∥006-04 先立つモノがご入用
#前回のあらすじ:ぼくの固くて長いアレが折れちゃった
[マル視点]
「ゼロが1、2、3、4・・・」
「た、高い・・・!予想してたとは言え・・・!」
「そらもー、ウチの目玉商品だからよ?尻に卵の殻が付いたヒヨッ子にゃ、ちっと荷が勝ちすぎるってモンよ」
がっくりと項垂れるぼくを前にからりと笑うと、Gジャン姿の青年はひらひらと片手を振って見せる。
湖上のマーケット、以前も訪れた『明峰商店』の店先にて。
ぼくらを出迎えた店番は、大学生くらいのひょろりとしたイケメン―――網手兵二だった。
どうやら、強面のおじさんときっぷのいいおばさんの二人は現在、留守らしい。
不幸な事故から武器を失い、代わりとなるものを求めぼくと叶くんで訪れたマーケット。
しかし、あいにくと目的のブツがどこで扱っているのか、二人揃ってとんと見当が付かないのだった。
だが―――結論から言えば、求める『宝貝』とやらはすぐに見つかった。
餅は餅屋とばかりに、馴染みの『明峰商店』を頼ることにしたお陰である。
在庫品が丁度店にあるらしく、こうして実物を見せて貰えたのだった。
ただし―――
「仙人様の武具を再現した、ってだけあって。予想以上にイイお値段だなぁ・・・」
「ま、コレは仙人っつーよりは、どっちかってーと天竺の秘宝って感じだけどな」
「ん-。大陸の方は昔からいろんな地域から文化が流れ込んでるから、一概にそうとばかりも言えないと思うケドね?」
全財産を軽くオーバーする額が書き込まれた値札を前に、ぼくはため息混じりにそう一人ごちた。
折角見つけた『宝貝』だが、どうにもこうにも手が出そうにない。
兵二青年の言の通り、それはどちらかと言えば道教というよりヒンドゥー教系の品であった。
そも、道教の神々が持つ武具の数々も、元をたどればインドその他の地域から伝わった物という話はザラにあるのだが―――肝心なのはそこではない。
諦めきれず見つめる視線の先には、純白の布に包まれた奇妙な形状の武器が木箱に収められていた。
三又に分かれた鋭い切先が短い柄の両側から突き出ており、鈍く黄金色に輝いている。
『金剛杵』。
古代インドの武具を源流とすると言われる、いわゆる仏具の一種である。
一説には帝釈天の振るう雷霆こそがこのヴァジュラであり、ひとたび投げつければ雷鳴と共にあらゆる魔を打ち払うと言われている。
「勿論、本物じゃなくあくまで劣化コピーなんだけどよ?ただの仏具と違う所は、本当に天の雷を内に秘めてるってー事だな」
「雷属性武器・・・みたいな?攻撃すると、こう、バリバリー!って、雷のエフェクトが散る、的な」
「いんや、動力源を消費して雷撃を放つんだよ。ホレ、ここに窪みがあるだろ?【魂晶】を嵌めて、電池みたいに使うって寸法よ」
「「へ~・・・」」
ぼくと叶くんは興味津々といった様子で覗き込むと、揃って感嘆の声を上げる。
青年が指さす先には確かに、親指の爪程の何かを嵌め込めるよう小さな窪みが開いていた。
乾電池よろしく、【魂晶】のエネルギーを電撃に変えて打ち出す、電撃銃のような使い方をするらしい。
ゲーム的に、『つかう』コマンドで雷撃が打ち放題!なんて美味い話では無いみたいだ。
「とほほ。せっかく見せて貰えたけれど、手持ちのお金でも頭金にすらなりそうに無いや。この分だと、しばらくは装備なしで任務に挑まないとなぁ・・・」
「何だオマエ、自前の武器を無くしでもしたのかぁ?」
「ええ、まぁ。不幸な事故で折れちゃいまして・・・」
「ほー?へー?ふーん?」
「・・・え、何?何??」
生まれて初めて、直に触った魔法の武器。
実の所、とても男の子魂を刺激されてむっちゃ欲しくなっているが、如何せんにも先立つモノが無い。
ほんっとーに残念だが、ここは諦める他ないようだ。
・・・だがしかし、そうして嘆息するぼくに興味を持ったのか、兵二青年は意味ありげに笑うのだった。
値踏みするかのように、長髪の青年はしげしげとこちらを眺めてくる。
その視線に居心地の悪さを感じつつ、頭の上に疑問符を浮かべていると、彼はニカッと笑い再び口を開くのだった。
「そーゆーコトならよー。ま、知らない相手じゃねーし?『先生』を紹介してやってもいいぜ」
「・・・『先生』?」
「カナ坊は知らなかったっけか?うちにこの手の品を卸してくれてる人で、現在、【学園】内に存在する『宝貝』殆どの制作者だよ。・・・まあ、その手のクリエイターの多分に漏れず、ちょーっと一癖あるお人だけれどよ?上手い事話を付ければ、格安で試作品を譲って貰ったりしてくれるかもだぜ?」
叶くんが上げた疑問の声に、青年はどこか得意げにそう答えた。
現在、【イデア学園】に籍を置く【神候補】達は数百にも及ぶと言われる。
その中でも、『宝貝』制作における第一人者とでも呼ぶべき存在。
彼は、それを紹介してくれるのだという。
ぼくは思わず身を乗り出し、是も否も無くその提案に飛びつくのだった。
「・・・ぜひとも!お願いします!!」
「へへ、そう来なくっちゃな。勿論、ウチの事も今度とも贔屓にしてくれよ?・・・で、肝心要の『先生』の居場所だが―――」
「「・・・ええっ!?」」
食い気味に頷いたぼくにニヤリと笑うと、青年は制作者の居場所について語り始める。
その驚くべき内容に、ぼくらは揃って思わず驚嘆の叫びを上げるのだった―――
今週はここまで。




