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お釜大戦  作者: @FRON
第六章 震撼☆フレーズ!!
258/345

∥006-06 ネームレス・カルト

#前回のあらすじ:探し人は案外近くに居たというハナシ



―――『無(Unausspre)名祭祀(chlichen)書』(Kulten)


通称『()()()』、著者、フリードリヒ(Friedrich)ヴィルヘルム(Wilhelm)フォン(von)ユンツト(Junzt)

現存する数が極めて希少な書物―――所謂、()()()の類であり、その分野においては()()に有名。


この書を稀覯書たらしめた所以はその()()、そして誕生にまつわる()()に起因する。


まず内容。

偽書・贋作が蔓延る魔導書の中において、無名祭祀書はまさしく『()()』であった。


伝える者すら途絶えた古の秘儀・伝承。

それらを子細に紙面へと紡ぎ、再現可能な記述として織り上げた珠玉の一品。


世のオカルティストにとっては正しく、垂涎の品である。


――ー()()()()()()

無名祭祀書は時の為政者より禁書指定を受け、巷の在庫はその殆どが焚書の憂き目に遭う事態となった訳だ。


次いで、その『()()』。

産みの親であるフォン・ユンツトは執筆の翌年、密室内にて()()()()()()を遂げる。


更には、彼の周囲で()()()()()が立て続けに発生。

無名祭祀書に、『()()()()』謂れを植え付ける結果となったのである。


以後。

時と場所を変え、2度に渡ってこの書は再び発行されている。


―――が、そのどちらも大幅に検閲・削除された、いわゆる()()()()であった。


(フォン)月美(ユェメイ)が受け継いだのは、オリジナルとも言える(ドイツ)語版を基とした写本。

頁の欠落があるとは言え、世界に数点しか現存しない稀覯書中の稀覯書を、彼は所持しているのだという―――




  ・  ◇  □  ◆  ・




[マル視点]



「無名祭祀書・・・()()()?」


()()()()()()()。確か夢幻世界(ドリームランド)には、()()()()()()()()()()んじゃ無かったっけ・・・?」


「おや、詳しいね」



目の前の人物―――楓さんが告げた言葉に、ぼくは()()浮かんだ疑問を口にする。


夢幻世界―――

いわゆる夢の中には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


しかし、これには()()がある。


いわゆる()()()()()に類する物に関しては、似たような機能を持つ()()()()()()()()()()()のだ。

以前、(かなえ)くんのお姉さんである(あきら)さんから聞いた話を思い出し、ぼくは思わず首を捻るのだった。


彼は電子版、つまり電子機器上で閲覧できる、書物の類を所有しているのだという。


()()()()()

ぼくらが現在居るのは夢の中、()()()()()()()()()()()()()()


その矛盾を指摘された黒髪の少年は()()、と意外そうに目を丸くすると、すぐに涼やかな笑みを浮かべるのだった。



「当然、『無名祭祀書』にもそのルールは適用され()よ。結果、残されたのが()()さ」


「何、()()・・・?」



それは、長辺15cm程の長方形の物体であった。


甲殻とも獣の皮膚とも取れない、両者を混ぜたような、硬質の表面。

薄く差し込んだ陽の光を受け、黒いボディは冷たく艶を放っている。


その側面には、接続端子らしき孔が数個、うっすらと淡い光を脈打たせている。

それは固く口を閉ざした貝のようであり、得体の知れぬ生命を宿した鉱物のようでもあった。


形状としては薄型のポータブルHDDか何かのようだが、ぼくが見たことのある、どんな書物ともそれは似ても似つかない。

しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「え、と。これがその、お父様から受け継いだっていう・・・?」


「より正確に言うと、受け継いだ写本を修復する傍ら、復元した文章やスキャン結果、メモの類を記録していた媒体の成れの果て、というのが正確かな?」


「・・・あ!これ、()()()()()()バイオ(B)メトリクス(M)デバイス(D)・・・()()()()()()!?」


「うん、()()



謎の物体を目にしてからずっと、頭の隅に引っかかっていた()()()にようやく答えが出た。


今更言うまでも無いが―――

満州改め、大新帝国が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()6()0()()()()()()()()()


()()()()()と呼ばれる彼等は、現時点では満州に存在する、専用の居住地でのみ暮らしている。

その技術による()()()()に関してもまた、大新帝国が一国独占している状態だ。


星間文明を築き、外宇宙航行をも可能とする彼等の技術力は、地球の()()とは一線を画している。

それは国家情勢において、大新帝国の躍進の原動力ともなっていた。


我が祖国である日本―――()()()()()はそれを独占禁止法に抵触すると主張し、幾度となく外交の場で問題提起しているらしい。

が、世界情勢が現在に至るまで満州一強で纏まっている所を見るに、その主張が受け入れられる事は()()無さそうだ。


・・・話題が逸れたが、異星人技術の中でも特筆されるのが、培養された生体組織を利用した物品の数々だ。


人工皮膚、臓器、義肢や強化外骨格(パワードスーツ)に至るまで。

医療に留まらず、あらゆる分野においてヤディス技術は巷に溢れつつある。


中でも、生体脳的(ニューロティック)記録素子を利用した大容量記録装置は、天文学や最先端物理学、高性能高耐久のハイエンドPCに欠かせないパーツとして知られていた。

見るに、彼の掌中にある物体は確かに、ヤディス技術の産物らしき()()()を纏っている。



「思うに、()()()()()()の独特の構造が幸いしたんだろうね。僕が此方側へ来たと同時に、『()』はこの形へと姿()()()()()()()んだ」


「そ、その状態でも、本として読んだり書いたりできるんですか・・・?」


「それは先程お見せた通り。・・・尤も。僕以外には、誰も扱う事は不可能になっちゃったんだけれどね」


「ひょっとして、それが楓さんの【神使】(ファミリア)?」


「・・・()()()()()()()()。―――さて!」



叶くんに続いてぼくが発した疑問に、何故か言葉を濁す楓さん。

何だろう、と首を傾げる間もなく、彼は()()、と手を合わせると、にこやかに話題の転換を図るのだった。



「本の話題はここまでにして、本題に入ろうか。マル君は新作宝貝(パオペエ)のアイディア出し、叶君は『()』へ蒐集する為の能力解析。やる事は山積みだから、サクサク進めて行こっか?」


「うひぃ」


「お、お手柔らかにお願いします・・・」



彼の言うとおり、やるべき事は山積みだ。

まだ見ぬ新たなる相棒の為、消化しないとならないタスクはいくらでもある。


さしあたって、先ずはどんなものを作るのか。


形状、材質、機能、使い方、etc...

ぼくは内心悲鳴を上げつつ、矢継ぎ早に質問を繰り返す楓さんに()()()()()()()()ついて行くのであった―――



今週はここまで。

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