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お釜大戦  作者: @FRON
第六章 震撼☆フレーズ!!
269/342

∥006-17 恋する瞳と冷えた心

#前回のあらすじ:粗暴なクズの正体がアイドルスターだって・・・!?



一言で表すのなら、その少女は『()()』であった。


通り過ぎれば、男女問わず振り向かずにはいられぬ美貌。

均整の取れたプロポーション、卓越した身体能力、それらを扱う優れた頭脳。


その力全ての源泉は、彼女の()()にあった。


()()()()()と呼ばれた地にて生を受け、土着の伝承にある『神子(みこ)』の片割れとして育った少女。

彼女達は人でありながら、同時に名も知れぬ高位神性の血を継ぐ、()()()()の存在でもあった。


弟は既に、【神候補】として己の力に覚醒し、英雄の卵としての力を遺憾無く発揮し始めている。

その一方、対となる少女に与えられたのが、望むのであれば世界の全てを手にすることすら可能とする、『傾()の美女』としての力であった。


故に、少女は誘蛾灯の如く、周囲の人間を異性・同性に問わず引き寄せた。


しかし―――高嶺の花とは良く言ったもの。

良識ある人間であればある程、魔性の魅力を前に躊躇い、二の足を踏んでしまう。


結果として、自制も外聞も知らぬいわゆる()()()()ばかりが、少女を求め甘い蜜にたかる蟲のように群がった。

それを厭い、自らの姿を()()()()ようになったのもまた、仕方のない事と言えよう。


そして、現在。


件の少女は市井に交じり、あたかも一介の並人と同じであるかのように過ごしている。

それを実現せしめているのは、彼女が身に着ける秘宝―――人造の神器たる『宝貝』(パオペエ)の力であった。


()()()()、更に()()()()と、()()()()()()()

それら全ての効果を、()()()()()()()()()()へ適用するという、破格の能力。

更には、レンズ自体が反射率を調整し、平時と同等の視野を確保しつつ、外からの視線をシャットアウトする特殊加工が施されていた。


これら全てを、単一の器物として創造しえるのは、かの『()()()()()』ただ一人。

そして、【学園】広しといえど、これ程の逸品は他に二つとして存在しなかった。


知ってか知らずか、()()を少女の下より奪い去った男が居た。

その結果、果たして()()()()()()()


正しく、神のみぞ知る―――で、ある。




  ・  ◆  ■  ◇  ・




[明(あきら)視点]



はい、只今ご紹介に預かりました()()()()会取明(えとりあきら)です。

魔性の女(())。


はぁ。


思わずモノローグで溜息が出てしまうのも仕方のない事で、それくらい今の状況はばかばかしく、下らない事態となっていた。

端的に表すのなら、()()()()だ。



「・・・()()!いやぁ、君が()()になってくれて良かったよ~。それじゃあいざ行かん!愛る者同士の逃避行(ランデブー)へ!!」


()()()、嫌ですわそんな、恥ずかしい・・・」



()()()()()()()()()


それに続き、()()()と伸びてきた手が、ジャージに包まれた肉付のよい臀部を撫でまわそうとする。

反射的にそれを引っぱたこうと右手を閃かせる―――が、逆に捕まり()()、と引き寄せられてしまった。


右半身が()()()()密着する体勢となり、間近から生温い息を吐き掛けられる。

いわゆる()()()()()()()()の体勢を取らされ、嫌悪感に一瞬身体が固まった。


思わず顔をしかめそうになるのを必死で堪えつつ、私は()()()()と道を進んでいく。

全く不本意ながら、身体能力においてはこいつに全く敵いそうにない。


現在進行形で、吸虫の如く右半身に張り付いているこの男。

何を隠そう、先程の場面で遭遇した、あの()()()である。


―――黄小天(ホァンシャオティエン)


()()だか()()()だか、そんな名のアイドルグループを率いる人物、()()()

新聞でも芸能欄なぞ流し見すらしないが、そんな私でも耳にしたことのある程のビッグネーム。


それが何故、態々私の()()()()()を奪い取ったのか?


その理由かどうかは定かではないが、この男、元々私が『()()()()()』としてマークしていた相手である。

【学園】に於いてその素行は悪名高く、絶対に関わりたくない人物として、常日頃から警戒していたのだ。


そんな相手と突発的遭遇を果たすとは、全くついてないにも程がある。

それだけならばまだしも、私の生命線と言える()()を真っ先に奪われるとは、青天の霹靂とは正にこの事。


奪い返そうと重ねた努力も空しく、未だ愛用の変装道具(グラス)は犯人の手中にある。

何とか奪還したい所だが、()()()、この手合いは取り返そうと必死になればなるほど、歪んだ自己肯定感を増大させる傾向にあった。


中学校時代の()()()()とか、女子高時代にしつこく下らないイヤガラセを仕掛けてきたグループの()()()とか。

嗚呼、思い返すだけでも胸が()()()()してくる。


(―――あの糞虫どもめ)


