと。的確な補足、誠にありがとうございます」



聞き慣れない肩書に首を捻っていると、横合いから助け舟が入り納得する。

明さんの言の通り、テイラー家はフィリップス家の直臣として、百年以上前よりその働きを、影に日向に助け続けてきた家系である。


そして二人は幼少期より、姉妹同然に過ごしてきた関係でもあった。


激情家で突っ走りがちな主と、冷静沈着で気配り上手の従者。

両者は付かず離れず、現在に至るまでその関係性は続いている、という訳だった。



「それでは僭越ながら、わたしから事の経緯を説明させて頂きます。発端となったのはきょう、お嬢様がこちら―――【イデア学園】へ到着してよりの事です。何時も通り、お嬢様はキャシー・・・(あずさ)様の自室を訪問しました。しかし、クランハウスにある彼女の自室は()()()()のです」


「何処かへ出かけてた、って訳じゃなくて?」


「はい。その可能性は真っ先に考えましたが、何処を探しても結局、梓様は見つかりませんでした。そこで、クランメンバーへ聞き込みを行ったところ、昨日、()()()()()()()()()()()()()()に誰も、その姿を見ていない事が判明したのです」


()()()()()()・・・!?」



彼女の言葉に、あの日、()()()()()()()()()()()()()()()()がフラッシュバックする。

雑踏の奥、あの時目にした彼女は、()()()()()()()()と連れ立って親し気に歩いていた。


―――結局、あの男性が何者だったのか、彼女との関係は如何なる物だったのか聞き出せていない。


体調不良のこともあり、彼女の口からその答えを聞く機会が得られなかったのだ。

そこへ来ての、()()()()である。


ぼくは()()()()()を覚えつつ、再び口を開いた。



「・・・行き先がマーケットなら。単純に遊びに行ったか、買い物に出かけただけ、って可能性は無いの?」


「それは真っ先に考えました。ですが―――」


「キャシーはここ数日・・・()()()()()()()()()のよ!微熱が続いてて苦しそうで、原因もわからず歯がゆい思いを味わっていたわ。それなのに、ベッドを抜け出して()()()()と出歩くだなんて・・・!!」


「・・・!?」



エリザベスの口から語られる後輩の現状に、思わず言葉を失ってしまう。

ぼくが直接話をしようと電話した()()()羽生(はにゅう)のおじさんが語ったのもまた、()()()()()()()()()()()()()()、というものだった。


これは、()()()()()()()()()


ふと沸き上がったその疑問に、ぼくは突き動かされるようにして、現実世界における後輩の現状を語っていた。

訪問者二名は互いに顔を見合わせ、困惑を露にする。



「あの子が、現実世界でも同じように・・・!?」


「一体何が起きてるというの、キャシー・・・」


「・・・()()



懊悩を露に友人の身を案じる二人に、それまで事態を静観していた人物が動く。

なお、その表情は(サル)を象った面によって覆い隠されており、その場の人間に窺い知る事は出来なかった。


申面の少女―――明はしばし考え込むと、片手を上げてこう切り出す。



「失礼。不安も尤もだが、今はまず梓の()()()()()()()()()()じゃないのか?」


「それが、わからないからこうして―――!」


「お前達、何か忘れてないか・・・?【学園】には、常に私達の動向に目を光らせている、()()()()()が居るって事を」


「それって・・・!」



明さんの言葉に、ぼくは思わず小さく叫びを上げていた。


いつでもどこでも現れる、頼れる存在。

夏色少女ことヘレンちゃんはいつだって、ぼくたちの事を見守ってくれているのだ。


神出鬼没にして全知全能、真なるかみさまである彼女の手に掛かれば、判らない事など何一つ無いであろう。


あーちゃんが姿を消した時の状況も、現在の居場所に至るまで、その全てがすぐに判明する判る筈だった。

ぼくたちはその事実に色めき立つと、早速ヘレンちゃんを呼ぶべく、その名を叫ぶのだった―――


今週はここまで。

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