そんな回想はともかく、こういう手合いの対処は一切構わず、無視を徹底するのが正解である。

・・・()()()()、それをするとこいつは多分、()()()()()()()()()()()だろう。(身に覚えがある)


()()()()()


あれは先生に特注で作って貰った一点品、つまり()()()のである。

()()


―――そんな訳で。


現在、私達は先程の場所から、いくらか離れた地点にまで来ていた。

大小無数のイカダを連結して作られた湖上のマーケット、その岸側にほど近い一角である。


道行く人々が誰しも、こちらのことを()()()()と気にしながら通過していく。


最初は私の顔に()()と目を留め、次に傍らに引っ付いた男の存在に()()()とし、最期には気まずそうに視線を逸らしてしまう。

誰もこんな、厄介事の塊のような二人組には関わりたくないのだろう、()()()


そんな視線が次々と突き刺さるのを感じつつ、道を進んでいると再び、隣から軽薄な声が立ち上がった。



「・・・ほら!見てごらん?()()()()()()()()()()()()()()!愉しいねぇ・・・アハハハハ!」


「あらやだ、ホァン様ったら・・・ウフフフフ」



何がウフフだ。


このやり取りももう、何度目になるかわからない。

自己肯定して欲しいのか知らないが、こんな虚無感溢れる時間をこれ以上、無為に過ごすのは勘弁願いたいのだ。


しかし幸いなのが、()()()()()()()()()()()()()()()点だ。

あのまま同行していたら、この()()()()に何をされていたか判らないし、何より()()()()()


ちなみに()()()()()()()()


その時の光景が、束の間、脳裏にフラッシュバックする。

あどけない顔を蒼白にして固まる弟と、信じられない、といった表情を浮かべるその友人。



(せっかくの息抜きがこんな結果とはな。あいつ等には、後で何か埋め合わせしてやらないと・・・)



心の中で二人に謝罪しつつ、男に気取られないよう周囲に視線を巡らせる。


何時までも、こうしてはいられない。

出来る限り早く、この窃盗犯を撒いてしまわないと。


(そして、出来れば眼鏡を奪還しないと)


―――通行人、露店、急ごしらえのテント。

()()()()()()()()()()()()と品定めしつつ、視線を素早く滑らせて行く。


その中の()()、遠く見える湖岸に霞んで見える、()()()()()()()に目を留めると、私は密かに口元を吊り上げた。



()()・・・ホァン様。突然こんな事を言うと、驚かれるかも知れないのだけれど・・・」


「何だいハニー?何でも言ってよ!僕は、大海原のように何でも受け入れるからさ!アハハ!!」


「ありがとう・・・素敵な方」



()()()()()()()()()()()()()

その声は甘い蜜となって、男の耳朶へ忍び込んだ。


()()()()()()()()()()()()()()()()


恋する乙女のような仕草の裏で、()()()全てを冷徹に観察しつつ、言葉を紡いてゆく。

本当に久しぶりに―――私は、自分の『()』を自覚的に行使していた。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()対象から抜き出し、()()()()()()()()()()()


理想の中にしか存在しえない()()

それが()()()()()となり、()()と触れ合ううちにいつしか妄想と現実の境すら曖昧となってゆく。


故郷で過ごした()()()()()()()()に対し行ったように。

男の望む姿へと『()()』、普段の私とは口調も表情も、()()へと変貌していた。


―――金毛(きんもう)九尾(きゅうび)


国を傾け、あらゆる男を手玉に取る()()()()

産まれた時より付き合い、同時に()()してきた、この能力。


()()()()

()()()()()()()()()()()


周囲の時が静止したかのように、()()()()()()()()()

視線の先は、一人の男と一人の少女の姿をした『()()』へ吸い寄せられていた。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

その甘美な空間に、耐えられる男など存在しない。


多分に漏れず、男はたちどころに表情が蕩け、だらしのない笑顔のまま快諾の声を上げた。



「あの、私・・・折角憧れの大スターとデートしてるのに、こんな恰好(ジャージ)なのが、恥ずかしくて・・・」


「そうかい?僕と一緒に居てくれるのなら、そんなもの気にはしないけどね!」


「まぁ・・・ウフフ。心の広いお方」


「でも、まぁ・・・。()()()()()()()()()だと、もっと幸せになれたかな?アハハハハ!」



()()()()と、恥じらうように両手で身体をかき抱く仕草をして見せる。

途端に男は鼻息を荒くして、舐めるような視線を()()()()に這わせてきた。


()()()()


だがまぁ、想定よりも随分と()()

相手の様子に内心で嘆息しつつ、私は本命となる『()()()』を口にした。



「それじゃあ、申し訳ないのだけれど。少しだけお付き合いして頂いても・・・?」


「いいよ!何たって僕は、王子様だからね!」


「ありがとう・・・。では、あそこへ。普段から、着替えを置いてある()()がありますので・・・」



意味不明な快諾の言葉に()()()()と笑顔を見せつつ、私は湖岸へ向かう一本の桟橋を指し示す。

その先にある()()()()()を目指し、二人は()()()()と床板を軋ませながら、桟橋を進み始めるのであった―――



今週はここまで。

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